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第一章 学生編
学校生活1
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「おはよ、須我君」
「おはよう」
席に座っていると早水さんが話掛けてきた。
編入初日、以前に資料館で会った早水さんと八坂の姿があって面食らった気分になった。まあ二クラスしか無いので二分の一の確率ではあったのだが。
それもあって早水さんは最初からよく話しかけてくれるので助けられた。八坂に関してはこちらとは目も合わせようとはせず、俺も関わりたくなかったので話した事は無い。
二日目に組手を八坂と組まされた。正直に言って強い。
中盤までは同じ位かとも思っていたが、頭突き後の連続の蹴りは対処しきれなった。因みに右手の骨にヒビを入れられ暫くサポーターを付ける羽目になった事も腹立たしい。
だがそんな事よりも、最後に組み伏せた後の一撃が頭から離れない。
そのまま組み敷こうと体を起こした瞬間、弾かれたように八坂が回転し左の脇腹に強烈な衝撃が走った。
訳が分からないまま吹っ飛ばされ、気が付いたら地面を転がっていたという恰好だ。
恐らく体を回転させて脇を殴られたのだとは思うが、あの体勢でそんな動きと威力を出せるなど夢にも思わなかった。
野木先生が化け物揃いだ、と言っていた意味を最初から体感させられたのは、正直良かった事だと思う。
その後は八坂と組む事はなく、それぞれの兵装を模した武具を使用した模擬訓練などが続いた。そちらは散々で、様々なクラスメイトが腕を試したがって俺と組んだがまるで歯が立たない。
男子も女子も関係なく皆一様に強い。
しかし組手なら八坂以外の相手であれば皆に勝てる自信があり、ここまで鍛えてくれた野木先生と亀井先生には本当に感謝している。
八坂についてはもう別格としか言いようが無かった。実技に関しては頭二つぐらい抜きん出て強い。
一対一での訓練では誰も組みたがらない理由が見ていてよく分かった。
早水さんによれば座学でもトップで、成績の評定でも全て最高評価らしい。性格はねじ曲がっていて最悪だが、誰もが認める優秀な男なのだそうだ。
加えて血筋が有名らしく”八坂”の名は猟特隊内でも伝わる程らしい。どうやら父親が元連隊長で、上の二人の兄もそれぞれ幹部隊員との噂だ。
なので入学当初から注目されかなり目立ったらしかった。
「今日の授業嫌なんだよねー……私機械音痴だから、兵装の仕組みとかさっぱり」
「俺も同じ。全然分かんね」
今日は兵装の展開原理と機構についての授業で、早水さんはその話をしている。
俺も苦手……というより座学は全てさっぱりだった。何せこちとら中学を出てから一年ちょっとは勉強に触れてこず、去年の特別教育課程では足りない学力の補填と疎らな知識を与えられただけ。
まるで話のレベルが違う。
俺なりに頑張ったが最後まで野木先生は困った顔をしていた。基礎の欠片しか知らないのにいきなり応用の話をさせられているので、知らない単語を調べているだけで一日が終わってしまう始末だった。
一応今も、放課後に亀井先生が昨年からの続きを教えてくれているが、時間も限られているし午後の実技でへばっているのであまり身に付かないのが現状だったりする。
「私でこれだから須我君じゃ余計にそうだようね。まあ、分からない事があったら聞いてね」
「ありがと、助かります」
神社で柏手を打つように手を合わせ頭を下げる。
早水 竜胆は非常に面倒見の良い性格している。ともすればお節介と言える程の世話焼きで、編入したばかりの俺にほとんど付きっきりの状態だ。
その性格から「委員長」が彼女のあだ名になっており、最初は本当に彼女がクラス委員長をしているものだと勘違いしてしまっていた。
この学校にはそういった役職や委員会、部活動などの概念は無い。
入隊を控えている生徒達にそれらを行える余裕もなく、また皆一様に優秀なので誰かが管理する必要も無いのだ。
言ってしまえばそれぞれが全員、他の学校では生徒会長と首席と部長とキャプテンとエースを全て担えてしまうような人材の集まりだった。
そんな優秀な者達の中でも早水さんの成績は上位五名に入る程に優秀で、刀剣の訓練時にコテンパンにされた事も印象深い。
そんな訳もあって彼女は友人と言うより尊敬する人物に昇華されている。
既にひと月経過し五月も半ば。
少しずつ馴染んできてはいるが、そもそもの頭の造りが違うクラスメイトの中で浮いている自覚が非常にある。
会話していても思考速度に着いて行けない事があり、その度に詳しく説明を求めるのも悪い気がしていた。
その点早水さんは俺に対して同じ歩調で会話進めてくれる、数少ない気遣いのあるクラスメイトだ。
顔立ちも整っていて、伸ばしている途中だと言うボブの黒髪も似合うしスタイルも良い。様々な面で完璧な才媛と言って良かった。
「おはよう」
席に座っていると早水さんが話掛けてきた。
編入初日、以前に資料館で会った早水さんと八坂の姿があって面食らった気分になった。まあ二クラスしか無いので二分の一の確率ではあったのだが。
それもあって早水さんは最初からよく話しかけてくれるので助けられた。八坂に関してはこちらとは目も合わせようとはせず、俺も関わりたくなかったので話した事は無い。
二日目に組手を八坂と組まされた。正直に言って強い。
中盤までは同じ位かとも思っていたが、頭突き後の連続の蹴りは対処しきれなった。因みに右手の骨にヒビを入れられ暫くサポーターを付ける羽目になった事も腹立たしい。
だがそんな事よりも、最後に組み伏せた後の一撃が頭から離れない。
そのまま組み敷こうと体を起こした瞬間、弾かれたように八坂が回転し左の脇腹に強烈な衝撃が走った。
訳が分からないまま吹っ飛ばされ、気が付いたら地面を転がっていたという恰好だ。
恐らく体を回転させて脇を殴られたのだとは思うが、あの体勢でそんな動きと威力を出せるなど夢にも思わなかった。
野木先生が化け物揃いだ、と言っていた意味を最初から体感させられたのは、正直良かった事だと思う。
その後は八坂と組む事はなく、それぞれの兵装を模した武具を使用した模擬訓練などが続いた。そちらは散々で、様々なクラスメイトが腕を試したがって俺と組んだがまるで歯が立たない。
男子も女子も関係なく皆一様に強い。
しかし組手なら八坂以外の相手であれば皆に勝てる自信があり、ここまで鍛えてくれた野木先生と亀井先生には本当に感謝している。
八坂についてはもう別格としか言いようが無かった。実技に関しては頭二つぐらい抜きん出て強い。
一対一での訓練では誰も組みたがらない理由が見ていてよく分かった。
早水さんによれば座学でもトップで、成績の評定でも全て最高評価らしい。性格はねじ曲がっていて最悪だが、誰もが認める優秀な男なのだそうだ。
加えて血筋が有名らしく”八坂”の名は猟特隊内でも伝わる程らしい。どうやら父親が元連隊長で、上の二人の兄もそれぞれ幹部隊員との噂だ。
なので入学当初から注目されかなり目立ったらしかった。
「今日の授業嫌なんだよねー……私機械音痴だから、兵装の仕組みとかさっぱり」
「俺も同じ。全然分かんね」
今日は兵装の展開原理と機構についての授業で、早水さんはその話をしている。
俺も苦手……というより座学は全てさっぱりだった。何せこちとら中学を出てから一年ちょっとは勉強に触れてこず、去年の特別教育課程では足りない学力の補填と疎らな知識を与えられただけ。
まるで話のレベルが違う。
俺なりに頑張ったが最後まで野木先生は困った顔をしていた。基礎の欠片しか知らないのにいきなり応用の話をさせられているので、知らない単語を調べているだけで一日が終わってしまう始末だった。
一応今も、放課後に亀井先生が昨年からの続きを教えてくれているが、時間も限られているし午後の実技でへばっているのであまり身に付かないのが現状だったりする。
「私でこれだから須我君じゃ余計にそうだようね。まあ、分からない事があったら聞いてね」
「ありがと、助かります」
神社で柏手を打つように手を合わせ頭を下げる。
早水 竜胆は非常に面倒見の良い性格している。ともすればお節介と言える程の世話焼きで、編入したばかりの俺にほとんど付きっきりの状態だ。
その性格から「委員長」が彼女のあだ名になっており、最初は本当に彼女がクラス委員長をしているものだと勘違いしてしまっていた。
この学校にはそういった役職や委員会、部活動などの概念は無い。
入隊を控えている生徒達にそれらを行える余裕もなく、また皆一様に優秀なので誰かが管理する必要も無いのだ。
言ってしまえばそれぞれが全員、他の学校では生徒会長と首席と部長とキャプテンとエースを全て担えてしまうような人材の集まりだった。
そんな優秀な者達の中でも早水さんの成績は上位五名に入る程に優秀で、刀剣の訓練時にコテンパンにされた事も印象深い。
そんな訳もあって彼女は友人と言うより尊敬する人物に昇華されている。
既にひと月経過し五月も半ば。
少しずつ馴染んできてはいるが、そもそもの頭の造りが違うクラスメイトの中で浮いている自覚が非常にある。
会話していても思考速度に着いて行けない事があり、その度に詳しく説明を求めるのも悪い気がしていた。
その点早水さんは俺に対して同じ歩調で会話進めてくれる、数少ない気遣いのあるクラスメイトだ。
顔立ちも整っていて、伸ばしている途中だと言うボブの黒髪も似合うしスタイルも良い。様々な面で完璧な才媛と言って良かった。
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