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第十二話 最後の教導 後編
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「見つけました。ここから三百歩程先の位置です。三体居ました」
音もなく戻ってきたソフィーが声を潜めて報告する。
今回請けたクエストは”レークス”の翼を欲している帆船職人からのものだった。レークスは簡単に言うと蛇寄りな翼竜……ワイバーンのような魔物である。
討伐等級はB寄りのC。間違いなく、今まで対した敵の中では強敵だ。それが三体となれば危険度は一気に上がる。
しかし心配はしていなかった。今の三人であればきっと。
「ソフィーの奇襲から始めたい所かな。空に逃げられるとわたしじゃどうにもならないから、なるべく地上で戦いたい」
「一応、あたしも攻撃魔法は教わってきてるから牽制はできる。当てる自信ないけど」
「高所に足場のある場所やったら、うちが空を押さえるわ。今あいつらが居るトコは見晴らし良過ぎて微妙な感じやね」
「誘導が必要か……じゃあ、わたしが引きつけるからソフィーは一体を確実に仕留めて。エミリーは魔法の感覚を試しつつ援護お願い」
「はいな」
「了解」
三人だけでも作戦立案ができている。まだまだソフィー頼りでアドリブ多めなのは気になるが、手札が少ないので仕方がない。
今回はなるべく手を出すつもりは無かった。最終試験のつもりではあるが、ぶっちゃけ俺では手に負えない相手でもある。
「じゃ、ここからはソフィーは隠密で。エミリーとイクヤさんは先回りして待機。もし誘導に失敗したらこちらに来て」
緊張した面持ちのニアが全員を見回し、頷くのを確認すると行動を開始する。
ニアが大声を上げる。
まだ幼さが残る声なのでライアンのような威圧感は薄い。それでも”雄叫び(ウォー・クライ)”の形にはなっていた。
崖上でたむろしていたレークス達が気づき、ニアへ向かって飛び立つ。
ニアは既に森の方向へと駆け出している。
「そんじゃ試し打ちと行きますか、エミリーさん」
「鬱陶しいわね気が散るでしょ」
ニアが全速力で向かってきている中、茂みの中に陣取りエミリーがロッドを構える。
そして静かに詠唱を始める。
攻撃系統の魔法にも適性を示していたとは、俺も知らなかった。ソニアかリリアンが仕込んだのだろうが、よくこいつに教える気になったものだ。あのノーコンぶりを見ていたら無理だと思うのに。
すぐに詠唱が終わり、ロッドに青白い火花が走り始める。
こいつの優れた点は、魔法詠唱の速さと正確さだ。魔法士によってかなりばらつきのある部分で、雑な者ほど詠唱や魔力の変換に時間が掛かる。
特に詠唱は結構慎重に行わなければいけないらしく、発音を間違えるとやり直しになってしまう。同時に自分の魔力を変換していく作業も行うので、これも下手な者は失敗しやすい。
デイジー曰く、歌詞を見ながら歌いつつ、別の物語を書き写すようなもの、と言っていた。同時並行で物事を処理できる頭でなければ無理なのだとか。
その点エミリーは魔法の詠唱の覚えも良く、発音も正確だし口が回るらしい。普段から毒ばかり吐いてよく喋るので、それで鍛えられたか。
「あんた、滅茶苦茶失礼な事考えてない?」
「いいえ滅相も。感心してたんだよ」
「ほんと? まあいいわ。”雷光(ライトニング)”」
カチリと音が鳴り、引き鉄が引かれた事が分かる。
宝玉から一直線に青白い閃光が飛び出していった。
閃光は最後尾のレークスの元へと飛んで行き、尾の半ばに当たる。
しかし弾かれてしまい意に介していないようだ。
「命中。すげーな」
「頭狙ってたんだからハズレよ。次は当てる」
「その意気だ。移動するぞ」
照準とどの程度差があるとか、発射される魔法の速度もまだ把握できていないのに命中させるとは、正直驚きだった。
あの速度で飛ぶレークスに当てるなど神業レベルだと思う。
後ろから見ていただけだったが、ロッドを構えるエミリーはわりと様になっていた。
駆けていたニアが止まり、剣と盾を構える。あと少しで追い付かれるタイミングだった。
レークス達がニアに向かって殺到する。だが。
「死んどきや」
右手側のレークスの首が落ちる。
青い髪を翻しながらソフィーが横切っていった。
後方にいた一体が驚き動きを止めるが、先頭の一体はそのままニアの盾に激突する。
ニアの五倍はあろう体躯に、車並みの速度が出ているレークスの突撃。まず弾き飛ばされて無事では済まないだろう。
だが、ニアは盾と体捌きで逸らし、更に尾を切り落とす一撃を加えていた。
冷静な上に素早い一撃だ。
悲鳴の雄叫びを上げながら斬られたレークスは墜落する。
「”雷光”」
隣のエミリーが呟くと、木を掴み着地するソフィーの背後から襲い掛かろうとしているレークスに、雷撃が放たれる。
「お見事」
今度は片翼を撃ち抜き、体勢を崩させる。
「まだ合わないわね……焦れったい」
「本当にエミリーさん?」
「うっさい、気が散る」
鬱陶しそうに手を振り、今度はニアの方を向く。
レークスは蛇のような長くうねる胴体に巨大な一対の翼、そして小さな四本の足が生えている。頭部は単眼で、口を開くと針のような牙が疎らに生えた、滑りのある咥内が露わになる。
威嚇するように鳴くレークスに、盾に隠れつつニアは対峙している。
様子を見るに、自分の尾を斬った相手に怒り狂っているようだ。
レークスは体を立ち上がらせ、蛇が襲い掛かるように凄まじい速度の噛みつきを放つ。
盾と牙が激突し火花が散る。ニアはまともに受けてしまい、後退りした。
まだステータスでは負けているという事だろう。
続けて二撃目が来る。これも盾で受けるが今度は大きく後退。
甲高い鳴き声を上げながら三撃目。完全にガードが崩される。衝撃に耐えきれなかったか。
詠唱を終えたエミリーがロッドを構えているが、撃てない。ニアが邪魔だ。
「盾を投げて下がれ!」
思わず叫んでいた。
反射的にニアは大盾を宙に手放し、後方へと跳躍する。
四撃目は支えの無い盾にぶつかるも弾かれ、空中のニアへと牙を剥く。
だがエミリーの放った雷撃が既に迫っており、頭部に直撃する。
レークスは怯み動きを止めた。
続けてエミリーは詠唱を始める。治癒魔法のものだ。
視線を移すとソフィーが左肩から血を流しながら駆けているのが見える。空中から襲い掛かるもう一体のレークス。
翼の一撃をまともに受けて吹き飛ばされていた。
カチリ。
引き鉄の音が鳴ると、ソフィーに薄緑色の光が灯る。
そして次の詠唱へ。
ソフィーはこちらをチラと見ると口角を上げ、再び空中を自在に飛ぶレークスに構え直す。
「はあっ!!」
ニアの気合の一声が聞こえると覆いかぶさるように襲い掛かっていたレークスの胴体を真ん中から横一文字に両断していた。
身体に微かな、黄色の靄のようなものが見える。何かオーラのようなものを纏っているのかもしれない。
ソフィーも薙刀を大きく回すと、身を翻し突撃してくるレークスを迎え討つ。
再び翼で打ち倒そうとするレークスに対し、回転して下方から上方へ向けて切り上げるように薙刀を振るうと、レークスは腹の半ばから頭にかけて縦に断ち割られる。
最後は薙刀をビタリと構えて両断されたレークスとすれ違う。
倒したレークスには目もくれず、周囲の確認をして次の魔物が来ないかを警戒している。
「ふう、あたしの援護は要らないみたいね」
宝玉に込められた魔力を解き、エミリーが溜息を吐く。
「今回は百発百中だったな」
「当然。まあ、あんたには礼を言っておくわ……これであたしも戦える」
こちらには顔を向けず小さくそんな事を言うもんだから、頭に手を置いて撫でる。
喚くか噛みつくかでもしてくるかと思ったが、意外にも大人しくされるがまま撫でられていた。
「周囲に魔物の気配は無さそうや。ちゃっちゃと解体しましょか」
「うん、始めよっか。やっぱりソフィーはさすがっ」
「結構ピンチでしたけどね、でもエミリーちゃんには助けられたわ」
「もっと褒めてもいいのよソフィー。それよりもニア、ダメージは大丈夫?」
「大丈夫……って言いたいところだけど治癒お願いしようかな。盾で防いでた時骨にきちゃったみたいで」
と左手を上げると手首の上辺りからダランと下がり、苦笑いしている。
エミリーとソフィーが悲鳴を上げ、慌てて治癒魔法の詠唱に入った。
「お前、折れてる状態で最後剣振ってたのか」
「あはは……実は一発目の突撃を逸らした時に折れてたみたいです。あれから痛くて盾構えてられなくて。だからイクヤさんの助言助かりました」
「怪我してるなら早く言えよ」
「まー、最初はこれぐらい大丈夫かなって思ってたんで」
レークスとの地上戦で簡単にガードを崩された理由はそういう事だったのか。ニアにもエミリーにもまだまだ課題がある。
「ソフィーは薙刀の感触はどうだ?」
「今までで一番しっくり来てますね。斬れ味もめっちゃいいし、斬るも突くも刃の背で打つのも何でも出来てええですわ。今回あれだけ苦戦したのは単純にうちの力不足だと思います。もっと、この武器の力を引き出せる戦い方を覚えな」
手にした薙刀をヒラヒラと刃を交互に回転させつつ頷く。
多少苦戦した感覚があったとは言え、レークス三体。討伐指標としてはBランクの真ん中程度の難易度だ。
しっかりとエミリーが機能するようになったので、俺から見てもパーティーに訪れた危機としてはそれ程大きく感じなかった。それだけ戦闘中に治癒ができるか否かの影響は大きいのだ。
今回はCランクのクエストとして請けたが、三体を同時に相手するのはBランクパーティーでなくては厳しい。なのでこの三人は、その域にまで到達しているという事だった。
……裏を返すと、もう戦力的に俺は足手まといになる、という事でもある。
俺が警戒役として見回り、女子三人でレークスの翼の回収を始める。
この翼膜は丈夫だし風の受けも良い上に湿気にも強く、帆船の帆に使うのに良いらしい。なので三体分を渡せれば追加の報酬も貰えるかもしれない。
その後は魔物との遭遇はソフィーが捌きながら進み、日が傾く頃にはギルド会館に帰還した。
音もなく戻ってきたソフィーが声を潜めて報告する。
今回請けたクエストは”レークス”の翼を欲している帆船職人からのものだった。レークスは簡単に言うと蛇寄りな翼竜……ワイバーンのような魔物である。
討伐等級はB寄りのC。間違いなく、今まで対した敵の中では強敵だ。それが三体となれば危険度は一気に上がる。
しかし心配はしていなかった。今の三人であればきっと。
「ソフィーの奇襲から始めたい所かな。空に逃げられるとわたしじゃどうにもならないから、なるべく地上で戦いたい」
「一応、あたしも攻撃魔法は教わってきてるから牽制はできる。当てる自信ないけど」
「高所に足場のある場所やったら、うちが空を押さえるわ。今あいつらが居るトコは見晴らし良過ぎて微妙な感じやね」
「誘導が必要か……じゃあ、わたしが引きつけるからソフィーは一体を確実に仕留めて。エミリーは魔法の感覚を試しつつ援護お願い」
「はいな」
「了解」
三人だけでも作戦立案ができている。まだまだソフィー頼りでアドリブ多めなのは気になるが、手札が少ないので仕方がない。
今回はなるべく手を出すつもりは無かった。最終試験のつもりではあるが、ぶっちゃけ俺では手に負えない相手でもある。
「じゃ、ここからはソフィーは隠密で。エミリーとイクヤさんは先回りして待機。もし誘導に失敗したらこちらに来て」
緊張した面持ちのニアが全員を見回し、頷くのを確認すると行動を開始する。
ニアが大声を上げる。
まだ幼さが残る声なのでライアンのような威圧感は薄い。それでも”雄叫び(ウォー・クライ)”の形にはなっていた。
崖上でたむろしていたレークス達が気づき、ニアへ向かって飛び立つ。
ニアは既に森の方向へと駆け出している。
「そんじゃ試し打ちと行きますか、エミリーさん」
「鬱陶しいわね気が散るでしょ」
ニアが全速力で向かってきている中、茂みの中に陣取りエミリーがロッドを構える。
そして静かに詠唱を始める。
攻撃系統の魔法にも適性を示していたとは、俺も知らなかった。ソニアかリリアンが仕込んだのだろうが、よくこいつに教える気になったものだ。あのノーコンぶりを見ていたら無理だと思うのに。
すぐに詠唱が終わり、ロッドに青白い火花が走り始める。
こいつの優れた点は、魔法詠唱の速さと正確さだ。魔法士によってかなりばらつきのある部分で、雑な者ほど詠唱や魔力の変換に時間が掛かる。
特に詠唱は結構慎重に行わなければいけないらしく、発音を間違えるとやり直しになってしまう。同時に自分の魔力を変換していく作業も行うので、これも下手な者は失敗しやすい。
デイジー曰く、歌詞を見ながら歌いつつ、別の物語を書き写すようなもの、と言っていた。同時並行で物事を処理できる頭でなければ無理なのだとか。
その点エミリーは魔法の詠唱の覚えも良く、発音も正確だし口が回るらしい。普段から毒ばかり吐いてよく喋るので、それで鍛えられたか。
「あんた、滅茶苦茶失礼な事考えてない?」
「いいえ滅相も。感心してたんだよ」
「ほんと? まあいいわ。”雷光(ライトニング)”」
カチリと音が鳴り、引き鉄が引かれた事が分かる。
宝玉から一直線に青白い閃光が飛び出していった。
閃光は最後尾のレークスの元へと飛んで行き、尾の半ばに当たる。
しかし弾かれてしまい意に介していないようだ。
「命中。すげーな」
「頭狙ってたんだからハズレよ。次は当てる」
「その意気だ。移動するぞ」
照準とどの程度差があるとか、発射される魔法の速度もまだ把握できていないのに命中させるとは、正直驚きだった。
あの速度で飛ぶレークスに当てるなど神業レベルだと思う。
後ろから見ていただけだったが、ロッドを構えるエミリーはわりと様になっていた。
駆けていたニアが止まり、剣と盾を構える。あと少しで追い付かれるタイミングだった。
レークス達がニアに向かって殺到する。だが。
「死んどきや」
右手側のレークスの首が落ちる。
青い髪を翻しながらソフィーが横切っていった。
後方にいた一体が驚き動きを止めるが、先頭の一体はそのままニアの盾に激突する。
ニアの五倍はあろう体躯に、車並みの速度が出ているレークスの突撃。まず弾き飛ばされて無事では済まないだろう。
だが、ニアは盾と体捌きで逸らし、更に尾を切り落とす一撃を加えていた。
冷静な上に素早い一撃だ。
悲鳴の雄叫びを上げながら斬られたレークスは墜落する。
「”雷光”」
隣のエミリーが呟くと、木を掴み着地するソフィーの背後から襲い掛かろうとしているレークスに、雷撃が放たれる。
「お見事」
今度は片翼を撃ち抜き、体勢を崩させる。
「まだ合わないわね……焦れったい」
「本当にエミリーさん?」
「うっさい、気が散る」
鬱陶しそうに手を振り、今度はニアの方を向く。
レークスは蛇のような長くうねる胴体に巨大な一対の翼、そして小さな四本の足が生えている。頭部は単眼で、口を開くと針のような牙が疎らに生えた、滑りのある咥内が露わになる。
威嚇するように鳴くレークスに、盾に隠れつつニアは対峙している。
様子を見るに、自分の尾を斬った相手に怒り狂っているようだ。
レークスは体を立ち上がらせ、蛇が襲い掛かるように凄まじい速度の噛みつきを放つ。
盾と牙が激突し火花が散る。ニアはまともに受けてしまい、後退りした。
まだステータスでは負けているという事だろう。
続けて二撃目が来る。これも盾で受けるが今度は大きく後退。
甲高い鳴き声を上げながら三撃目。完全にガードが崩される。衝撃に耐えきれなかったか。
詠唱を終えたエミリーがロッドを構えているが、撃てない。ニアが邪魔だ。
「盾を投げて下がれ!」
思わず叫んでいた。
反射的にニアは大盾を宙に手放し、後方へと跳躍する。
四撃目は支えの無い盾にぶつかるも弾かれ、空中のニアへと牙を剥く。
だがエミリーの放った雷撃が既に迫っており、頭部に直撃する。
レークスは怯み動きを止めた。
続けてエミリーは詠唱を始める。治癒魔法のものだ。
視線を移すとソフィーが左肩から血を流しながら駆けているのが見える。空中から襲い掛かるもう一体のレークス。
翼の一撃をまともに受けて吹き飛ばされていた。
カチリ。
引き鉄の音が鳴ると、ソフィーに薄緑色の光が灯る。
そして次の詠唱へ。
ソフィーはこちらをチラと見ると口角を上げ、再び空中を自在に飛ぶレークスに構え直す。
「はあっ!!」
ニアの気合の一声が聞こえると覆いかぶさるように襲い掛かっていたレークスの胴体を真ん中から横一文字に両断していた。
身体に微かな、黄色の靄のようなものが見える。何かオーラのようなものを纏っているのかもしれない。
ソフィーも薙刀を大きく回すと、身を翻し突撃してくるレークスを迎え討つ。
再び翼で打ち倒そうとするレークスに対し、回転して下方から上方へ向けて切り上げるように薙刀を振るうと、レークスは腹の半ばから頭にかけて縦に断ち割られる。
最後は薙刀をビタリと構えて両断されたレークスとすれ違う。
倒したレークスには目もくれず、周囲の確認をして次の魔物が来ないかを警戒している。
「ふう、あたしの援護は要らないみたいね」
宝玉に込められた魔力を解き、エミリーが溜息を吐く。
「今回は百発百中だったな」
「当然。まあ、あんたには礼を言っておくわ……これであたしも戦える」
こちらには顔を向けず小さくそんな事を言うもんだから、頭に手を置いて撫でる。
喚くか噛みつくかでもしてくるかと思ったが、意外にも大人しくされるがまま撫でられていた。
「周囲に魔物の気配は無さそうや。ちゃっちゃと解体しましょか」
「うん、始めよっか。やっぱりソフィーはさすがっ」
「結構ピンチでしたけどね、でもエミリーちゃんには助けられたわ」
「もっと褒めてもいいのよソフィー。それよりもニア、ダメージは大丈夫?」
「大丈夫……って言いたいところだけど治癒お願いしようかな。盾で防いでた時骨にきちゃったみたいで」
と左手を上げると手首の上辺りからダランと下がり、苦笑いしている。
エミリーとソフィーが悲鳴を上げ、慌てて治癒魔法の詠唱に入った。
「お前、折れてる状態で最後剣振ってたのか」
「あはは……実は一発目の突撃を逸らした時に折れてたみたいです。あれから痛くて盾構えてられなくて。だからイクヤさんの助言助かりました」
「怪我してるなら早く言えよ」
「まー、最初はこれぐらい大丈夫かなって思ってたんで」
レークスとの地上戦で簡単にガードを崩された理由はそういう事だったのか。ニアにもエミリーにもまだまだ課題がある。
「ソフィーは薙刀の感触はどうだ?」
「今までで一番しっくり来てますね。斬れ味もめっちゃいいし、斬るも突くも刃の背で打つのも何でも出来てええですわ。今回あれだけ苦戦したのは単純にうちの力不足だと思います。もっと、この武器の力を引き出せる戦い方を覚えな」
手にした薙刀をヒラヒラと刃を交互に回転させつつ頷く。
多少苦戦した感覚があったとは言え、レークス三体。討伐指標としてはBランクの真ん中程度の難易度だ。
しっかりとエミリーが機能するようになったので、俺から見てもパーティーに訪れた危機としてはそれ程大きく感じなかった。それだけ戦闘中に治癒ができるか否かの影響は大きいのだ。
今回はCランクのクエストとして請けたが、三体を同時に相手するのはBランクパーティーでなくては厳しい。なのでこの三人は、その域にまで到達しているという事だった。
……裏を返すと、もう戦力的に俺は足手まといになる、という事でもある。
俺が警戒役として見回り、女子三人でレークスの翼の回収を始める。
この翼膜は丈夫だし風の受けも良い上に湿気にも強く、帆船の帆に使うのに良いらしい。なので三体分を渡せれば追加の報酬も貰えるかもしれない。
その後は魔物との遭遇はソフィーが捌きながら進み、日が傾く頃にはギルド会館に帰還した。
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