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おっさんに酒を渡し、話を終えた匠と康平も来たので早速設営を始める事にする。
さすがに男三人で同じテントというのも気色悪いので、ソロのテントを三張り張る事に。
匠は自前の小さなティピーテントを、俺は自分用にパップテントと、康平用にドーム型のソロテントをそれぞれ組み立てる。
ティピーテントとは主柱を一本とする、角錐型のテントだ。
テントと聞けばこの形を思い浮かべる人も多いだろう。元はインディアンに代表される民族が使用する移動型住居を原型とするテントだ。
特徴としてワンポールテントなので中央部の天井高が高く取れる事、そして張り方にコツは要るが、設営の容易さが挙げられるだろうか。
昨今のキャンプブームの中で、お洒落な風合いのテントが多く登場し、人気になった形状と言える。
匠が持ってきているのはソロ用で天井高も低く、より設営の簡易さを追及したモデルだ。
バイクツ―リング用に設計されているため、よりコンパクトに軽量になるよう作られている。
そして康平の為に持って来たのは、キャンプを始めたばかりで手探りだった時期に購入した、ソロ用のドーム型テント。
初心者向けのエントリーモデルで、体の大きな康平にも合うかと思い持ってきたのだった。
まず始めるならこういったドーム型テントから体験するのが良いと思う。
ティピーテントやパップテントのように、テント内に邪魔になるポールが無く居住性が高く、上から地面まで全面をすっぽり覆う袋の形をしているので安心感もある。
天井高も高めなのでそこまで低く屈まずに中を動き回れるし、インナーテントとフライシートの二重構造になるのも地味に良いポイントだ。
そしてドーム型テントは設営に関して複雑な部分が少なく、覚えるのに最適だとも思える。
初心者でテントに迷ったならば、まずは安価で良いのでドーム型テントの購入をお薦めする。
変わった形の物に挑戦するのは、ドーム型テントに慣れた後で充分だろう。
組み立て方法が記載された説明書を康平に手渡し、二人で設営する事に。
さすがにこのテントの説明書は紛失してしまっているので、別のドーム型テントの組み立て説明書を持ってきていた。
このタイプのテントは基本はどれもほぼ同じ組み立て方なので、一度覚えてしまえば別のメーカーであってもある程度出来てしまうのも良い点だと思う。
「よし、平らだしここでいいかな。組み立て始めよう」
「うス。よろしくお願いしまっス。えーと、まずはメインポール二本をインナーテントのスリーブに……?」
「スリーブってのはこれな」
と、メッシュ生地になっているテントに縫われた、細長いチューブ状の部分を指し示す。
そこに中にゴムコードが入った連結式のポールを伸ばして組み立て、差し込んでいく。
吊り下げ式であればこの手間は要らないのだが、今回持ち込んだテントはスリーブ式の方だ。
二本差し込み終わると、バツ印の形になる。
「なんか、テントの面積に対して滅茶苦茶この棒長くないっスか?」
「テントを立ち上げた時にピッタリの長さになるんだよ」
康平の言う通り、広げたテントから倍近い長さがはみ出しており、初めて見ると寸法が間違っているんじゃないかと感じるかもしれないな。と少し思う。
「四隅に穴があるだろ。対角線状にそれぞれ差していくんだ。手本見せるから、まずは康平が押さえる側な」
「うっス」
返事をするとポールを穴に差し込み抑える康平。少しここからが力仕事になる。
テントを立ち上げるようにポールをしならせつつ、力を込めて穴に入るよう曲げていく。
途中、しばらく使っていないテントだし、ポールが劣化していて割れるんじゃないかヒヤリとしたが、なんとか収まり円弧上に沿ってポールが立つ。
「ふう、じゃあ今度は康平がやってみな」
「なんか結構力技なんスね」
「このタイプは皆そうだよ。これぐらいは一人でもできるけど、大きいテントになると流石に一人じゃ組み立てらんないな」
「へえ……まあ、やてみまス」
見よう見まねでポールを曲げながら穴へ差し込もうとするも、苦戦しているようでなかなか上手くいかない。
「もうちょい力入れても大丈夫だから」
「これ……折れないっスか!? なんか怖いんスけど!」
「大丈夫大丈夫……多分」
「多分!?」
まあ絶対に折れないと言えないのが正直な所。何せ十年ぐらい前の、オークションサイトか何かで購入した安物テントだからなあ。
しかしぎゃあぎゃあ喚きながらも何とか差し込み、テントが完全に立ち上がった。
「おお、こうなるんスか」
「そうっスよ……って、なんかお前の口調うつるな」
「リョースケ君、アイデンティティー的な部分弱いっスからねえ」
「余計なお世話だ」
地味だの、無個性だのとは昔から言われていた事だった。
自分の中ではそんな事は無いと思っているのだが、どうにも周囲から見ると「キャラが薄い」らしい。
「まあ、ここまで来たら後はフライシート被せてロープ張って、ペグ打てば終わりだ。簡単だろ?」
「何か、思ってたより楽勝っスね。タクミ君なんてもう終わってるし。こういうのってもっと面倒かと思ってた」
「でかいテントになればなる程大変にはなるけど、基本さえ掴んどけばそんなに難しくないよ。そんじゃシート被せっか」
「っス」
そこからは手分けして行える作業なので早かった。ロープワークも基本の”もやい結び”を教えたのだが、そこはさすが建設業を営む男。
普段から荷縛りだったり、材料を吊ったりするのにロープを使うらしく扱いは手慣れたもので、一度見せただけですぐに覚えてしまった。
後はペグダウンだけなので打つ角度を決めれば任せてしまえば良い。
俺は俺で自分のテントを立てなければ。
……くそ、匠の奴もう椅子出して休憩してやがる。荷下ろしぐらいやっとけっての。
康平に終わったら匠と一緒に荷下ろしするよう指示を出しておき、俺は自分のテントを組み立て始める。
さすがに男三人で同じテントというのも気色悪いので、ソロのテントを三張り張る事に。
匠は自前の小さなティピーテントを、俺は自分用にパップテントと、康平用にドーム型のソロテントをそれぞれ組み立てる。
ティピーテントとは主柱を一本とする、角錐型のテントだ。
テントと聞けばこの形を思い浮かべる人も多いだろう。元はインディアンに代表される民族が使用する移動型住居を原型とするテントだ。
特徴としてワンポールテントなので中央部の天井高が高く取れる事、そして張り方にコツは要るが、設営の容易さが挙げられるだろうか。
昨今のキャンプブームの中で、お洒落な風合いのテントが多く登場し、人気になった形状と言える。
匠が持ってきているのはソロ用で天井高も低く、より設営の簡易さを追及したモデルだ。
バイクツ―リング用に設計されているため、よりコンパクトに軽量になるよう作られている。
そして康平の為に持って来たのは、キャンプを始めたばかりで手探りだった時期に購入した、ソロ用のドーム型テント。
初心者向けのエントリーモデルで、体の大きな康平にも合うかと思い持ってきたのだった。
まず始めるならこういったドーム型テントから体験するのが良いと思う。
ティピーテントやパップテントのように、テント内に邪魔になるポールが無く居住性が高く、上から地面まで全面をすっぽり覆う袋の形をしているので安心感もある。
天井高も高めなのでそこまで低く屈まずに中を動き回れるし、インナーテントとフライシートの二重構造になるのも地味に良いポイントだ。
そしてドーム型テントは設営に関して複雑な部分が少なく、覚えるのに最適だとも思える。
初心者でテントに迷ったならば、まずは安価で良いのでドーム型テントの購入をお薦めする。
変わった形の物に挑戦するのは、ドーム型テントに慣れた後で充分だろう。
組み立て方法が記載された説明書を康平に手渡し、二人で設営する事に。
さすがにこのテントの説明書は紛失してしまっているので、別のドーム型テントの組み立て説明書を持ってきていた。
このタイプのテントは基本はどれもほぼ同じ組み立て方なので、一度覚えてしまえば別のメーカーであってもある程度出来てしまうのも良い点だと思う。
「よし、平らだしここでいいかな。組み立て始めよう」
「うス。よろしくお願いしまっス。えーと、まずはメインポール二本をインナーテントのスリーブに……?」
「スリーブってのはこれな」
と、メッシュ生地になっているテントに縫われた、細長いチューブ状の部分を指し示す。
そこに中にゴムコードが入った連結式のポールを伸ばして組み立て、差し込んでいく。
吊り下げ式であればこの手間は要らないのだが、今回持ち込んだテントはスリーブ式の方だ。
二本差し込み終わると、バツ印の形になる。
「なんか、テントの面積に対して滅茶苦茶この棒長くないっスか?」
「テントを立ち上げた時にピッタリの長さになるんだよ」
康平の言う通り、広げたテントから倍近い長さがはみ出しており、初めて見ると寸法が間違っているんじゃないかと感じるかもしれないな。と少し思う。
「四隅に穴があるだろ。対角線状にそれぞれ差していくんだ。手本見せるから、まずは康平が押さえる側な」
「うっス」
返事をするとポールを穴に差し込み抑える康平。少しここからが力仕事になる。
テントを立ち上げるようにポールをしならせつつ、力を込めて穴に入るよう曲げていく。
途中、しばらく使っていないテントだし、ポールが劣化していて割れるんじゃないかヒヤリとしたが、なんとか収まり円弧上に沿ってポールが立つ。
「ふう、じゃあ今度は康平がやってみな」
「なんか結構力技なんスね」
「このタイプは皆そうだよ。これぐらいは一人でもできるけど、大きいテントになると流石に一人じゃ組み立てらんないな」
「へえ……まあ、やてみまス」
見よう見まねでポールを曲げながら穴へ差し込もうとするも、苦戦しているようでなかなか上手くいかない。
「もうちょい力入れても大丈夫だから」
「これ……折れないっスか!? なんか怖いんスけど!」
「大丈夫大丈夫……多分」
「多分!?」
まあ絶対に折れないと言えないのが正直な所。何せ十年ぐらい前の、オークションサイトか何かで購入した安物テントだからなあ。
しかしぎゃあぎゃあ喚きながらも何とか差し込み、テントが完全に立ち上がった。
「おお、こうなるんスか」
「そうっスよ……って、なんかお前の口調うつるな」
「リョースケ君、アイデンティティー的な部分弱いっスからねえ」
「余計なお世話だ」
地味だの、無個性だのとは昔から言われていた事だった。
自分の中ではそんな事は無いと思っているのだが、どうにも周囲から見ると「キャラが薄い」らしい。
「まあ、ここまで来たら後はフライシート被せてロープ張って、ペグ打てば終わりだ。簡単だろ?」
「何か、思ってたより楽勝っスね。タクミ君なんてもう終わってるし。こういうのってもっと面倒かと思ってた」
「でかいテントになればなる程大変にはなるけど、基本さえ掴んどけばそんなに難しくないよ。そんじゃシート被せっか」
「っス」
そこからは手分けして行える作業なので早かった。ロープワークも基本の”もやい結び”を教えたのだが、そこはさすが建設業を営む男。
普段から荷縛りだったり、材料を吊ったりするのにロープを使うらしく扱いは手慣れたもので、一度見せただけですぐに覚えてしまった。
後はペグダウンだけなので打つ角度を決めれば任せてしまえば良い。
俺は俺で自分のテントを立てなければ。
……くそ、匠の奴もう椅子出して休憩してやがる。荷下ろしぐらいやっとけっての。
康平に終わったら匠と一緒に荷下ろしするよう指示を出しておき、俺は自分のテントを組み立て始める。
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