囚われの踊り手は闇に舞う

徒然

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 レイの細い喉をペニスで貫く勢いで腰を打ち付けると、レイは喉を精一杯開いて迎え入れる。ごぶ、と重い音を響かせながら口を窄め、神崎のペニスに刺激を送る。
「っは……、きもち、いいな……」
 思わず呟いた神崎の腰を抱き、動きに合わせて首を動かす。
「っく……っ」
 神崎が腰を震わせて精液を注ぐと、レイは喉を鳴らしてそれを飲み込んだ。
 吐く息は、どちらも荒い。神崎がレイの髪を褒めるように撫で、レイの額に口付ける。
「ありがとう。気持ちよかったよ」
 首をするりと撫でると、レイが嬉しそうに目を細めた。
「じゃあ、俺も着替えるか。少し、いい子に待ってて」
 にこ、と笑った神崎が、ディルドをレイの口に差し込み、手元で何か操作した。
 まだ精液の匂いが残る喉の奥でそれが震え、思わずその場にへたり込むレイを撫でると、神崎が襦袢を手にした。
「すぐ着替えるよ」
 神崎が、かち、とスイッチを切り替える。不規則な振動がレイを襲った。
「っん、っ……」
 喉を擦られる苦しさが快楽に書き換えられて腰を揺らすレイ。神崎はくすりと笑い、鏡越しにレイを見つめたまま、襦袢を纏った。
 しゅる、という衣擦れの音と、レイの喉を犯すディルドの音。くぐもった呻き声。神崎は襦袢を押し上げるペニスから襦袢を退け、緩く扱いて見せる。
 レイは切なげに眉を寄せ、床にペニスを擦り付けるように腰を揺らしていた。
「後で、狂うほど犯してやるから。いい子で待ってろよ、
 着物を着、レイと同じように前をはだけさせて腰紐に括る。行灯袴を着た姿は、レイが見とれるほど様になっていた。

「お待たせ」
 微笑む神崎が、レイの口からディルドを引き抜く。そのまま深く口付けると、レイが神崎の腕にすがりついた。
「っ、ケン……、っ」
 もっと、と吐息で請われた神崎は、レイの髪を撫で梳きながら舌を差し込む。レイに絡め取られ、舌先でなぞられて、息が乱れる。
「好きだよ。……
 神崎の言葉に、レイがはっと我に返る。恥じるように頬を染め、離れようとするレイを引き寄せ、神崎は耳元に唇を寄せた。
 神崎の指が、レイの首を撫でる。
「ここに首輪を付けたら……狂うほど愛してあげる。いいね?
 うっとりと目を閉じたレイが、甘えるように掌に頬を擦り付ける。薄目を開け、神崎の頭を引き寄せると、触れるだけの口付けをした。
「分かった。……
 ――本当は今すぐ無茶苦茶に抱かれたい。レイの部屋で、昼も夜もなく。
 そう思ってしまったレイは、抱かれる想像をして甘く息を吐いた。

 道具類を清め、手近な鞄に詰めた神崎が、レイの手を引き車に乗せる。
「少し走るから、休んでていいぞ」
 するりと頬を撫で、車は静かに動き始めた。
 神崎の運転は穏やかで、昨夜から達し続けていたレイの瞼が重くなる。
「ほら。いいから寝てろ」
 赤信号で止まった時、笑いながら神崎がレイの頭を撫でた。その優しい声音と温もりに、レイの抵抗が薄れた。
「ん……ごめん……」
 ぽつりと呟き、掌に擦り寄ったレイから、力が抜ける。間もなく、すぅ、と静かな寝息が聞こえ、神崎は口角を上げた。

 そのまま車走らせること暫く。二人はとある神殿の前で並んで立っていた。周囲は廃村なのか、町は荒れて人の気配はない。それでも、最低限度ながら人の手で整えられているこの場所は、確かに信仰の場所なのだろう。
 どなたでもお入りください、と小さく書かれた札が下がり、入口には鍵すらかかっていなかった。
 そんな場所をよく知っていたものだ、とレイが神崎を見上げると、神崎は優しく笑ってレイを撫でる。
 僅かに軋む扉を開くと、正面には神像が静かに佇んでいる。しんと静まり返った祈りの場所。ステンドグラスから差し込む陽が彩りを添えるだけの、静謐な場所。
「ここは……?」
 問いかけるレイの腰を抱き、神崎がゆっくりと祭壇へ向かう。
 正面にある神像に礼をとり、神崎がレイの向き合った。
「玲。ここに神がいるかどうか、俺には分からないけど」
 神崎の真剣な眼差しに、レイが息を飲む。神崎はすっと跪き、レイの左手を取ってその甲に口付ける。

「生涯お前だけを愛すると、俺の全てを捧げると、レイと、玲に誓う」
 低く告げられる宣誓に、レイの目から涙が零れる。立ち上がった神崎は優しくそれを拭い、袂から小ぶりな箱を取り出した。
「目に見える形で、これから先のお前の全てを縛り付けたい」
 開かれた箱には、銀色に輝く指輪が並ぶ。神崎はレイの左手を取り、その甲に額を付けて、レイに乞う。
「酒浦玲さん。どうか俺と、結婚してください」
 下げられた頭。頭頂部の項を見ながら、レイは呆然としていた。
 ――私が誰かに望まれるなど……。
 レイにとってそれは、得られるはずの無い未来そのものだった。まして、相手は自分が恋焦がれる人物で。
 反応が無いことを不安に感じた神崎が、恐る恐る頭を上げる。涙を流すレイに眉を下げる。
 ――だめか……?
 レイの手を離そうとした手を、きつく握り返された。レイはぼろぼろと涙を流し、しゃくりあげながら膝をつく。神崎の手に縋るように額を押し当てた。
「ケ、ん、本当に……?私で、いいのか、こんな、私、で」
 ――誰とも知れない、多くの男に穢された私で。淫らであるように、貴方以外の男に躾られた私で。
 レイが自らの過去を責めていることに気付いた神崎は、そっとレイを抱き締める。
「お前がいい。お前の過去ごと愛している。俺はもう、……お前しか要らない」
 吐息が触れるほど近くまで顔を寄せた神崎が、返事をくれないか、と囁く。ぽろぽろとこぼれ落ちる雫を指先で拭い、唇で吸い取ってレイの目を真っ直ぐ見つめた。
「……もし赦されるなら……私も、貴方と生涯を共にしたい、けど……っ」
 レイが続けようとした言葉は、神崎に飲み込まれた。隙間なく触れ合わせた唇。迷うレイを宥めるように神崎が舌先で口内を撫でると、レイの吐息が色づく。
「赦しが欲しいなら俺が与える。だから、……俺と共に生きてくれ」
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