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第2部 同棲編

124 (閑話休題)藤田家

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恵みのつわりも落ち着いた頃、それぞれ挨拶に行くことになった。


まず、恵の、実家に挨拶に行く。

「はじめまして。高瀬一明です。」

「はじめまして。藤田岳です。よろしくお願いいたします。」

岳はまさか、恵が妊娠すると思ってはいなかった。恵は高校卒業して以来、私は女が好きだと言っていた。

まさかそんなことになるなんて。

「母さん、こんなことってあるんだなあ。」

「ええ、本当に。まさか娘が子どもを産むなんて!」

普通のことが普通でない家族では、もう何が真実のことなのか分からなくなる。

「高瀬さんは高瀬商店さんの1人息子なんだろう?」

「はい。そうですね。」

「それならお父さんとお母さんがお喜びなんじゃないかな?」

「はい。それはもう。まずはこちらにご挨拶をと思って伺いました。あとでうちにも恵さんに来ていただこうと思ってはいるんですが、あの、順番が違っていて、申し訳ございません。でもお腹の赤ちゃんのことも恵さんのこともしっかり責任を持ってお世話したいと思っておりますので、何卒よろしくお願いいたします。」

高瀬は必死に頭をさげる。

「いや、頭をあげてください。」と岳が恐縮する。

「この通りうちの恵は気も強いし、このとおり女っ気もなく、絶対一生独身だと思ってましたから、順番が違って大いにけっこうです。ほんとに。順番が違わなかったらむしろこんなおめでたいことにならなかったかもしれません。」と岳。

「そうですよ。高瀬さんのおかげで子どもを持つことができて恵もほんとにありがたいことでした。恵に愛想をつかしても子どもが高瀬さんの血を受け継いでいますのでどうぞ末永くよろしくお願いいたします。」と艶子。

「うん。そうだな。こんなに気が強いし、高瀬さんが愛想をつかす可能性は大ありだ。恵、高瀬さんを立ててちゃんと支えなきゃいかんぞ。」と父親らしいことをいう。

「あ、いえ、僕のほうこそ、恵さんのおかげで毎日充実した生活を送らせてもらってます。恵さんに愛想をつかされないようにしっかりがんばります。」

「なんていい人!高瀬さん、恵はね、性格も見た目もだけど、男の子っぽいの。高瀬さんのような人なら恵もちゃんと夫婦生活おくれるかもしれないわ。」

「ちょっと待ってよ。実の娘にむかってひどくない?」と恵。

「だってあなた、中身男じゃない。高瀬さんいいの?こんながさつな娘ですけど。」

「そこが恵さんの魅力です!僕はずっと恵さんをささえるつもりです。」

高瀬がきっぱり言い切った。

「こんな人もいるのねえ。ほんとに恵にあつらえたような人だわ。」艶子が呟いた。
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