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第2部 同棲編

131 近くにいた女

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その思いを払拭するように下柳が言った。

「あ、心さん、さっき見たんですよ。結って呼ばれていた女を。」

「え、、、どこで?」

「ここに入ってくる前にあそこで女と話してたでしょ?」

「あの聴講生?」

「その人、昨日結って呼ばれてた。」

心はパラパラと学生名簿をめくる。
聴講生の欄に名前を見つけた。
思わず息をのんだ。

「ほんとだ、、、福田結。」

「あーっ。」ため息をつきながら頭を抱えて心が下をみた。

「大丈夫?」

「いやー、やっぱり私が絡んでたのかと思って。」

「もてる男は大変だね。」

気の毒そうに心を見た下柳。

「下柳さん、私は自分に腹がたつ。」

「え?」

「前回の沙也加の時といい、今回といい、近くにいたのに気付かなかった。」

「仕方ない。まさかって思うよ。関係ないはずの人だから。」

「私が迷惑こうむるのは仕方ないけど、人を巻き込むのは許せない。」

心は頭をあげた。

「そうだね。俺もこういうやつは嫌いだ。自分の快楽のために他人を不幸にしていいか?答えは否だ。でもこういう奴らを警察は裁いてくれないんだよな。」

「沙也加のときは穏便にすませたんだけど、今回はちょっと度がすぎてる。」

「俺も許せないー。」

下柳が心に同意した。

心と下柳は本来ずるや人を陥れるのを良しとしないという気質であるという点では同じ人種だった。

「下柳さん、ちょっと頼まれてくれない?」

心が下柳になにやら相談した。

~~~~~~~~

そのあと心は下柳と一緒に早苗の病院へ行った。

早苗は下柳がくると身体を起こして昨日はありがとうございましたとお礼を言った。

そのあと、下柳が早苗に言った。

実は自分は心から頼まれてムーンナイトをはっていたこと。

ムーンナイトで福田結と山上久の悪巧みをきいたこと。

心に昨日、早苗が口論して睡眠薬を飲み倒れたことなどを話したことを。

「そうですか、、、。心さんはわかってたんですね。」


コツコツとドアがノックされる。

「はい。」

ガチャとドアが開き心が入ってきた。

「あ、、、」

早苗は目を開いて、申し訳なさそうに下をみる。

心がそばにきて下柳の隣の椅子に座る。

「あ、、すみませんでした。」

早苗が頭をさげる。

心に向かって謝った。

「早苗ちゃん、過ぎたことは仕方ないの。要はこれからのことよ。下柳さんから聞きました。もう2度とこんなことがないと誓える?」

「はい。もう2度とありません。すみませんでした。」早苗が泣きながら謝る。

「私は信じる。このレコーダーの内容は警察に届けて被害届をだしましょう。警察も民事不介入ではあるけれど何らかの対応はしてくれると思う。実際脅されたわけだし。」

「はい。」

「それにね、私は過去のことはもう忘れてこれからのことを考えてほしい。もし早苗ちゃんが働けるならこれからもスターフィールドカフェで働いてほしいと思ってる。」

「いいんですか?私みたいなのがいて。」


「いいも悪いも無い。過去は変えられない。でもこれから先はどうにでもできるでしょ。」

「はい。」早苗は力いっぱいうなずく。

「もちろん、このことは私と早苗ちゃんと下柳さんだけしか知らない。あとの人たちには黙っておきましょう。」

早苗は涙が止まらなかった。

「はい。もう、絶対しません。」

そういって泣きじゃくったのだった。

下柳は思わず早苗の肩をたたいてしまった。

彼は困っている人をそのままにしておけない人間だったから。

早苗にはその優しさがありがたかった。
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