激レア種族に転生してみた（笑）

異世界転生 学園編

第52話 アリスとマリアンヌ

　この日の授業が終わって屋敷へ帰宅する。私達は迎えの馬車が待機している正門に向かうと、ミネバが馬車の外で私を待っていた。手を振りながら歩み寄っていくと、女性の声で呼び止められる。

「アリス、少し時間をいただけないかしら？」

　私が声のする方へ顔を向けると、クラスメイトのマリアンヌさんが駆け寄ってきた。学園内だから問題はないと思ったけど、ゼシカは右手を前に出してマリアンヌさんを静止させた。

「そこで止まりなさい。アリス様に気安く近寄ることは許しません」

　ゼシカが声をかけた後は、私の隣にアナとリューネが立ってガッチリとガードをする。そして、ミネバが私の元へやって来ると、マリアンヌさんは敵意はないと両手を上げてから口を開いた。
「急に声をかけてごめんなさい。アリスにお願いがあるから、少しだけ時間をもらえない？」
「貴族が平民になにを願うのですか？　無理強いをするようなら、従者が黙っていませんよ」

　秘書であるミネバが願いを確認するが、無理なことを言ってこないか牽制をすると、マリアンヌさんは『ブンブン』と首を横に振って返事をする。

「無理強いをするつもりはないの。私は英傑学園を卒業した後は、宮廷魔術師団の職に就きたいの」
「そのようなことが、アリス様とどんな関係があるのですか？」

　卒業後の進路を話してきたけど、ミネバが答えたように私には関係がない気がした。マリアンヌさんはその後も説明を続ける。

「授業でアリスの行った魔力操作が、あまりにも見事だったので、私にコツを教えて欲しいの」
「それは、学園の教師から習えばよろしいのでは？　どうしてアリス様なのですか？」
「授業後にウィンディ先生にお願いしたのですが、ご自身の時間を割きたくないと断られました」
「はぁ、それでアリス様ならお暇だろうから、魔力操作を教えろと言うのですか？」
「そういう訳ではないの。もしアリスに空いてる時間があるのなら、我が家に招待をするから来てもらえないかと」
「アリス様のご予定は、帰宅後にすぐに湯浴みをされて少し休憩した後は、ペイトン商会の会長と夕食を取りながら商談をされるので、本日については無理ですね」
「今日じゃなくても良いの、アリスの都合がつく時で構わないの。ダメかしら？」

　マリアンヌさんは必死に訴えるけど、私は学園の授業を終えて帰宅してからは、何もしていない訳ではない。ミネバはため息つきながら応えた。

「アリス様は平日の予定が埋まってるの。週末の休日であれば、貴女がアリス様の元へ来るのなら、空いてる時間にお相手することは可能かも知れません」
「私が伺うのですか……」

　ミネバの言葉を聞いたマリアンヌさんは眉間にシワを寄せた。貴族が下の階級の元へ出向くのは、余程のことがない限りしないからだ。言葉を詰まらすマリアンヌさんに私は声をかける。

「やっぱり、貴族だから平民の家になんか来れないよね？　そうだとしたら、平民になんかに教えてと言うのは、おかしなことだと思わない？　結局は、自分の立場しか考えてないってことだよね？」
「そういう訳では……」

　何かを言おうとしたけど、私の言ったことが全てだと理解したようで、言葉を詰まらせた後は下を向くことしかできなかったようだ。あまり時間がないので、最後に一言だけ伝えることにした。

「私は王侯貴族なんて者に気を使わないよ。対等な立場で付き合えないのなら、マリアンヌさんに教える事はできないよ」
「アリス様、この後の予定がありますので、そろそろ帰宅致しましょう」

　ミネバがこの後の予定が気になるか声をかけてきたので、私は促されるまま馬車に乗り込むと、ゼシカがマリアンヌさんに声をかけている姿が見えたのだった。