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第2部 同棲編

42 久しぶりのむげん

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約束の時間が近付いたので、お代を受け取り、心の実家をあとにする。

一度渋谷の心のマンションに寄り車をおいて二人で歩く。

むげんまでは歩けば15分くらい。

夜は少し涼しくなってきているので羽織りをきていく。

心と歩くこの道は久しぶりだった。

むげんの戸を開くと、活気のある店内に大将の声が響く。

「いらっしゃい。カウンター四席でいい?」

「もちろん。」

「心と美月ちゃん、久しぶりだな。忙しいのか?」

「うん。実は同棲をはじめて、それで足がとおのいちゃって。」と心。

「そうなのか?あれ見たぞ。ウイークエンドの記事。美月ちゃんのお店流行ってるんだな!」

「おじちゃん、見てくれたの?ありがとう。お陰さまで。どうにかお客さんもきてくれてる。」

「うん。あれでまた増えたんじゃないの?お客さん。」


「うん。そうなの。心さんも土日手伝ってくれてて。」

「美月さんと心さん、婚約したんですか?」とアルバイトのかなえちゃんが聞いてきた。

「うわ、かなえちゃん、久しぶり。そうそうなんかねえ。流れで。」と美月が言う。

「流れじゃないわよ。ちゃんと計画通り、婚約しました。とりあえずビール二つ。姉さんと高瀬さんがまだだけど、飲んじゃおう。」と心。

「まだ30分くらいあるしね。おじちゃん、今日のおすすめなに?」と美月。

「今日はさんまがいいのがあるよ。」と大将が言う。

「はあ、いいねえ。食べる前から楽しみ。やっぱ、お刺身とそのまま塩焼きとどっちもいきたいなあ。」と美月。

「了解。準備しとくよ。はい。ビール。」

「ありがとう。さすが、大将。美月の食い気をわかってる。」心が言うと、美月が肩をすぼめる。

「何かと言うと心さんが冷やかしてくるからおいしいものがおいしくなくなるかも!」

「やだ。悪いって言ってないのに、むくれちゃってるわ。とりあえず、乾杯しましょ。はい。お疲れさま。」

心と美月は乾杯し、ビールを半分くらい飲んだ。

「おいしー。」と美月。

「ケンカするほどなんとかってやつだな。」
と大将が言う。

「私もはやく彼氏欲しいです。」とかなえが言う。

「かなえちゃんいないの?」と美月。

「いませんよお。この居酒屋は家庭がある人や恋人がいる人たちが多く集うんですよね。もちろんそれが目的で働いてるわけじゃないんですけど。」とため息をつく。

「かなえちゃんに辞められたら困るから、そこらへん考えると変な男は紹介できねえしなあ。」と大将が言う。

「だよねえ。」と美月。

「こんなに大勢お客さんがいても、大将とかなえちゃんだけで店が切り盛りできてるなんてすごいよね。」と心。

「うん。私もカフェはじめてからそれを痛感してる。やっぱりできる人がいるとすごく順調にまわるよね。」

「うん。早苗ちゃんはコーヒーもうまいしね。」

「早苗ちゃんっているんだ?」と大将。

「うん。めっちゃ気が利くしね、コーヒーも上手だしね。お陰さまで店がうまく回ってる。」と美月。

「いい子がきてくれて、良かったな。長く勤めてくれるといいね。」

「ほんとにねえ。」と心がうなずいた。




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