【第一部 完結】俺は俺の力を俺の為に使い、最強の「俺」となる ~便利だが不遇な「才能開花」のスキルでどう強くなればいい~

古道 庵

文字の大きさ
上 下
23 / 45

第十一話 思わぬ収穫 前編

しおりを挟む
 リカールの群れとの交戦だった。
 森林個体で暗い緑色の体毛を生やしている。

 リカールの群れが付近で家畜を襲っている、とメサルティムの村から緊急でクエストが発注され、三パーティー合同での討伐に乗り出していた。
 群れの数は二十体を越えている。一パーティーでの対処では危険なレベルだった。

 俺としてはリカールがタイマンの勝率三割の相手なのは変わらない。だが、ニアパーティーと一緒に動いているならば話は別だ。
「影踏み来るよ!」
「了解!」

 赤い目をしている一体が大きく身構えるのを見て、エミリーが注意を飛ばし、ニアが答える。
 するとニアの背後に出現し爪で掻き殺そうとするが、ニアは振り向かずに長剣を自分の脇の隙間から突き出し、見事に喉元を貫いた。

 ……あんな曲芸、いつできるようになったのやら。
 苦笑いしつつ、目の前に迫る口元目掛けて斧を投げつける。

 無論、防がれてしまうが織り込み済みだ。
 自分の間合いだと勝ち誇ったような笑みを浮かべるリカールの脳天から顎に向かって鋼の棒が通過する。ソフィーの槍だった。

 引き抜かれ未だに自分が生きていると錯覚しているのか爪を振るうが、俺の斧の一撃で難なくトドメとなる。

 群れの中を飛び回る青い影。
 使い慣れた愛槍を振り回し、鈍色の旋風を巻き起こすソフィー。
 突き、薙ぎ、回転、跳躍、防御、回避。全ての動作を槍を起点に行い捌き、とんでも無い速度で次々と仕留めに掛かる。
 ソフィーの周りには警戒してリカールも近づかない。しかし、青髪の旋風から肉薄され目に見えない速度の刺突と殴打で呆気なく倒されていく。

 ……一人で半分は引き受けられるレベルだな、冗談抜きで。

 ソフィー無双と化している戦場、他の二パーティーはそれぞれが二体ずつを引き受けている。

「イクヤ! あっち見て!」
 エミリーに名前を呼ばれて指差された方向には、三人の商人らしき荷物を背負った男達が突っ立っていた。
「なんで戦闘音に気づかないんだ!」
 舌打ちしながら駆け出す。一体のリカールが向かったからだ。

 ニアもソフィーも目の前の敵に応戦している。俺しか動けない。

 近づいてくるリカールを相手に、長い槍を構えて威嚇する商人達。しかし戦い馴れていないのが目に見えて分かる。腰が引けている。
 だが、リカールの足を止めたのは良い判断だった。

 ギリギリで俺が間に割って入る時間が作れた。商人達を背に二本の斧を構えて庇う。

 真正面からのタイマン、足手まとい三人、格上、シチュエーションとして言えばかなりマズい。

 冷汗が背筋に流れるのを感じる。

 リカールが飛びかかりのモーションに入る。避けたいが、避ければ後ろの三人が。
 チラと後ろを見て歯を食いしばる。リカールがこちらに跳躍してきた。

 結局リカールの攻撃をモロに受けてしまった。牙は両手の斧で防いだものの、爪が右肩と背の左側それぞれに食い込み切り裂かれる。革鎧程度では易々と引き裂かれてしまった。
 熱い。激痛に顔を顰めるが、両腕に力を込め牙を数本折ながら押し返し、弾き飛ばす。
 悠々と後方に着地して再度構えるリカール。
 まずい、筋肉を切られたか? 背中の方の感覚がおかしい。

「エミリー! 治癒頼む!」
「任せなさい!」
 叫ぶと自信満々な返事が来たので、痛みながらも期待で口角が上がる。

「地獄の特訓の成果見せてみろ!」
「もうあんたにノーコンなんて言わせないんだから!」
 詠唱を終えたエミリーがロッドを振るう。以前よりも詠唱が速く、そして正確になった。
 苦手としていた遠隔の治癒、これさえ克服できていれば一線で戦える治癒魔法士だ。

 柔らかな緑色の光が現れる。
 傷口がみるみる塞がり、皮膚にその跡すら残さない程の回復力を見せた。

 ……リカールが。

「エミリいいいいいい!!」
「ごめんってーーー!!」

 体力全快となったリカールが軽やかに宙を舞う。
 狙いは満身創痍の俺。仕留めるのは容易いとの判断だろう。

 マジかよこれ。死ぬの?
 ここで?

 半笑いで迫る爪牙を眺める。
 逆フレンドリーファイアだろこんなの。
 ふざけんな。

「このノーコンがーーーーー!!」

 遺言がこんなのなんて、嫌だ。


――――――――


「いやあ、助かりましたよお兄さんのお陰で。これぞ英雄、冒険者ってな!」
「俺結局何もできてないし……礼ならそこのソフィーに」
「青髪のお姉さんは激強だよねえ。専属の傭兵やってくんない? 夜の方も相手してくれるなら二日で金貨一枚出してもいいけど」
「お断りやボケ!!」

 リカールの群れの殲滅が終わり、後始末は他の二パーティーが行ってくれていた。
 ほぼ損害も無いし仕事量として足りないと判断しての事だ。二十四体のリカールを討伐したものの、他にもうろついている可能性がある。その索敵と追撃役を買って出てくれたのだった。

 今は助けた商人達と話しつつ、怪我の治療を行っている。体を張って盾になったのはいいが、結局ノーコン治癒魔法士のせいで死にかけた。
 ソフィーが駆けつけてくれて事なきを得たが、間に合わなければ男四人の惨殺死体が増えていただろう。

「んで、エミリーさんよう……どういう事?」
「まあ、いつも当てられるとは限らないじゃない? あんたも斧投げ外してるでしょ」
「俺のは攻撃だし、全力で動く相手に予測で当ててんだよ。お前のは待ってる相手に当てるだけでいいのに何で外すんだよ」
「うっさいわねー、ネチネチしつこいっての地味男」
「特訓して命中率上がったんだろ?」
「そりゃ当たり前でしょ」
「何回中何回だ?」
「ふん……そんなの百発百中に」
「四回に一回、だっけ?」
「ニア!」
 剣の手入れをしながら答えるニアに、エミリーが口を塞ぎに掛かる。

「お前、終わった時は十回中八回って言ってなかったか?」
「そ、それは言葉の受け取り方の違いっていうか……」
「ふう。次は一か月ベックの所に放り込むか」
「!! それだけは無理!!!」
「なんや、エミリーちゃん楽しそうやなあ」
「可愛い美少女達に囲まれて、お兄さんも幸せな男ですなあ」
「「どこが?」」
 のほほんとするソフィーと糸目が印象的な商人の男に、二人でツッコミを入れる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界成り上がり物語~転生したけど男?!どう言う事!?~

ファンタジー
 高梨洋子(25)は帰り道で車に撥ねられた瞬間、意識は一瞬で別の場所へ…。 見覚えの無い部屋で目が覚め「アレク?!気付いたのか!?」との声に え?ちょっと待て…さっきまで日本に居たのに…。 確か「死んだ」筈・・・アレクって誰!? ズキン・・・と頭に痛みが走ると現在と過去の記憶が一気に流れ込み・・・ 気付けば異世界のイケメンに転生した彼女。 誰も知らない・・・いや彼の母しか知らない秘密が有った!? 女性の記憶に翻弄されながらも成り上がって行く男性の話 保険でR15 タイトル変更の可能性あり

異世界を服従して征く俺の物語!!

ネコのうた
ファンタジー
日本のとある高校生たちが異世界に召喚されました。 高1で15歳の主人公は弱キャラだったものの、ある存在と融合して力を得ます。 様々なスキルや魔法を用いて、人族や魔族を時に服従させ時に殲滅していく、といったストーリーです。 なかには一筋縄ではいかない強敵たちもいて・・・・?

(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!

ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。 なのに突然のパーティークビ宣言!! 確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。 補助魔法師だ。 俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。 足手まといだから今日でパーティーはクビ?? そんな理由認められない!!! 俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな?? 分かってるのか? 俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!! ファンタジー初心者です。 温かい目で見てください(*'▽'*) 一万文字以下の短編の予定です!

勇者、追放される ~仲間がクズばかりだったので、魔王とお茶してのんびり過ごす。戻ってこいと言われても断固拒否。~

秋鷺 照
ファンタジー
 強すぎて勇者になってしまったレッグは、パーティーを追放され、一人で魔王城へ行く。美味しいと噂の、魔族領の茶を飲むために!(ちゃんと人類も守る)

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

勇者パーティーから追放されたけど、最強のラッキーメイカーがいなくて本当に大丈夫?~じゃあ美少女と旅をします~

竹間単
ファンタジー
【勇者PTを追放されたチートなユニークスキル持ちの俺は、美少女と旅をする】 役立たずとして勇者パーティーを追放されて途方に暮れていた俺は、美少女に拾われた。 そして俺は、美少女と旅に出る。 強力すぎるユニークスキルを消す呪いのアイテムを探して――――

魔法使いの国で無能だった少年は、魔物使いとして世界を救う旅に出る

ムーン
ファンタジー
完結しました! 魔法使いの国に生まれた少年には、魔法を扱う才能がなかった。 無能と蔑まれ、両親にも愛されず、優秀な兄を頼りに何年も引きこもっていた。 そんなある日、国が魔物の襲撃を受け、少年の魔物を操る能力も目覚める。 能力に呼応し現れた狼は少年だけを助けた。狼は少年を息子のように愛し、少年も狼を母のように慕った。 滅びた故郷を去り、一人と一匹は様々な国を渡り歩く。 悪魔の家畜として扱われる人間、退廃的な生活を送る天使、人との共存を望む悪魔、地の底に封印された堕天使──残酷な呪いを知り、凄惨な日常を知り、少年は自らの能力を平和のために使うと決意する。 悪魔との契約や邪神との接触により少年は人間から離れていく。対価のように精神がすり減り、壊れかけた少年に狼は寄り添い続けた。次第に一人と一匹の絆は親子のようなものから夫婦のようなものに変化する。 狂いかけた少年の精神は狼によって繋ぎ止められる。 やがて少年は数多の天使を取り込んで上位存在へと変転し、出生も狼との出会いもこれまでの旅路も……全てを仕組んだ邪神と対決する。

処理中です...