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第2部 同棲編

29 思わぬお客 前編

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カラカラ~

「こんにちは~。」

「いらっしゃいませ。」

早苗が今日の第一号のお客を案内する。

「美月さん、お客様が美月さんにご用事があるってことです。」

「はい。いきまーす。」

早苗の案内した客のところに行ってみると、なんと心の母だった。今日は紬の生地でつくったロングワンピースを着ている。今日もおよそ70には見えない格好である。

「美月ちゃん、久しぶり。」

「お、おかあさま?!」

「まああ、美月ちゃんお母さんって呼んでくれてありがとう。嬉しい。」

感動して泣き出さんばかりの艶子である。

「あ、今日はどういったご用でしょうか?」

「あ、そうそう。本題を忘れてしまいそうだったわ。また美月ちゃんのお父様に羊羹を作っていただきたくて注文にきたの。」

「そうなんですね。ありがとうございます。棹ですよね。何棹ご入り用でしょうか?」

「お友達に配りたいの。とりあえず45くらいお願いできるかしら?」

「45ですか?ちょっと今、急には難しいですね。いつまでにご用意すればいいでしょうか?」

「来週にちょっとしたイベントをするのでそれの手土産用にしようかと思ってるんだけど。3棹を一セットにして箱にいれてあげたいのよ。」

「わかりました!確認してきますね。」

工場に行って父に確認をとりにいく。

「武田くん、あちらのお客様にお茶をだしてもらっていい?煎茶ホットでお願いします。」

「はい。」

武田にお茶だしを頼み、父のいる工場に向かう。

「お父さん、来週までに45棹、羊羹用意できる?」

「45棹!多いわね。」
父と一緒に羊羹の切り分けをしていた母が驚く。

「心さんのお母さんが今注文にきてるの。」

「え、それはまた。ちょっと挨拶にいかないとだな。」

「ええ。」

父と母が身支度を整えて、作業衣のまま、心の母のもとに向かう。

「こんにちは。はじめまして。美月の父です。」父が挨拶すると、艶子が大げさに席をたち、挨拶をかわす。

「まああ、いつも心がお世話になっております。心の母です。」

「いえ、こちらこそ、心さんにはいつもお世話になってまして。」

「あ、すいません。父と母です。心さんのお母さまです。」

「堅苦しい挨拶はなしにしましょう。」と艶子。

「本当に美月さんには感謝していて、いつまでたってもフラフラしている息子にやきもきしてたんですよ。あんなにしっかりなって美月さんには感謝してもしきれないくらいですよ。」

「いえ、もうこちらも、なんの取り柄もない娘ですがどうぞ末永くよろしくお願いします。」と父と母が挨拶している。

「えーと、あの、羊羹のことですが、、」と美月が話をふる。











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