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第二章 幸運の始まり

第31話 絶対絶命……

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 錆びた剣を持つゴブリンと対峙する。

『さぁ、やるだけやってみるか』

 前世の俺ならゴブリン1体なら問題無かったけど、今の俺には力が無い……倒す事は出来ない筈だから、助けが来るまで死なないように粘るだけだ。

 ゴブリンが剣を振りあげ襲ってくるが、俺は木剣で受け流して横へ移動し直ぐに構える。前世で鍛えられた記憶のお陰で、躱すだけならなんとかなりそうだ。

『よし、このまま粘れそうだ』

 そう思った瞬間、俺の背中に激痛が走った。
 戦闘音に釣られてやって来たゴブリンに、背後から斬られた痛みだった。

「くっ、あぁああ~!」

 後ろに振り向くと、ゴブリンが剣を振りあげて追撃してくるのをなんとか受け止めたが、対峙してたゴブリンにがら空きになった背中を斬られて更に激痛が走る。

「うっ……マズイな……」

 脳裏に過去の記憶が蘇る。

「俺は、今回も魔物に殺されるのか……嫌だ!俺はまだ死にたくない!セナに……頑張ってるセナの姿を見届けるまで死にたくない!」

 俺は剣を握る手に力を込めて、ゴブリンの頭部目掛けて木剣で突く!

『グシャッ』
「ギャッ、グギャ……」

 木剣はゴブリンの右目に突き刺さり、なんとか1体を仕留める事が出来た。あと1体を倒せば生き残れると思い後ろ振り向いた瞬間、俺は胸もとを斬り裂かれた……
 スローモーションのように後ろへ倒れて行く、駄目だもう俺には対抗する力が残ってない。

『ドサッ』

 俺は仰向けに倒れて動く事が出来なかった。ゴブリンはゆっくりと俺に近寄ってきて、俺の心臓に剣を突き立てようとした時、白光の刃がゴブリンの首を刎ねた。

「助かったのか……」

 そう思うと同時に目の前が真っ暗になった……

➖・➖・???の視点・➖・➖
 私は〚白魔術師〛の修行の為にラグーン王国内を旅している。この修行の旅が終われば〚白魔術師〛として好きな場所で暮らす事ができる。

 私は旅の折り返し地点になるイナモンナ村へ到着するや否、村の住民に助けを求められた。

「お姉さん、助けてください!早く戻らないといけないんですお願い助けて!」

 小さい女の子が助けを求めてるんだけど、焦ってるせいでないようが判らないので落ち着かせようとするけど、なかなか落ち着いてくれないので困っていると、綺麗な女性が駆け寄って話し掛けた。

「ミリムちゃん、ウォード君はどうしたの?」
「姉ちゃん、ウォードがゴブリンと戦ってる助けて!ウォードがお兄ちゃんが(泣)」

 ウォード、お兄ちゃん……私の兄が脳裏に浮かんだ。

「判ったわ。ウォード君の所へ連れて行って!」
「うん、早く行かないとウォードが(泣)」
「待って、そのウォード君はなぜゴブリンと戦ってるの?子供なんでしょ?」
「メンディがゴブリンに襲われてたから助けたの(泣)」

 身を挺して人を助けるなんて……兄と同じじゃない……名前もウォード、なんて偶然なの。そのウォード君を放っておけないと思い、私は2人に同行する事にした。

「私は〚白魔術師〛です。怪我をしてたら治療が出来るから同行します!」
「〚白魔術師〛!助かります。ミリムちゃん、ウォード君の居る所へ案内して!」
「うん、こっち(泣)」

 女の子を後に続きながら少年の所へ向うと、1人の男の子が傷だらけになりながら走ってきた。

「ミリム、早くウォードの所へ!あいつは俺を逃す為に1人で(泣)」

 私は男の子に少年の居所を聞く。

「場所はどこ?」
「あっちへ真っ直ぐ(泣)」

 私は2人をおいて速度を上げて少年の下へ向うと、血塗れで仰向けに倒れた少年がゴブリンに剣で刺されそうになっていたので魔法を放つ。

「間に合って!〘白輪ホワイトリング〙」

『バシュン!』

 私の放った魔法でゴブリンの首を刎ね飛ばして、少年はなんとか無事だったけど……瀕死の重傷で、私の〚白魔術師〛でも助ける事が出来るのか判らない程だったの……

 
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