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第1部 オカマと思っていたらその男はバイだった。

心ファミリー

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「何か怒ってるの?」

母が尋ねた。母艶子は67歳とは思えない若々しい人だった。髪は染めてはいるが肌は白く皺もあまりない。世に言われる美魔女という年齢不詳のおばさまだ。
ロングワンピースをきてパソコンを開いていた。

「怒らないほうが変じゃない?」

心は静かに怒っていた。

「まあ、待って。ほら心。怒るな怒るな。」
と言ってきたのは心の父、岳である。
岳は77歳の老人にふさわしい白髪頭でアゴヒゲを少しのばしている。丸メガネをつけたおじいちゃんだった。

「父さん、私から紹介するのを待ってくれているのかと思ってた。」

「うん。私はそのつもりだったんだけどな。母さんが早く会いたいってしびれをきらしちゃってな」

と父が言う。

藤ハウスから花が届いたときに釘をさしとけば良かった。美月のことを調べるのは簡単だっただろう。
昔から父親は母親に弱い。母親が旅行に行きたいと言うとその週末はいきなり京都に行ったりとか、このごはんが食べたいというと次の日に料理人を呼んだりとか、とにかく破天荒に甘やかすのだ。


「父さんがそんな調子だからお母さんが暴走しちゃうんじゃないの?私は彼女と結婚したいと思ってるの。大事にしたいと思ってるのに母さんにそんなことされたらまとまるものもまとまらないよ。」

「ごめんね。」艶子が急に気を落とす。

「時期がきたら連れてくるから見守ってほしい。」

「心。なんか男の子みたい。」 
と艶子。
「ほんとだな。すっかり男らしくなって。」
と岳。
2人そろって感動して涙がでてきそうな勢いだ。


「いやいやいや、男でしょ。自分の息子でしょ?」と心。

「そうなんだけど、今までの心となんか違う。やっぱり美月さんのおかげね。」

「ほんとだな。早く会いたいな。」

「ほんと早く会いたいわ。ねー心、はやくつれてきてよ!」

こりてないわね。。

「とにかく、これ以上ややこしくしたらもう紹介とか絶対ないから。」

「わかりましたぁ。岳さん、心がこんなに頼りがいがあるって知らなかった。」

「うん。ほんとだね。」

「今まで心配してたのが嘘みたい。」

「やっぱり俺の息子だな。」

「うん。これでやっと孫にも恵まれるわあ。」

「2人、盛り上がってるところ悪いけど、今後羊羹を大量に注文とかしないように。どうしても注文したいなら常識の範囲でお願いします。」

「そうだな。向こうのお父さんも忙しくなると大変だしな。」

「そうよ。今日だってやっと10本だったんだよ。」

「大量に生産できないの?」

「一つ一つ手作りだからね。」

「そこがいいのかもしれないけどなあ。」

「清子ちゃーん」艶子が清子を呼んだ。

「はーい。」

「清子ちゃん、このお羊羹きってくれない?清子ちゃんも一緒にお茶しましょうよ。」

「まあ、私も久しぶりに坊っちゃんとお話できるんですわね。わかりました!すぐ用意いたします!」

はやく帰るつもりだったのに、もうちょっとここにいることになりそうだわ、、、。

早く解放されるといいけど、、時計を眺める心だった。

心が帰宅できたのは夜中の10時だった。
見事に三時間もお茶に付き合わされた。

~~~~~~~~~~

帰宅しながらスマホを見ると、美月からラインが入っている。

心配だよね。

心は美月に電話した。

「もしもし、ごめん。遅くなって。」

ーーううん。お母さん達大丈夫だった?

「うん。わかってくれたよ。」

ーー良かった。今どこ?

「家に歩いて帰ってるところ。」

ーーそっか。今日はありがとう。
あのね、私、お姉ちゃんに会っても大丈夫だよ。

「良いの?」

ーー会ってお姉ちゃんやお母さんたちの気持ちから不安が消えるなら会って納得してもらったほうがいいよ!

「わかった。近々誘うね。」

ーーうん。また明日から仕事頑張ってね。

「おやすみ。」

美月はようやく気持ちに区切りがついたようだ。

いずれはと思ってるのだから今会っても後で会っても同じだと思うがーー。

「姉に会えば落ち着くかな。」

心は姉に電話したのだった。






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