もう惚れたりしないから

夢川渡

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1 目覚め

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「っ!!!」




目が覚めたら母校の校門の前にいた。





「え……?」

「リーナ様??おはようございます!」

「お、おはよう?」






何故か疑問形になってしまった。
…でもなぜ校門の前に?




あれは…あの、悍ましい光景は何だったのだろうか…
夢にしてはリアルがすぎる…。




「…あの……」
「如何しました?」
「…今日って……いつかしら?」
「え…?!ああ、6月の7日ですわ!リーナ様!」

「…6月?」
たしか、昨日は寒い冬だったはず…何故?

「ありがとう」
「いえ」
とりあえず、お礼を言う。
状況を整理しよう…。


ーーーーーー



『キャーー!!ノワール様だわ~!』

『本当にお美しいわ!!』

『ルゼ・ノワール様~!』



はっ、



黄色い歓声の後ろを振り返ると、彼が…
ルゼ・ノワール様が
あの時恋をした場面と同じ様子で大勢の生徒に囲まれていた。

それを見てふと思う。



ま…まさか…
「私、過去に…戻っているの…?」



「何が?」
「ひゃっっ!」




急に誰かに声をかけられて、びっくりしてしまった。




「おはよう、リーナちゃん」
「なんだ…メアか…おはよう」
「どうしたの?リーナちゃん」



メアは中等部からの友人。
大手服屋、イオル家の次男だ。




彼になら、状況を説明してもよいのだろうか…




「いや、ダメ…」
「だからどうしたの?なにが?」
「なんでもないわ…少し体調が悪いの」
「それ、何でもなくないじゃん!折角の入学2日目だよ?保健室行こう?」
「いや…そこまでじゃないから大丈夫よ」
「そう…?」




まだ朝だ、早く一日を過ごして、帰ってから状況を整理しよう。
…とりあえず、今の私は今日この場所でルゼ様に恋に落ちては居ないわ。大丈夫、大丈夫……。



さっきみた恐怖を思い出して、




止まらない鼓動を他所に、足早に教室へと向かった。
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