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27 レイの日常 2
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それとはまた別の日。神崎は、慌ただしい日々を送りながらも、レイの望み通りにバーに足繁く通っている。ヤヒロに裏に招かれ、舞台を見ることもある。そこに現れたのがどんなに魅力的な男女でも、神崎の心が揺らぐことはなかった。
「会いたいな……」
奥のテーブル席でグラスを傾けながら、ぽつりと呟く。それは店内に流れる静かな音楽にかき消されるくらいに、小さな呟きだった。
誰に誘われても、神崎の心を占めるのはただ一人。金髪碧眼の、美しい男性だけだ。
「……どなたにですか?」
カタンと僅かな音を立てて置かれた酒肴と、笑みを含んだ穏やかな声。神崎がはっとして顔を上げると、思い焦がれたその人が、トレイを持って立っていた。
――裏でのことは言えないけれど。
「好きな人と、なかなか会えなくて。……俺、年甲斐もなく、その人に溺れてしまったんですよ」
ふっと切なげに微笑む神崎に、レイの心がつきりと痛む。
――私では、ないんだろう。
神崎がここに来るのは、自分との約束を果たしているだけだと思っているレイが、気付かれないように息を吐く。
「それはそれは……。こちらにいらしていて良いのですか?」
――ここに来る時間を、その人に使ってあげて。
神崎はそんなレイに微笑みながら頷く。
「どんなに好きだと言っても伝わらないみたいで。……どうすればいいと思いますか?」
触れることもできない場所で、ただの店員と客の会話だけで。首を傾げるレイを、神崎が目に仄かな熱を灯して見つめる。
「いっそ攫ってしまいたいほどに、好きなんですけどね。その人が頷いてくれるかどうか」
あくまで雑談の軽さで告げた言葉に、レイが目を見開く。神崎がふっと視線を緩め、レイの制服姿をさっと見る。
「店員さん、格好良いですね。よくお似合いです」
甘く微笑まれ、レイの頬に淡く朱がはしる。消え入りそうな声で礼を言うレイに、神崎が目を眇めた。
まるで、制服に隠されたものを見透かすように。
「好きだよ」
誰にも聞こえないくらい小さく、神崎が囁く。一瞬だけ嬉しそうに笑んだレイは、慌てて表情を取り繕った。
「……ごゆっくりどうぞ」
頭を下げ、神崎の席を去る。その後ろ姿を、神崎はずっと見つめていた。
――っもう、あの人は……。
カウンターから盗み見る神崎は、ゆったりと酒を楽しむ、落ち着いた大人の男性だ。綺麗に磨いた靴を履き、スーツを着こなして。整えられた指先が、するりとグラスを撫でる。水滴のついた指先を口元にやり、レイを見つめた。
そのまま、ぺろり、と、赤い舌でそれを舐める。
――っっ!
神崎に抱かれた身体が疼く。くす、と笑った神崎は、酒を楽しむただの客の顔で、レイが運んだ酒肴を口にした。
レイがカウンターの裏で息を吐く。
――あの人は、もう……っ。
神崎のちょっとした悪戯に、素直に反応する身体。壁際で目を閉じ、息を吐くレイの元に、ヤヒロが歩み寄って肩をぽんと叩いた。
「お疲れ様っす。……ね、付けてて良かったっしょ?」
ニヤニヤしながら顔をのぞき込まれ、レイは深いため息を吐く。
「私で遊ばないでくださいよ……誰も、彼も」
軽口に軽口を返すレイを、周りのスタッフが意外そうに見ている。
――以前のレイは、取り付く島もなかったっすからねぇ。
ヤヒロが密かに微苦笑を浮かべ、今日の舞台の客を選びに行く。その背を見送りながら、レイはスラックスに隠された格好を思い出していた。
それは今日の昼間のこと。今日はバーに出るようにと制服を持ってきたヤヒロが、その上に置かれた小さな箱を示しながら、レイのペニスを指さした。
「裏ならともかく、表でペニス勃たせてちゃまずいんで、コレちゃんと付けとくっすよー」
そう言われたレイが嫌な予感を覚えつつ受け取り、まとめて脱衣所に置いた。
神崎と初めて身体を重ねたあとも、何度か神崎を客としてここに招き入れた。その記憶がレイの身体に染み付いてしまい、ただ部屋で過ごすだけなのに、身体が疼いて仕方がない。
――私は淡白なほうだと思っていたのだけどな……。
それまではしたことの無い自慰のやり方も、面白がった神崎に教えられた。口にピストンバイブを咥え、喉奥を犯されながら後孔にディルドを差し込む。そのまま騎乗位の時のように、腰を振って床に貼り付けたディルドを受け入れる。それを、自らのペニスを扱く神崎の目の前でしてみせるのだ。
「先にイったら何でも言うことを聞く」という条件で。
「だめ、だ……っ」
思い出すと、ペニスが張り詰める。今の格好は、神崎に抱かれる時と同じく全裸だ。そうして、熱を帯びた身体を見た神崎は言うのだ。「自分でして見せて」、と。
レイは結局、神崎の教えた通りの自慰をした。体液でどろどろになった身体と道具を清め、時計を見る。
――そろそろ時間か。
ヤヒロに渡されたものを確認して、レイが固まる。
それは、尿道を塞ぐ管が付いていないだけで、普段舞台で付けているものと同じ形の貞操帯だった。
――こんなもの付けながら、仕事するなんて。
神崎の悪戯で、レイのペニスは貞操帯に締めあげられるほどになっている。もし貞操帯がなければ、ヤヒロの心配した通りの事態になっていただろう。
それで良かったと言っていいか悩みつつ、レイは仕事に戻って行った。
「会いたいな……」
奥のテーブル席でグラスを傾けながら、ぽつりと呟く。それは店内に流れる静かな音楽にかき消されるくらいに、小さな呟きだった。
誰に誘われても、神崎の心を占めるのはただ一人。金髪碧眼の、美しい男性だけだ。
「……どなたにですか?」
カタンと僅かな音を立てて置かれた酒肴と、笑みを含んだ穏やかな声。神崎がはっとして顔を上げると、思い焦がれたその人が、トレイを持って立っていた。
――裏でのことは言えないけれど。
「好きな人と、なかなか会えなくて。……俺、年甲斐もなく、その人に溺れてしまったんですよ」
ふっと切なげに微笑む神崎に、レイの心がつきりと痛む。
――私では、ないんだろう。
神崎がここに来るのは、自分との約束を果たしているだけだと思っているレイが、気付かれないように息を吐く。
「それはそれは……。こちらにいらしていて良いのですか?」
――ここに来る時間を、その人に使ってあげて。
神崎はそんなレイに微笑みながら頷く。
「どんなに好きだと言っても伝わらないみたいで。……どうすればいいと思いますか?」
触れることもできない場所で、ただの店員と客の会話だけで。首を傾げるレイを、神崎が目に仄かな熱を灯して見つめる。
「いっそ攫ってしまいたいほどに、好きなんですけどね。その人が頷いてくれるかどうか」
あくまで雑談の軽さで告げた言葉に、レイが目を見開く。神崎がふっと視線を緩め、レイの制服姿をさっと見る。
「店員さん、格好良いですね。よくお似合いです」
甘く微笑まれ、レイの頬に淡く朱がはしる。消え入りそうな声で礼を言うレイに、神崎が目を眇めた。
まるで、制服に隠されたものを見透かすように。
「好きだよ」
誰にも聞こえないくらい小さく、神崎が囁く。一瞬だけ嬉しそうに笑んだレイは、慌てて表情を取り繕った。
「……ごゆっくりどうぞ」
頭を下げ、神崎の席を去る。その後ろ姿を、神崎はずっと見つめていた。
――っもう、あの人は……。
カウンターから盗み見る神崎は、ゆったりと酒を楽しむ、落ち着いた大人の男性だ。綺麗に磨いた靴を履き、スーツを着こなして。整えられた指先が、するりとグラスを撫でる。水滴のついた指先を口元にやり、レイを見つめた。
そのまま、ぺろり、と、赤い舌でそれを舐める。
――っっ!
神崎に抱かれた身体が疼く。くす、と笑った神崎は、酒を楽しむただの客の顔で、レイが運んだ酒肴を口にした。
レイがカウンターの裏で息を吐く。
――あの人は、もう……っ。
神崎のちょっとした悪戯に、素直に反応する身体。壁際で目を閉じ、息を吐くレイの元に、ヤヒロが歩み寄って肩をぽんと叩いた。
「お疲れ様っす。……ね、付けてて良かったっしょ?」
ニヤニヤしながら顔をのぞき込まれ、レイは深いため息を吐く。
「私で遊ばないでくださいよ……誰も、彼も」
軽口に軽口を返すレイを、周りのスタッフが意外そうに見ている。
――以前のレイは、取り付く島もなかったっすからねぇ。
ヤヒロが密かに微苦笑を浮かべ、今日の舞台の客を選びに行く。その背を見送りながら、レイはスラックスに隠された格好を思い出していた。
それは今日の昼間のこと。今日はバーに出るようにと制服を持ってきたヤヒロが、その上に置かれた小さな箱を示しながら、レイのペニスを指さした。
「裏ならともかく、表でペニス勃たせてちゃまずいんで、コレちゃんと付けとくっすよー」
そう言われたレイが嫌な予感を覚えつつ受け取り、まとめて脱衣所に置いた。
神崎と初めて身体を重ねたあとも、何度か神崎を客としてここに招き入れた。その記憶がレイの身体に染み付いてしまい、ただ部屋で過ごすだけなのに、身体が疼いて仕方がない。
――私は淡白なほうだと思っていたのだけどな……。
それまではしたことの無い自慰のやり方も、面白がった神崎に教えられた。口にピストンバイブを咥え、喉奥を犯されながら後孔にディルドを差し込む。そのまま騎乗位の時のように、腰を振って床に貼り付けたディルドを受け入れる。それを、自らのペニスを扱く神崎の目の前でしてみせるのだ。
「先にイったら何でも言うことを聞く」という条件で。
「だめ、だ……っ」
思い出すと、ペニスが張り詰める。今の格好は、神崎に抱かれる時と同じく全裸だ。そうして、熱を帯びた身体を見た神崎は言うのだ。「自分でして見せて」、と。
レイは結局、神崎の教えた通りの自慰をした。体液でどろどろになった身体と道具を清め、時計を見る。
――そろそろ時間か。
ヤヒロに渡されたものを確認して、レイが固まる。
それは、尿道を塞ぐ管が付いていないだけで、普段舞台で付けているものと同じ形の貞操帯だった。
――こんなもの付けながら、仕事するなんて。
神崎の悪戯で、レイのペニスは貞操帯に締めあげられるほどになっている。もし貞操帯がなければ、ヤヒロの心配した通りの事態になっていただろう。
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