囚われの踊り手は闇に舞う

徒然

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「私の望みは……、ケン、貴方が私を、欲のまま抱くことだよ」
 そう言ってレイは、神崎の目をじっと見つめた。真意を探るような神崎の深い瞳が、仄かな揺らぎを宿すと、レイが艶やかに微笑んだ。
 神崎は冷静に、レイの瞳に浮かぶものを見定める。言い回しも態度も、本当にそれを望んでいるように見えるのに、違和感が拭えない。
 ――何か、違う気がする。もし俺まで手酷く抱いてしまえばきっと……、こうして会話したことさえ、台無しになりそうな。
 それは直感だったが、確信でもあった。望みを口にした声は酷く平らだったから。
 神崎がレイの頬を撫でると、どこかの王子と言われても頷けるほど整ったレイの顔立ちが、淫らに歪む。
「ケン。お願いだ。もっと私に、触れて」
 レイは話をすることで混乱が落ち着いたのか、媚薬の熱がいよいよ耐えられなくなり始めた。媚薬は身体中を火照らせ、神崎の僅かな体臭にさえ息が乱れる。
「レイ。……わかった。話してくれてありがとう」
 神崎は、腕に納まったままのレイを抱きしめる。細身ではあっても、熱く硬い、男性の身体だ。それでもなお、神崎の身体はレイが欲しいとばかりに昂っていく。
「俺は、普通のセックスしかしたことがないんだ」
 神崎がぽつりとレイに告げる。
「男を抱くのも初めてだ。だから……どうすればいいか、どうされたいか、教えてくれ」
 レイの頬をすり、と撫でると、レイが頬を寄せて掌で包む。
「口付けていいか?」
 神崎の声が低く響く。レイの唇を指先で撫で、口を開かせる。小さく頷き目を伏せるレイを見据えたまま、神崎は口内に舌を差し込み、歯列を撫でて唇を塞いだ。
 ちゅく、ちゅくと舌が絡む。レイが身動ぎする度に鎖の重い音が響く。日常が非日常に呑まれていく。

「俺を見ろ、レイ。今からお前を抱く男は、俺だ」
 神崎の言葉にレイが視線を上げる。ギラつく光に射抜かれ、背筋に快感が走った。
「ケン……、嬉しい」
 神崎はふっと笑うと、首筋を撫でる。
 ――激しいセックスはしたことはないが……、レイが乱れるのは見たいのかも知れない。
 この綺麗な顔が、苦痛で歪むのを。涙ながらに許しを乞うのを。そして。
 気持ちいいと、淫らに微笑むのを。
「痕をつけるのは、まずいか」
 神崎の痕跡を少しでも残したいと、そう思うのは何故だろう。唇がまだ触れ合ったままの距離で問えば、少し考えたレイがおもむろに腰布を除ける。拘束されたペニスの、無毛の根元を晒した。
「付けるならここがいい。そうしたら……これを付けるたびに、思い出せるから」
 無骨な貞操帯の中で、レイのペニスが張り詰めている。神崎は竿に触れてそこを撫でると、レイが顔を顰める。
「分かった。ここだな……ああ、先にこれを外してやらないとな」
 神崎の声に、レイの心が震える。崩れそうになる身体を抱きとめられ、髪に口付けが降ってくる。

「じゃあ……外すぞ」
 さらりと髪を撫で梳かれ、神崎と向かい合わせに座り直す。腰布を上げ、痛みに耐えながらペニスを持ち上げる。神崎がレイのペニスを凝視するのを感じ、レイが荒い息を吐いた。
「見えにくいな。……倒すぞ」
 神崎は、レイの肩をそっと押す。レイは逆らうことなく後ろ手に肘を付き、身体を支えながら膝を立てた。そうして差し出されたレイの身体を、神崎が撫でて褒める。
 ――これは、なかなか。
 無防備に身体を晒す、美しい男性。薄い衣装に浮かぶ乳首やペニス、その奥に見える後孔に埋められた何か。
 神崎は生唾を飲み込み、レイの膝に手をかけて更に開かせる。そのまま身体側に押し付けられ、レイの腰が浮いた。
 そこにクッションを敷き、腰の位置を固定すると、レイの顔を見ながら腰の布をゆっくり除けた。
「っ、ケン……」
 羞恥に染まるレイの表情。神崎はふっと笑い、貞操帯に縛られたペニスを見る。
 銀色の輪が包むそこは、色白な肌より少し赤みを帯びている。先端は更に色が濃く、つるりとしていた。
「触るぞ」
 神崎がペニスに触れ、ゆっくりと動かす。レイの竿には神崎の左手が添えられ、裏筋に隠れていた南京錠が神崎の目に留まる。
「あった」
 呟いた神崎の息が、ペニスの先にかかる。
「ケン……っ、ぁ……」
 不意に、レイは振動を感じた。かちゃり、いう音と共に、僅かな重みから解放される。股の間から、首を傾げながら貞操帯を弄る神崎が見え、レイの吐息が乱れる。
「レイ、これ、自分で外せるか?俺がしたら傷つけそうだ」
 レイは頷き、ベッドに背を付けて根元の輪を開いていく。開放感に身体が震えて、戒めの解かれたペニスがむくむくと育っていく。しかし、まだ精液は吐き出せない。
「ケン、見ないで……」
 恥ずかしげに頬を染めるレイを見つめたまま、神崎は剥き出しになった竿を労わるように撫でる。ずくりと熱を帯び、硬く長くなるペニス。
「だめだ。全部見せろ」
 低く掠れた声で甘く強く命じられたレイは、両手を身体の横に置き、自ら抵抗を封じるようにシーツを握りしめた。

「これは、そのまま引き抜けば良いのか?」
 レイの手をするりと撫でて問えば、レイは小さく頷いた。
「外すときは、少し、離れてて欲しい」
 神崎は首を傾げ、ぴくぴくと震えるペニスに手を添える。
「何故?」
 レイは埋まるものの先端をつつかれ、悲鳴のように喘ぐ。ぎゅ、と力を込めた手でシーツを掴んでいては、顔も隠せばしない。
 耐えるような、恥じるような表情から目が離せないでいると、レイが潤んだ目で神崎を見た。
「堰き止めていた精液が……、外す時に、出てしまうんだ」
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