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第1部 オカマと思っていたらその男はバイだった。
大切な場所
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今日はクリスマスイブ。たくさんの人が街にいて、隣の人と語りながら、幸せを感じているんだろうかというくらい街は幸せに溢れている。
美月と心はイルミネーションを見にきている。
「うわあ。綺麗だわね。」
「ほんと、綺麗。」
お決まりの恋人たちの会話をしている。
美月の手はしっかり心のポケットに入っている。
いつまでも見ていたい。
キラキラしているのはもちろんだが、この瞬間を彼氏と過ごしている満足感にいつまでも浸っていたいと思うのだ。
心の横顔をそっと見てみる。
今日もたけるくんだわ。隣にいるのが申し訳ないくらい。すっと通った鼻、あごのラインもほどよくでていて、まつげもとても長い。
「何?」と気付いて心が聞いてくる。
「ううん。寒いね。」
「寒いね。帰ろっか。」と心。
「うん。」
帰ろうとしたとき、髪の長い女性とすれ違い、話しかけられた。
「心?」
心のことを見ていた。心がその女性を見た。
「沙也加、、、」
「元気にしてた?」
さやかと呼ばれた女性は、茶色のワンピースにステンカラーのコートをきていた。黒髪のロングの髪をたらしていた。
「うん。沙也加は?」
「元気よ。彼女?」
「ああ。」
「そっかあ。あれからもう10年だもんね。」
「うん。じゃあ。」
心はさやかのことを見ずに歩きだした。
美月はペコリと頭をさげて心についていく。
誰?
聞きたいけど、聞かなくてもわかる。
元カノだと思う。
きれいな人だった。
心の隣に並んで歩くと絵になっただろうなあ。なんで別れちゃったんだろう。別れなければこのショーウインドウに映る女は私じゃなくてもっと美人な人だったんだろうに。
「会わなくていい人に会っちゃったわね。美月、気にしないでね。」
心が言う。
「全然、気にしないよ。心さん、大人だし、元カノどころか元彼もたくさんいたと思うし。」
「そんなたくさん付き合ってないわよ。」
「ええー、絶対50人くらいは付き合ってそう。」
「、、何だと思われてるの私。」心が決まり悪そうに首をすくめた。
さすがに50は多いかな、、、、。
でもそう思わないと。
私は数多くいた歴代の彼女たちの仲間に入っただけだ。
自分だけが特別なんて期待はしない。何故か胸が傷んだ。
「変なこと言ってごめんね。」
つまらないことで、せっかくのクリスマスにケンカしたくない。
謝ってみた。そう、少し自分の気持ちをおしころして。それはほんとに少しなんだけど。この我慢は小さいことだけど、きっと大きくなっていくんだ。
何か歯車が狂いはじめるんだ。
「美月、我慢しないで。」
美月の両頬を心の大きな手がつつむ。
「やだ。人がたくさんいるよ。」
「そんな顔をさせたくないのよ。」
美月の瞳から一筋涙が流れた。
「きれいな人だったから焼きもちだよ。心さんの隣は誰にも渡したくない。」
「うん。、、私は美月が好き。」心が美月をみつめる。
「わかってる。」
「ほんとに?、、今夜は覚悟しなさいよ。」
心は美月に口づけた。
その場所だけ時がとまっていた。
多くの人が通りすぎていくこの街で。
まるで2人しかいないかのように。
その時、その瞬間は、永遠だった。
~~~~~~~~~~~~~~~~
年が明けて正月3日。
とあるホテルの近くの喫茶店。
兄の食事会の後に父母とお茶にきていた。
それにしても神経が、疲れた。
食事会、できれば出たくなかった。
結婚したはずの妹が結婚もせずに無職の職無し子だから、なんとなく気がひけるのだ。
彼女のご両親はそんなこともちろん聞かないし、私に興味もないのだが、勝手に考えてしまってるのだ。
特に何のヘマもすることなく無事食事会を終えて安心した。
父と母にそんな私の様子を察したのかお茶をして帰ろうと誘われて、近くの喫茶店に入ったのだ。
「オネエサンの着物可愛かったね。」
「お似合いの2人だったね。」
「春菜さんも早く子どもがほしそうだったなあ。」
と父親がいうと母親と美月は怪訝な顔をした。
「お父さんの勘違いじゃないですか?」
「うん。だってオネエサン、コウノドリにお任せしますって言ってたじゃん。」
お父さんの希望にちがいない。早く孫を抱きたいだけだ。
だいたい子どもの予定を聞くほうが野暮というものだ。今は欲しくてもできない人も多いというから。
「ところで、美月。もうそろそろ実家に帰ってきたら?仕事も決まってないんじゃないの?」
「仕事は決まってないけど、もうちょっと1人暮らししたい。」
「何かやりたいことでもあるの?」と母が尋ねた。
「ないよ。、、私星原菓子店継ごうかな。」
「何を言うんだ。菓子店を継ぐなら修行をせんといかん。そんな甘いものじゃないぞ。」職人気質の父は甘くはない。
「うん。でもお兄ちゃんは先生だし、オネエサンも先生だし。継いでくれる人がいないと困るんじゃないの?」
「全くこまらない。」
「そうよ。全くこまらないわよ。」
「やりたいことがあるなら応援するわよ。」
「父さん、母さんはあの店はそろそろたたもうと思っている。」と父が言う。
「なんで?」
「もう、毎朝早起きするのも体にこたえるしな。」
「私もリウマチが最近悪化してきてね。たち仕事がきついのよ。店番してるのも。」と母。
「隣だけ貸し店舗にでもするかな。」
「それはいや!」
私はあの店が好き。あの雰囲気が好き。
絶対残したい。
星原菓子店は戦後に祖父が作った。いつも家に帰れば菓子店の上の祖父たちの住居に行き父と母が仕事が終わるのを待っていた。
その店を他の人に貸すなんていや。
「私にとってあの店は私の大事な場所だった。それを人に貸すなんて絶対いや。」
「とは言ってもなあ。父さんだって人に貸したくはないけどなあ。でも誰かに使ってやもらわないと店もダメになるしなあ。」
「そうよ。店だけじゃなく住居部分も掃除するのは母さんなのよ。もう無理できないわ」
「わかった。じゃああの店私に頂戴。」
「え?」と父が驚く。
「美月そんな簡単に。。」
「小学校のときからあの店ついでもいいと思ってたの。簡単じゃない。あの店は私に頂戴。」
美月は父母に頭を下げた。
あの店は絶対他の人にはまかせない!!
美月と心はイルミネーションを見にきている。
「うわあ。綺麗だわね。」
「ほんと、綺麗。」
お決まりの恋人たちの会話をしている。
美月の手はしっかり心のポケットに入っている。
いつまでも見ていたい。
キラキラしているのはもちろんだが、この瞬間を彼氏と過ごしている満足感にいつまでも浸っていたいと思うのだ。
心の横顔をそっと見てみる。
今日もたけるくんだわ。隣にいるのが申し訳ないくらい。すっと通った鼻、あごのラインもほどよくでていて、まつげもとても長い。
「何?」と気付いて心が聞いてくる。
「ううん。寒いね。」
「寒いね。帰ろっか。」と心。
「うん。」
帰ろうとしたとき、髪の長い女性とすれ違い、話しかけられた。
「心?」
心のことを見ていた。心がその女性を見た。
「沙也加、、、」
「元気にしてた?」
さやかと呼ばれた女性は、茶色のワンピースにステンカラーのコートをきていた。黒髪のロングの髪をたらしていた。
「うん。沙也加は?」
「元気よ。彼女?」
「ああ。」
「そっかあ。あれからもう10年だもんね。」
「うん。じゃあ。」
心はさやかのことを見ずに歩きだした。
美月はペコリと頭をさげて心についていく。
誰?
聞きたいけど、聞かなくてもわかる。
元カノだと思う。
きれいな人だった。
心の隣に並んで歩くと絵になっただろうなあ。なんで別れちゃったんだろう。別れなければこのショーウインドウに映る女は私じゃなくてもっと美人な人だったんだろうに。
「会わなくていい人に会っちゃったわね。美月、気にしないでね。」
心が言う。
「全然、気にしないよ。心さん、大人だし、元カノどころか元彼もたくさんいたと思うし。」
「そんなたくさん付き合ってないわよ。」
「ええー、絶対50人くらいは付き合ってそう。」
「、、何だと思われてるの私。」心が決まり悪そうに首をすくめた。
さすがに50は多いかな、、、、。
でもそう思わないと。
私は数多くいた歴代の彼女たちの仲間に入っただけだ。
自分だけが特別なんて期待はしない。何故か胸が傷んだ。
「変なこと言ってごめんね。」
つまらないことで、せっかくのクリスマスにケンカしたくない。
謝ってみた。そう、少し自分の気持ちをおしころして。それはほんとに少しなんだけど。この我慢は小さいことだけど、きっと大きくなっていくんだ。
何か歯車が狂いはじめるんだ。
「美月、我慢しないで。」
美月の両頬を心の大きな手がつつむ。
「やだ。人がたくさんいるよ。」
「そんな顔をさせたくないのよ。」
美月の瞳から一筋涙が流れた。
「きれいな人だったから焼きもちだよ。心さんの隣は誰にも渡したくない。」
「うん。、、私は美月が好き。」心が美月をみつめる。
「わかってる。」
「ほんとに?、、今夜は覚悟しなさいよ。」
心は美月に口づけた。
その場所だけ時がとまっていた。
多くの人が通りすぎていくこの街で。
まるで2人しかいないかのように。
その時、その瞬間は、永遠だった。
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年が明けて正月3日。
とあるホテルの近くの喫茶店。
兄の食事会の後に父母とお茶にきていた。
それにしても神経が、疲れた。
食事会、できれば出たくなかった。
結婚したはずの妹が結婚もせずに無職の職無し子だから、なんとなく気がひけるのだ。
彼女のご両親はそんなこともちろん聞かないし、私に興味もないのだが、勝手に考えてしまってるのだ。
特に何のヘマもすることなく無事食事会を終えて安心した。
父と母にそんな私の様子を察したのかお茶をして帰ろうと誘われて、近くの喫茶店に入ったのだ。
「オネエサンの着物可愛かったね。」
「お似合いの2人だったね。」
「春菜さんも早く子どもがほしそうだったなあ。」
と父親がいうと母親と美月は怪訝な顔をした。
「お父さんの勘違いじゃないですか?」
「うん。だってオネエサン、コウノドリにお任せしますって言ってたじゃん。」
お父さんの希望にちがいない。早く孫を抱きたいだけだ。
だいたい子どもの予定を聞くほうが野暮というものだ。今は欲しくてもできない人も多いというから。
「ところで、美月。もうそろそろ実家に帰ってきたら?仕事も決まってないんじゃないの?」
「仕事は決まってないけど、もうちょっと1人暮らししたい。」
「何かやりたいことでもあるの?」と母が尋ねた。
「ないよ。、、私星原菓子店継ごうかな。」
「何を言うんだ。菓子店を継ぐなら修行をせんといかん。そんな甘いものじゃないぞ。」職人気質の父は甘くはない。
「うん。でもお兄ちゃんは先生だし、オネエサンも先生だし。継いでくれる人がいないと困るんじゃないの?」
「全くこまらない。」
「そうよ。全くこまらないわよ。」
「やりたいことがあるなら応援するわよ。」
「父さん、母さんはあの店はそろそろたたもうと思っている。」と父が言う。
「なんで?」
「もう、毎朝早起きするのも体にこたえるしな。」
「私もリウマチが最近悪化してきてね。たち仕事がきついのよ。店番してるのも。」と母。
「隣だけ貸し店舗にでもするかな。」
「それはいや!」
私はあの店が好き。あの雰囲気が好き。
絶対残したい。
星原菓子店は戦後に祖父が作った。いつも家に帰れば菓子店の上の祖父たちの住居に行き父と母が仕事が終わるのを待っていた。
その店を他の人に貸すなんていや。
「私にとってあの店は私の大事な場所だった。それを人に貸すなんて絶対いや。」
「とは言ってもなあ。父さんだって人に貸したくはないけどなあ。でも誰かに使ってやもらわないと店もダメになるしなあ。」
「そうよ。店だけじゃなく住居部分も掃除するのは母さんなのよ。もう無理できないわ」
「わかった。じゃああの店私に頂戴。」
「え?」と父が驚く。
「美月そんな簡単に。。」
「小学校のときからあの店ついでもいいと思ってたの。簡単じゃない。あの店は私に頂戴。」
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