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第1部 オカマと思っていたらその男はバイだった。

開店へ向けて2

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「美月、この羊羹を包むシートなんだけど、ここの会社が安くていいものたくさんあるわよ。」

そう言って優紀が紹介してくれたシートや和紙を作る会社である高瀬商店の営業、高瀬一明が今日は父に挨拶にくる。

羊羹のことはやはり父を中心に色々打ち合わせしてもらっている。

店先で、持ち帰り用にする羊羹は透明シートで包むことにした。今までは一竿でしか売ってなかったので、食べきりサイズ一人用となると今までと違うものになるのでやはり美しく見えるものを使いたいとこだわりの父の意向もあった。

コーヒーカップやお皿は優紀のオススメの中から安くで仕入れさせてもらった。和菓子とジャズという組み合わせだが、お皿はナチュラル系で可愛い。このギャップがいいんだと優紀に言われるとそんな気もしてくる。

テーブル、イスも鳥山インテリアの中古で揃えた。

なかなかアンティークっぽい雰囲気になった。

準備は着々とすすんでいる。

美月1人の力では無理だった。

みんなの力でここまでやってきた。

「お父さん、今日高瀬商店の方がくるわよ。」

「うん。持ち帰り販売用の分だよな。わかってる。」

「高瀬商店さんとは昔付き合いがあったんだ。」

「そうなの?」

「うん。じいちゃんの頃な。」

「なんで取り扱わなくなったの?」

「じいちゃんの考えとしてはもう少し和紙の柄に遊びがほしかったがあまり種類がなかったらしい。でも今の社長になってからは種類も増えてるし、シートの薄さも応相談となってるな。」

「そんなことがあったんだ!じゃあ今回はいい方向に話をまとめられそうだね。」

「ま、商品がよければ問題ない。」

父は金額関係なくいい商品を買えるならどこでもいいのだった。

「はじめまして。高瀬です。」

高瀬が名刺をもって挨拶する。

「こんにちは。今日はわざわざありがとうございます。」

美月は簡単に挨拶をし、早々に父に引き継いだ。

父と高瀬は工場に行って話をはじめた。

父が納得できるものを提示してくれないとこの話はなかったことになる。単価の安いここでなければどこに頼めばいいかわからない。
美月も祈る気持ちだった。


「はっはっはっ」

父の高笑いが聞こえる。どうやら高瀬と父の商談はうまくいきそうだ。ほっと胸をなでおろす。

「高瀬くんはよく勉強してるな!」

ニコニコ顔の父が高瀬と工場からでてきた。

「いえいえ、実は私も和菓子職人さんのもとで修行をしたことが1年あったんです。父が厳しくて職人の気持ちがわからないと商品は売れないと言って。それが今役にたっていて。」

「いやいや、その経験があるからこそだよね。ほんと研究熱心だしな。あ、美月、高瀬さんのとこのシートに決めた。羊羹が包みやすい薄いのがあった!」

「ほんと?よかったあ。」

「実は包む機械も、レンタルで貸し出してます。」

「そんなのがあるのか!?」

「はい。」

「切ってから一個につき5秒くらいでできますので。お客様をお待たせすることもないかとおもいます。」

「その機械レンタルいくらするんですか?」

いいものがあればいれたいけど、経営者としてはそこが気になる。

「無料です。と言いたいところですが、僕が開発したもので、うちの商品を使ってるお客様には月3000円でレンタルしてもらってます。それ以外のお客様には30000円のレンタル料いただいてます。」

「一回それを使って実践してみたいけどな。」

「それも可能です。今週一台返却されるのでお持ちしますよ。もしレンタルするとなりますと僕が組み立てて新品をお出しします。」

「へぇ。何でもできるな。高瀬くんは。」

「いえ、僕、高専のロボット部だったんでもの作りが趣味なんですよ。」

高瀬が笑う。

「高瀬商店はお菓子のシートや和紙だけじゃないんだなあ。」

父が言う。

「今、いろんなことに挑戦してやってかないとうちみたいな中小企業はつぶれちゃいますよ。」

高瀬の言ってる内容は暗いが明るく言うのでそんな感じがしない。

ほんとこのご時世何か始めるならいろんな引き出しをもたないと乗りきっていけないんだなと改めて感じている美月だった。

「最終日にこの普通の羊羹をコーヒーと一緒にプレゼントしたいんだがどうか?」

「いいかも!昔からのお客さんにもカフェにきてもらいたいもんね。」

「そういうことならはやめに一台しあげないといけませんね!」

「すいません。」

「いえ、こちらもうちの商品がどうなってお客様の手元に届くか見届けるのも仕事です。」

すっごい、いい人。いやみがない。

周りの人にめぐまれている。

しみじみそう感じるのだった。

~~~~~~~~~~~~~
    
こちらは慶明大学理工学部情報学科の研究室。

「先生、このプログラミング難しいですよっ」

「それくらいできなきゃ推薦は無理ですね。」

「どうにかしてください。」

「無理だね。」

ニコっと笑って突き返す。

「藤田先生っーー。」

「さあ帰ってください。自分でもう一回やってみて。」

ここは心の研究室だ。

パソコンのノウハウを学びそれをいかす職業につく目的をもって入学してきても脱落してしまう学生も多くいる。

はやいうちにそういうのを諦めて転学している学生たちはいいがそのままダラダラ居続けて就職に焦っている子達も多くいる。

誰もが自分の希望通りにはいかないのが現状だ。


トゥルルトゥルル短い内線の音がなる。

「はい。藤田です。」

「藤田先生、学生課の内田です。先生に今、ツールフリーの花田様からお電話です。」

「はい。」

「もしもし、藤田先生ですか?」

「ああ、はい。」

「お久しぶりね、年末にあったけど、花田です。」

「はい。めずらしいね。」

「私、今度の人事異動で人事課配属になるのでいい学生さんたちがいたらご紹介してもらおうかと思って。」

「そうなんですね。」

「ついては、3月31日に2時から説明会をひらきますので、先生と一緒にきてもらえます?」

あ、その日は星原菓子店の最終営業日だわ。

「私も必要ですか?」

「ええ、説明会の間ずっといなくてもいいけど、慶明から数名とりたいから先生から学生たちの能力も聞きたいわ。」

「分かりました。じゃあ2時間ほど学生たちとお伺いします。」

「宜しくね。」

あっという間に決まってしまった。
できればもう沙也加には関わりたくないんだけどな。
学生たちのためだから仕方ない。

美月に少しだけ抜けること伝えよう。
そう思った心だった。








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