囚われの踊り手は闇に舞う

徒然

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51 自覚

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 二人の休みが重なったある日の朝。神崎が、まどろむレイの頬を撫でている。明け方まで身体を重ね、うたた寝程度に休んだあとの気だるげな仕草で、レイが神崎の掌に口付けた。ぼんやりとした表情で指を食むレイを撫でながら、神崎がゆるりと苦笑を浮かべた。
 ――これは、寝ぼけているというよりは、セックスの余韻に浸っているのか。
 喉奥まで指を含み、腰を揺らすレイ。神崎がざらついた粘膜を擦ってやると、レイが甘く息を吐く。
「まだ足りないか?レイ」
 膨らんで主張する乳首を抓り、レイの後孔に触れると、レイが蕩けたままの目で神崎を見つめた。
「足りない……。貴方にずっと、繋がれていたい……」
 いつになく素直に告げるレイを撫でて褒めながら、レイの口から指を引き抜く。代わりに深い口付けをすると、レイは腰を揺らして神崎に抱きついた。
「今なら……、信じられるか?」
 ぽつりと呟いた言葉に、レイが首を傾げる。
「俺がお前を、一生手放すつもりは無いと……」
 神崎の心のどこかで、二人きりの生活の始まりが引っかかっていた。
 ――気にしない、つもりだったのにな……。
 好きだと伝えられること。お互いだけに触れること。それだけで良いと思っていたはずなのに。
 動きを止めてしまったレイを、苦笑を浮かべた神崎が撫でる。
「悪い。何でもない」
 誤魔化したところで、届いてしまった言葉は取り消せない。表情を隠すためにレイを抱き込めば、レイが胸元に擦り寄って甘えてくる。
 ――私は……健に無理を、させていたんだな……。
 レイとて、始めの頃よりは、精神的に安定してきている。少し先の未来なら信じられるようになったし、神崎の居ない部屋が寂しくて仕方がない。だから、神崎のペニスに良く似たものに犯されながら時間を忘れている。
 そこまで考えたレイが、はっとして目を瞬かせた。
 ――考えたこともなかったんだ。健が、私の前から居なくなるなんてことは。
 身動きが取れないほど縛られていても、神崎は必ず帰ってくるし、縄を解いてくれる。つまりは。
 動きを止めたレイを気遣うように、神崎が顔を覗き込む。
「……っ?!」
 神崎が思わず息を呑むくらいに、レイの顔は真っ赤で。
「大丈夫か?!」
 狼狽える神崎に小さく頷きつつも、レイはすぐに神崎の胸元に隠れてしまった。
 ――えっ、と。私、いつの間にか……。
 ぽぽ、と、レイの顔に熱が灯る。
 ――本当に今更だよ……。
 ちらりとレイが視線を上げると、心配そうな神崎と目が合う。その近さに狼狽えながら、まって、と思わず口走った。
 落ち着くために深呼吸を繰り返すレイを、神崎は優しく撫でてあやす。
「ケン。あ、いや、健?えっと」
 やたらと切羽詰まった様子でレイが言えば、神崎は軽く口付けて髪を撫でる。
「あの。私、……、貴方が、好きなんだ」
 神崎が戸惑いつつも礼を言うと、レイはもどかしげに首を振る。
「私、いつの間にか……健がここに戻ってくるのが、当たり前になってて」
 神崎は髪を撫でながら、レイをゆったりと抱き寄せる。背を撫で、髪に口付けながら先を促した。
「だから、多分、もう信じてるんだと思う」
 レイがぎゅ、と神崎に抱きつく。
 ――さっきみたいな顔はもう、させたくない。
「私はきっと、……貴方と生きることを、とっくに選んでいたんだよ」

「あきら……?」
 神崎の目が見開かれる。レイは、暖かい神崎の頬に触れ、口付ける。深まることなく触れ合わされるだけのレイの唇が、僅かに震えていた。
「レイとしても、玲としても。……貴方を愛しています」
 真っ赤な顔で、まっすぐに視線を合わせたレイが、そっと神崎の唇に口付けを落とす。それは神崎によってすぐに深くなり、レイの口端から二人の唾液が垂れる。
「愛してる。レイも、玲も。……ありがとう、玲」

 神崎の舌がレイの口内を荒らす。それに応えながら、レイは腰を擦り付けた。
 硬く熱くなったペニスの感触に、神崎が口付けたまま口角をあげる。
「犯されたくなったか?……それとも、俺を喘がせる?」
 悪戯っぽく笑う神崎に、レイがしがみつくように抱きついた。
「今は……、好きだと言いながら抱いて欲しい」
 いつかの言葉の再現に、神崎が吹き出すように笑う。レイに何度も口付けながら、頭を、身体を撫でる。
「今だけじゃなく……、ずっと言うよ」
 互いを見つめる視線が、まっすぐにぶつかる。そのたびに微笑み、また口付けを交わして。
「好きだよ。玲。……初めてレイを抱いたあの日から」
 頬を染めるレイの後孔に、神崎の指先が触れる。つぷりと差し込まれる感覚に、レイが甘い息を吐く。
「どうしよう、私……、なんだか変だ」
 蕩けながら腰を揺らすレイが、神崎にしがみついた。
「健の指だけで、もう……」
 イきそうだ、と告げるレイの吐息は熱く湿っていた。神崎はふっと笑い、前立腺に指を当てる。
「何度でもイけばいい。……好きだよ、レイ」
 すり、とそこを指が撫でる。レイは高く喘ぎながら腰を震わせ、こぷりと精液を吐き出した。
 指を引き抜き、代わりに神崎のペニスが差し込まれると、レイは目を見開いて達した。
「まだココにも入っていないのに、敏感だな」
 愉しげに笑う神崎が、膜をゆるゆるとつつく。
「だって、っ、あぁん」
 脚を広げ、腰を上げて、レイはその奥の快楽をねだる。神崎は太腿の裏に手を当てて押し開くと、腰を引いてペニスを引き抜いた。
「玲、好きだ。……俺を、奥に入れてくれるか?」
 ――今は健?それとも、ケン?
 快感でぼんやりとする頭で、神崎のペニスに触れる。ぬめりを帯びたそれは熱くて長く、いつもより太い気がした。
「好きだよ。レイのときの玲も、そのままのお前も」
 神崎の言葉にレイが微笑む。
 ――どちらでもいい。私だって。
 レイは臀部を開いて後孔を晒す。息を乱しながら神崎を見つめると、妖艶に微笑んだ。
「ケンも健も、愛してる。……来て」
 誘われるまま、神崎がレイの後孔を穿つ。揺らされ、前立腺をペニスで捏ねられて、レイは涙を散らしながら喘ぐ。
「ケン、……、キスして」
 ねだられた神崎がすぐに口付けると、レイの顔が綻ぶ。
「好きだよ、ケン……っあ、あ」
 奥をこじ開ける神崎にしがみつきながら、レイは神崎に身体を明け渡す。
「好きだ。レイ」
 低く耳に吹き込まれるのは、愛しい人の囁き声で。
「ずっと、お前といたい。……玲、愛しているよ」
 ぐぷりと膜を突き抜けた先で、神崎が腰を震わせる。レイも腰を揺らしてそこへの刺激を求めながら、神崎にぎゅっと抱きついた。
「私も、貴方といたい。健、愛してる」
 レイの声が耳に届く。神崎は嬉しそうに目を細め、腰を押し付けた。
「明日は、出掛けようか」
 レイの中を精液で染めながら言われた言葉に、レイは悲鳴のような喘ぎ声で応えた。
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