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第2部 同棲編

99 小さな嘘 前編

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その日の心は藤田不動産の決済書類に目を通しまくり印鑑を押しまくりの忙しさで結局家に帰りついたのは9時だった。

美月まだ待ってるよね。

電話をするが出ない。

心配になる。

もし、あの男と会ってたら?

どうしようもない不安にかられた。

美月は何をしに山上の店に行ったんだ。

浮気は絶対にないと言いきれるが、やはり心のどこかで心配になっている自分がいた。

渋谷のマンションにつくと美月は部屋のカーペットの上でテレビをつけっぱなしで寝ていた。

美月いた。

ほっとして美月をみて笑った。

テレビを見ながら寝てしまったようだ。

テーブルの上にサラダと鮭のホイル焼きがおいてある。

心は不安になった自分がおかしくなる。

シャワーを浴びてご飯を食べよう。

心の帰ってきた音で目覚める美月。

「ふぁー。」

あくびをして起きる。

心の息使いを感じる。

美月もなんだかほっとする。

知らない人のテリトリーに入ったからか今日は特に心の存在がとても安らぐ。
心がシャワーを浴びてでてきた。タオルで髪を押さえている。完全に乾かしてないようだ。急いででてきたのだろう。

「おかえり。」と美月が言う。

「ただいま。ご飯ありがとう。」心がテーブルの前に座る。

「遅かったね。」

「うん。姉さんがここ3日くらい職場にいけてないみたいで仕事がたまりにたまっててさ。姉さんも真面目すぎるからためこむのよね。」

「お姉さん会社行ってないの?」

「うん。今日なんか言ってなかった?」

「今日は休んでるって言ってたけど。」

「他には?」

恵に相談されたことを思い出す。

恵は妊娠していた。

これもまたびっくりしたことだが、病院へ付き合ってほしいと頼まれたのだった。

当の本人もびっくりしていた。

「まさかって思うでしょ?でもそのまさかなの。たまたま友達と一度関係を持ったときの子どもだと思う。妊娠検査薬でも陽性がでたんだよ。これからすごく心にも美月ちゃんにも迷惑をかけると思うけど、私はこの子を産みたいの。協力してくれない?」と言われたのだった。

もちろん美月は協力するつもりだ。

お姉さんが妊娠したなんて、お義父さんとお義母さんも喜ぶだろう。

ただ、相手が問題なのだ。

どんな人が相手なんだろう。

恵ははずみで関係を持ったと言っていたが、相手はどうなんだろう。

もしかしたらお姉さんのことを本気で好きな人かもしれないし。そうだとしたらその人もきちんとしたいと思うんじゃないのかな。

「、、、えーとお姉さんはね、ちょっと最近の体調の悪さのせいで病院に行きたいって言ってた。それに付き合ってくれって。」


「ふーん。」

はっきり言えない美月だった。

「姉さんのところに行く前にどっか行った?」

美月はどきりとする。行ったと言えば行ったよね。ムーンナイトに。
でも、武田くんと心さんにムーンナイトには気をつけてって言われたことあったよね、、。

これって、言わないほうがいいのかな?

「行ってない。」

思わず嘘をついてしまった美月だった。


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