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第2部 同棲編

44 むげんにて

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「大将、私もビール。高瀬さんは?」

「あ、僕もビールで。」

「美月と私もビールで!」

「はいよっ。」

かなえちゃんがビールを運んでくれた。

「では乾杯!」

「なんか心と最近、しょっちゅうあってる気がする。」と恵。

「なんで嫌そうなの?」

「なんかね、その顔を見てると ねー母さん思い出してさ、うっとうしいときがある。」

「ひどい。」

「確かに、心さんとお母さんそっくりですよね。」と美月が言う。

「そんなに似てるんですか?」と高瀬。

「うん。似てる。もうね。うざくなる。」

「ちょっともう酔ってるんじゃない、姉さん。」

「まだ、全然。」

「とにかく綺麗だよね。」と美月が言う。

「うん。私はどっちかというと父親似だからね。」

「え、でも僕は心さんも恵さんもそっくりに見えるけど。」

「一度見てみたらびっくりしますよ。すごく色気のある妖艶な人だから。」

「めちゃ、見たい。」

「あ、火曜日、お母さんに誘われてるんですよ。着物ワンピース作ってくれるって。だから写真とってきます。」と美月。

「美月ちゃん、かなり母に気に入られてるね。着物あげるって?」

「はい。最初は私もお姉さんもいるし、って断ったんですけど。お母さんがぜひって。」

「そうしてあげて。あの人は人に何かしてあげるのが好きだし。特に相手が心の彼女だからなおさらそうなると思う。私がそういうのしてあげられないから美月ちゃんがしてくれると私も嬉しい。」

恵が言う。

「そうそう。ありがたいのよ。」と心。

「ほんとにね、僕なんかこの間、父親から僕のために社員寮を潰してフィットネスクラブを作ろうかと思ってるって言われたんですよ。」とおもむろに高瀬が言う。

「えーーー。」

心、恵、美月が声をあげる。

「僕の会社の7~9階部分の社員寮の9階をフィットネスクラブに改造したら、僕にも出会いがあるんじゃないかってこの間相談されました。」

「また面白いことをいうお父さんだわね。」

「ほんと。」


「そんなことで出会ってたら苦労しないわよね。」と恵。

「で、どうしたの?」と心。

「もちろん、却下ですよ。もしフィットネスクラブに通って出会いがあったとしても男とですよ。父が期待してるような出会いじゃないから。」

「高瀬さんも大変なんだね。カミングアウトしてないの?」

「してないです。」

「したら楽だよ。」と恵。

「心さんと恵さんはどんな流れでカミングアウトしたんですか?」と高瀬が尋ねる。

心と恵が顔を見合わせる。

「姉さんいいなよ。」

「え、私?」

「うん。」

「じゃあまあ、言っちゃうけど、この人が恋人って言って女の子連れていった。」

「え。」と高瀬。

「びっくりしたかもね。母さんも父さんも。」

「心さんも?」

「私は男も女も好きなのって普通に言った。親に会わせたことは一度もない。」

「そうなんだ。」

なんとなくほっとする美月。

「あ、いま美月ちゃんほっとしたよね?」と恵が言う。

「僕もそう思いました。」


「いやー、そのははは。」と笑う美月。

「連れていったのは美月だけよ。」

飲みながら爽やかに笑う心だった。

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