もう惚れたりしないから

夢川渡

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29 本心の痛み

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「リーナ嬢、ルゼ・ノワール様がお呼びです」



っ!?




登校してすぐ、レイン・ヘルさんに声をかけられた内容




正直予想はしていたが、何を話せばいいのだろう…?
前回のお出かけのときにしたお話の内容を振り返る














『リーナ嬢は紅茶が好きなのですか?』
『ええ、好きですわ』
『おすすめの紅茶を今度聞きたい』
『承知致しましたわ』







きっとこれだわ、そうに違いない




──────────────




「失礼致します、ルゼ・ノワール様」





「あ、いらっしゃいリーナ嬢」






微笑みを浮かべるルゼ様は今日もお美しい。

私が好きになった人は、やはり好きになるべき素晴らしいお方だ、










…好きにならなければよかったなどという言葉を使うのははよくない。


…そう思った。










でも、今度は惚れたりできない、好きになってはいけない




辛くても、耐えなければいけない。





たくさんの思考がぐるぐる回る中で言葉を振り絞った。




「お紅茶のお話しでしょうか?」


「はい!おすすめの紅茶を知りたいのです。どうぞ、そちらに座って」

「ありがとうございます」



──────────────




「なるほど…ユアン町にこのような紅茶を揃えている店があるのですね、とても勉強になります。ありがとう、リーナ嬢」
「いえいえ…紅茶、とても好きなのでお話を人にできることを嬉しく思いますわ」






にこにことお互い笑う













過去の自分からしたらありえない時間、幸せな時間だったろう。


…ごめんね








私はもうルゼ様に興味を示してはいけないわ







「では、そろそろ戻りますわ」
「分かりました。ありがとう、リーナ嬢



…そして、ごめんなさい」






…え?







「どうかしました?」









「…先日、大勢の前で君が虐げられているところ、声をかけるのがとても遅かった。私も、あちら側の人間と思われたかもしれない。

…でも、私は君を______


「きにしないでください。私はそんなふうに思っていませんよ。
ありがとうございます。失礼致しました。」













その先の言葉は聞いてはいけない、
そう思った。










聞いたら自分に甘くなってしまう。


苦しいことが待っているかもしれないのに。

 





(…どうしよう、涙が出そうだわ)



─────────────




「やっぱり好きなのね、私」







小さく声に出した本心の言葉




痛みをこらえながら授業が始まった。
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