50 / 58
49 新たな関係 2
しおりを挟む
レイは何度か瞬きを繰り返す。神崎の言葉がまだ、上手く飲み込めなかった。それでも、触れている手は温かく、伝わる鼓動は強くて速い。目には穏やかな色と、包むような柔らかさと、隠しきれない欲が見えた。
「こんなこと言ったら、怒られそうだし、傷付けるかもしれないけど」
それでも信じきれないレイは、神崎の目をじっと見つめる。
首を傾げる仕草で先を促されたレイは、まっすぐに神崎を見た。
「私を棄てたくなったら……貴方の手で、終わらせて」
目を見開く神崎に、すまない、と心で謝りながら。
「そうしたら私は……健を愛したままで、貴方に愛されたままで終われるから」
一生、が信じられないからこそ、関係が終わる時に、生を終えたい。そう訴えるレイに、神崎がガシガシと頭をかき、ふっと苦笑を浮かべた。
「分かった。その代わり……お前も、俺を棄てる時は、その手で俺を殺せよ?」
虚をつかれたレイの髪を、神崎が撫でる。ふっと表情を弛め、そっと抱き寄せる。
「お前を殺めるときは、俺も一緒に逝ってやる」
頭頂部に口付けを繰り返し、背を抱きながら。
「知っているか?俺はもう……玲が居なければ、生きていられないんだ」
脱衣所で冷えた身体を、湯船で温める。暮らし始めたその日に、終わらせ方を約束することになるとは、と、神崎が腕に抱いたレイの顔を盗み見る。神崎は、それを怒る気にはなれなかった。幼い頃にはもうヤヒロの元に居たレイが、それだけ精神的にも傷付いてきたということだろう。
ぱしゃり、と湯を揺らしながら、レイが居心地悪そうにもぞもぞしている。その様子がどこか稚く、多少なりとも、先程の話題を悔いていることが伝わった。
「玲」
呼びかけるとびくっと肩を震わせるのがおかしくて、神崎は少し悪戯を思いつく。
「お前は、今だけ考えれていればいい。ただ俺に愛されていればいい」
でも、と首を振るレイに、神崎がくっと笑う。
「好きだよ、玲。お前の身も心も、愛して、愛して、甘やかして……、ぐずぐずに溶けたお前を犯して、壊してしまいたい」
レイがはっと顔を上げる。それは、初めての日に告げられた言葉にそっくりだったから。
神崎はふっと笑い、戸惑うレイに口付ける。
「愛しているよ。……抱いていいか?玲」
神崎はレイを寝室に連れていく。そこはキングサイズのベッドとクローゼット、サイドテーブルがある程度の、落ち着いた部屋だった。
「安心したか?」
一般的な寝室にぽかんとしたレイの頬が、みるみる赤くなる。
「そういうわけじゃ、ない、けど」
神崎はくくっと笑いながら、レイの肩からガウンを落とす。明かりを付けたままの部屋に晒される裸体に見蕩れていると、レイも神崎のガウンを脱がせる。
「薬のない玲を抱くのは、初めてだな」
するりと頬を撫でると、掌にレイが擦り寄る。
「貴方は健?それとも、ケン……?」
ぽつりと呟いた名前に、神崎がふっと笑う。
「今は、健として玲を抱きたい」
レイを引き寄せると、素直に身を預けてくる。そのまま耳元に口をやり、口付ける。
「レイの部屋では、ケンとしてレイを犯す」
吹き込まれる声に、レイのペニスが反応した。
「玲もレイも、愛しているよ」
その言葉にレイの顔が綻ぶ。
「私も。健もケンも、愛させて欲しい」
明かりを消さず、互いの存在を確かめるように向かい合う。
「なんだか、凄く……恥ずかしい」
媚薬も酒も飲まず。レイは、完全に素面のままで誰かと触れ合うのは、初めての事だった。
――いつもはもっと……、酔ったような状態でいたから。
「健。……上手くできなかったら、ごめんね」
緊張で、心臓が飛び出そうなほどだと笑えば、神崎も苦笑を浮かべた。
「ああ。俺も……緊張してる」
抱き締めれば、互いの鼓動の速さがばれる。それでも、愛しい人を目の前に、触れずには居られない。
「触れても、いいか?」
そう言って、神崎が手をそっと動かせば、レイはその手を取って頬を寄せる。
――いつもより少し、冷たくて気持ちいい。
ちゅ、と掌の窪みに口付けると、神崎がぴくりと跳ねる。レイがその手を軽く引くと、神崎は逆らわずにレイに一歩近付いた。
「触って。私も、健に触れたい」
もう少し来て、と引っ張る。顔を上げ、目を閉じたレイの唇に、神崎が誘われるように口付けた。そのまま、互いの形をなぞるように手を這わせた。
薄く目を開けると、細められた神崎の目と合う。ふ、と視線が緩み、口付けが深くなる。ちゅ、くちゅ、と音を立てながら抱き合う二人の、ペニスがずくりと疼き始めた。
「玲。お前を、愛させてくれ」
口付けの合間に囁かれ、レイは頷いて広い背に腕を回す。そのまま横抱きに抱き上げられたレイは、ベッドに優しく降ろされた。
「好きだ」
覆い被さる神崎の腕が、レイの横に置かれる。そのまま包むように頭を撫でられ、顔に口付けが降ってくる。
「好きだよ、玲」
神崎は何度も囁きながら、レイに触れる。レイは神崎の首に腕を回し、甘えるように口付けをねだる。
「健。私も、好きだよ」
一生、の約束はできない。永遠なんて尚更だ。
――でも、明日も好きだと信じられるから。
「多分、私は……貴方を好きでい続けられると思う」
それがどのくらい先までかは分からないけど、と微笑むと、神崎が破顔する。
「お前が寿命で死ぬ間際に、一生好きだったって言わせてみせるよ」
無理やり終わらせるつもりはないと神崎がほのめかせば、レイも嬉しそうに笑った。
「うん。ずっと、貴方を愛していたいな」
どんなに後ろ向きな事を言っても、神崎はそれを受け止め、包み込んでしまう。だからこそ、レイは思ったことを話してしまうし、神崎のことも知りたいと思う。
「嫌なことも言ってしまうと思うけど……、これからもよろしくね?」
レイが言えば、神崎も同じように返した。お互いにふっと笑い、素肌を重ねる。
「玲。愛させて」
もう待てないとペニスをレイの太腿に擦り付けると、レイも腰を擦り付ける。
「健。愛してる」
唇を重ね、身体を重ね。
夜は穏やかに更けていった。
「こんなこと言ったら、怒られそうだし、傷付けるかもしれないけど」
それでも信じきれないレイは、神崎の目をじっと見つめる。
首を傾げる仕草で先を促されたレイは、まっすぐに神崎を見た。
「私を棄てたくなったら……貴方の手で、終わらせて」
目を見開く神崎に、すまない、と心で謝りながら。
「そうしたら私は……健を愛したままで、貴方に愛されたままで終われるから」
一生、が信じられないからこそ、関係が終わる時に、生を終えたい。そう訴えるレイに、神崎がガシガシと頭をかき、ふっと苦笑を浮かべた。
「分かった。その代わり……お前も、俺を棄てる時は、その手で俺を殺せよ?」
虚をつかれたレイの髪を、神崎が撫でる。ふっと表情を弛め、そっと抱き寄せる。
「お前を殺めるときは、俺も一緒に逝ってやる」
頭頂部に口付けを繰り返し、背を抱きながら。
「知っているか?俺はもう……玲が居なければ、生きていられないんだ」
脱衣所で冷えた身体を、湯船で温める。暮らし始めたその日に、終わらせ方を約束することになるとは、と、神崎が腕に抱いたレイの顔を盗み見る。神崎は、それを怒る気にはなれなかった。幼い頃にはもうヤヒロの元に居たレイが、それだけ精神的にも傷付いてきたということだろう。
ぱしゃり、と湯を揺らしながら、レイが居心地悪そうにもぞもぞしている。その様子がどこか稚く、多少なりとも、先程の話題を悔いていることが伝わった。
「玲」
呼びかけるとびくっと肩を震わせるのがおかしくて、神崎は少し悪戯を思いつく。
「お前は、今だけ考えれていればいい。ただ俺に愛されていればいい」
でも、と首を振るレイに、神崎がくっと笑う。
「好きだよ、玲。お前の身も心も、愛して、愛して、甘やかして……、ぐずぐずに溶けたお前を犯して、壊してしまいたい」
レイがはっと顔を上げる。それは、初めての日に告げられた言葉にそっくりだったから。
神崎はふっと笑い、戸惑うレイに口付ける。
「愛しているよ。……抱いていいか?玲」
神崎はレイを寝室に連れていく。そこはキングサイズのベッドとクローゼット、サイドテーブルがある程度の、落ち着いた部屋だった。
「安心したか?」
一般的な寝室にぽかんとしたレイの頬が、みるみる赤くなる。
「そういうわけじゃ、ない、けど」
神崎はくくっと笑いながら、レイの肩からガウンを落とす。明かりを付けたままの部屋に晒される裸体に見蕩れていると、レイも神崎のガウンを脱がせる。
「薬のない玲を抱くのは、初めてだな」
するりと頬を撫でると、掌にレイが擦り寄る。
「貴方は健?それとも、ケン……?」
ぽつりと呟いた名前に、神崎がふっと笑う。
「今は、健として玲を抱きたい」
レイを引き寄せると、素直に身を預けてくる。そのまま耳元に口をやり、口付ける。
「レイの部屋では、ケンとしてレイを犯す」
吹き込まれる声に、レイのペニスが反応した。
「玲もレイも、愛しているよ」
その言葉にレイの顔が綻ぶ。
「私も。健もケンも、愛させて欲しい」
明かりを消さず、互いの存在を確かめるように向かい合う。
「なんだか、凄く……恥ずかしい」
媚薬も酒も飲まず。レイは、完全に素面のままで誰かと触れ合うのは、初めての事だった。
――いつもはもっと……、酔ったような状態でいたから。
「健。……上手くできなかったら、ごめんね」
緊張で、心臓が飛び出そうなほどだと笑えば、神崎も苦笑を浮かべた。
「ああ。俺も……緊張してる」
抱き締めれば、互いの鼓動の速さがばれる。それでも、愛しい人を目の前に、触れずには居られない。
「触れても、いいか?」
そう言って、神崎が手をそっと動かせば、レイはその手を取って頬を寄せる。
――いつもより少し、冷たくて気持ちいい。
ちゅ、と掌の窪みに口付けると、神崎がぴくりと跳ねる。レイがその手を軽く引くと、神崎は逆らわずにレイに一歩近付いた。
「触って。私も、健に触れたい」
もう少し来て、と引っ張る。顔を上げ、目を閉じたレイの唇に、神崎が誘われるように口付けた。そのまま、互いの形をなぞるように手を這わせた。
薄く目を開けると、細められた神崎の目と合う。ふ、と視線が緩み、口付けが深くなる。ちゅ、くちゅ、と音を立てながら抱き合う二人の、ペニスがずくりと疼き始めた。
「玲。お前を、愛させてくれ」
口付けの合間に囁かれ、レイは頷いて広い背に腕を回す。そのまま横抱きに抱き上げられたレイは、ベッドに優しく降ろされた。
「好きだ」
覆い被さる神崎の腕が、レイの横に置かれる。そのまま包むように頭を撫でられ、顔に口付けが降ってくる。
「好きだよ、玲」
神崎は何度も囁きながら、レイに触れる。レイは神崎の首に腕を回し、甘えるように口付けをねだる。
「健。私も、好きだよ」
一生、の約束はできない。永遠なんて尚更だ。
――でも、明日も好きだと信じられるから。
「多分、私は……貴方を好きでい続けられると思う」
それがどのくらい先までかは分からないけど、と微笑むと、神崎が破顔する。
「お前が寿命で死ぬ間際に、一生好きだったって言わせてみせるよ」
無理やり終わらせるつもりはないと神崎がほのめかせば、レイも嬉しそうに笑った。
「うん。ずっと、貴方を愛していたいな」
どんなに後ろ向きな事を言っても、神崎はそれを受け止め、包み込んでしまう。だからこそ、レイは思ったことを話してしまうし、神崎のことも知りたいと思う。
「嫌なことも言ってしまうと思うけど……、これからもよろしくね?」
レイが言えば、神崎も同じように返した。お互いにふっと笑い、素肌を重ねる。
「玲。愛させて」
もう待てないとペニスをレイの太腿に擦り付けると、レイも腰を擦り付ける。
「健。愛してる」
唇を重ね、身体を重ね。
夜は穏やかに更けていった。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
いつかコントローラーを投げ出して
せんぷう
BL
オメガバース。世界で男女以外に、アルファ・ベータ・オメガと性別が枝分かれした世界で新たにもう一つの性が発見された。
世界的にはレアなオメガ、アルファ以上の神に選別されたと言われる特異種。
バランサー。
アルファ、ベータ、オメガになるかを自らの意思で選択でき、バランサーの状態ならどのようなフェロモンですら影響を受けない、むしろ自身のフェロモンにより周囲を調伏できる最強の性別。
これは、バランサーであることを隠した少年の少し不運で不思議な出会いの物語。
裏社会のトップにして最強のアルファ攻め
×
最強種バランサーであることをそれとなく隠して生活する兄弟想いな受け
※オメガバース特殊設定、追加性別有り
.
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
両性具有な祝福者と魔王の息子~壊れた二人~
琴葉悠
BL
俺の名前はニュクス。
少しばかり人と違う、男と女のを持っている。
両性具有って昔の言葉があるがそれだ。
そして今は「魔の子」と呼ばれている。
おかげで色んな連中に追われていたんだが、最近追われず、隠れ家のような住居で家族と暮らしていたんだが――……
俺の元に厄介な事が舞い込んできた「魔王の息子の花嫁」になれってな!!
ふざけんじゃねぇよ!! 俺は男でも女でもねぇし、恋愛対象どっちでもねーんだよ!!
え?
じゃなきゃ自分達が殺される?
知るか!! とっとと滅べ!!
そう対処していたのに――やってきたんだ、魔王が。
これは俺達が壊れていく過程の物語――
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(要らない悪役令嬢1巻重版)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位
アマービレ・ブリオーソ・アモローソ amabile,brioso,amoroso.
椎葉ユズル
BL
ストリートミュージシャンである成瀬智弥は、ある日酔っ払いのサラリーマン、羽根田光希を拾った――。
お互いが幸せになるために、一歩前へ。
11/15 完結しました!ありがとうございましたm(_ _)m
ペイン・リリーフ
こすもす
BL
事故の影響で記憶障害になってしまった琴(こと)は、内科医の相澤に紹介された、精神科医の篠口(しのぐち)と生活を共にすることになる。
優しく甘やかしてくれる篠口に惹かれていく琴だが、彼とは、記憶を失う前にも会っていたのではないかと疑いを抱く。
記憶が戻らなくても、このまま篠口と一緒にいられたらいいと願う琴だが……。
★7:30と18:30に更新予定です(*´艸`*)
★素敵な表紙は らテて様✧︎*。
☆過去に書いた自作のキャラクターと、苗字や名前が被っていたことに気付きました……全く別の作品ですのでご了承ください!
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる