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第2部 同棲編

35 旅の楽しみ

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「それにしても羊羹泥棒なんてね。」

こちらは、何も知らない心と美月である。

「そうなの。誰が羊羹なんて盗むの?」

「うーん、和菓子好き?」

「和菓子好きならカフェで食べてくれたらいいのにね。」と美月。

「お金に困ってるとか?」

「お金に困ってのことだとしても、見つけたら絶対警察にきてもらわなきゃ。」

「まあ、まあ。一応、ほらレジと工場にはカメラも設置したし。もう来ないんじゃないかなあ。」と心。

「そう思う?」

「うん。思うわよ。」

「ほぅ。」美月はため息をついた。

美月はオーナーとして、店内のことが管理できていないことに責任を感じていたのだ。

「ほんとにもうこないでくれたらそれでいいや。」

と美月。

元来、争い事や人を攻めることを得意としない人間だから、これから何もなければ大げさにすることではなかった。


「ねー、それよりや、この宿さ、希望者に舞妓さんのかっこうさせてくれるんだって。どうする?」と心。

「ほんとに?やってみたい。」と美月。

「じゃあ予約しとこう。」

「私が舞妓さんなら心さんはどうするの?」

「どーしよう。私も舞妓?」

「身長高いから着物がないかも?」

「えー、じゃあ書生とか?旦那の格好かな?」

「いいね!じゃあ旦那様の格好で!」

「はいはい。じゃあ私もそれで予約しときます。」

心は思わぬ宿のプランに美月が飛び付いてくれて安心した。いつまでも羊羹泥棒のことばかり思って入らぬ心配をさせたくなかった。

うすうすであるが、思いあたることがあったのだ。

「舞妓の格好で祇園を歩けたりするのかな?」と美月。

「いいみたいよ。」

「えー、じゃあその格好で町歩きしたい!」

「私はいいけど、、美月大変かもよ。」

「着物着ることある?」

「ないなあ。」

「それに加えてけっこう重いらしいよ。」

「ほんとに?」

「うん。」

「そっかあ。町歩きできればしてみたいけど、色々旅でみたいものもあるしね。余裕があればかなあ。」

「そうだね。とりあえず二時間コースで申し込もうかしら。」

「うんうん。」

「京都はいろいろみるものがあるから楽しみだわね。」

「うん。やっぱり、湯豆腐!」

「うん?」

「あと湯葉!」

「へ?」

「あと抹茶スイーツね!」

「あのね、美月、それは見るものじゃなく食べ物!」

「あ、ごめん。」

「美月の頭の中身は食べ物でいっぱいだわね。」

少々あきれぎみながら笑って言う心。

そんな美月が愛しくてたまらないのだ。

「えへへ。ごめん。」

「いいのよ。食べ物も旅の楽しみだからね!」

「うん!」

旅が待ち遠しい美月なのだった。















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