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第2部 同棲編

43 ドキドキ

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恵はトレンチコートに顔をすくめながらむげんまでの道を歩いていた。

「ふー。」さすがに9月といっても夜風は冷たい。

「恵さーん、、」

後ろから声が聞こえた。

「高瀬さん。」

高瀬が後ろから走ってきた。

「久しぶりですね!」

「焼き肉以来だね。えーと2週間くらい?」

「ほんと、2週間ぶり。あれ、そうでもないですね。長く会ってないような気がしたけど。」
高瀬はもっとあってないような気がした。
でも2週間ってただの飲み友達にしては会う頻度は高い。

「どっちかというと頻繁にあってるね。」
と恵。

「そうですね。もうこの年になるとごはんに誘う人もいないからこういう飲みがあるといいですね。」

高瀬は取り繕うように笑って言った。

「そうだよねえ。最近、私も友達に会うこともあまりないなあ。」

しんみりと恵が言う。

「そうですよね。普通は40越えるとみんな家族がいますからね。。」言いながら少し落ち込む高瀬。

「何、暗くなってるの?やだなー。辛気くさい。そういうときはこうやって友達同士でご飯食べたり飲んだりすればいいじゃん。」恵が言う。

「でも僕、恵さんの連絡先知らないです。」

「あ、そうか。じゃあ今交換しとく?」

恵がスマホをだした。

「はい。ぜひ!」

高瀬もスマホをだして、連絡先を交換した。

「もう、毎日連絡するかもしれません。」と高瀬が言った。

「いやあ、毎日はちょっとね。一人で飲みたいときもあるし。」と恵が言う。

「じゃあ1週間に2回くらいはいいですか?」

「うん。いいよ!」

と恵が言う。

よしっ。と高瀬がガッツポーズをする。


「ははは。ガッツポーズってなにそれ。」

恵が顔を崩して笑った。

ドキッ。

高瀬は胸が高鳴るのを感じた。

ドキドキドキドキ。

なんか変だ。

恵さんがかわいく笑うから。


可愛く?笑う?

そんなこと今まで女に感じたことあったか?

いや、ない。


ドキドキドキドキ


少し顔が赤くなってるのか。

「高瀬さん、なんか顔赤いよ。もう飲んできた?」

と恵が聞く。

「飲んでないですよ。」


「ほんとに?熱とか?」


恵が心配そうに高瀬を見つめる。


ドキドキドキドキドキドキドキドキ


み、見ないで。

なんて言えない。

恵さんの笑顔にドキドキしたり見つめられてドキドキしたりするのは何なんだ?

はじめてのことに動揺を隠せない。

あ、もうついた。良かった。

ガラガラガラ~

恵が戸をあける。

「こんばんは~。」

「いらっしゃい。」大将が大きな声で迎える。

「ほっ。」

誰にも知られることなく、高瀬は小さなため息をついてカウンターに座ったのだった。
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