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5 幕の裏で 2
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レイの指先に力が篭もる。神崎が息を詰めると、ハッとしたように手を離した。その手を掴み、神崎はレイの顔を覗き込む。
「綺麗、だな」
思わず呟いた。レイの白皙の頬に赤みが差し、碧い瞳が潤んで。神崎は淡く開いたその唇を、塞いでしまいたいと思った。
――あれほど俺に、抱けと言っていたのに。
今更たじろぐレイが可笑しくて、それなのにどうしようもなく可愛く思えて、神崎は掴んだ手の指先に口付けを落とす。
「……っ?!」
零れそうなほど目を見開くレイに微笑みかけ、ヤヒロに向き直った。
「部屋を借りることはできますか?」
神崎がヤヒロに問えば、ヤヒロは「もちろんです」と答える。レイはその言葉が嬉しくて、神崎の胸に擦り寄り首筋に口付けを落とした。
「ありがとうございます、ご主人様。私の部屋へ、案内致します」
甘い声。首筋にレイの吐息が掛かる。再び触れる唇の感触に、神崎が短く息を吐いた。
レイがちらりとヤヒロを見ると、ヤヒロは仕方ないとばかりに肩を竦めて頷いた。
「このペットはまだ躾が完璧にはできておりませんので。きちんと御奉仕する為の仕込みをしていますので」
――仕込み……?
訝しげな神崎に曖昧に微笑み、ヤヒロが一歩下がる。こうして話をしている間にも、レイの身体は媚薬で高められ、とうとう衣擦れにまで息を乱すまでになった。
首筋に感じる熱く荒い呼吸に、ふと、神崎がレイを見下ろす。薄衣から透ける胸の先端がはっきりと分かるくらいに赤く染まり、ぷくりと存在を主張し始めている。
「ご主人様……早く」
レイの切れ長の目元が、頬が、上気して艶を増す。レイが腕を動かすと、背中を鎖が這い、撫で上げる。その刺激でまた、レイは甘く啼いた。その声に、神崎の背をゾクゾクと何かが走った。
「それでは俺はこれで。ペットは、明日明後日とも休みを与えております。心ゆくまでお楽しみくださいませ」
言外でレイにしっかり抱かれてこいと伝えてヤヒロが立ち去ると、レイも体勢を整えて神崎に手を差し伸べる。
「お立ちください。ご案内致します」
細く綺麗な手に、神崎の手が重ねられる。離れてしまった熱に物足りなさを感じながら、ゆっくり立ち上がったレイ。それに釣られるように、神崎も立ち上がった。背を向けるレイの臀部を隠す腰布がひらめいた。
「俺はケン。レイと呼んでもいいですか?」
不意に掛けられた声に、レイが身体ごと振り返って艶やかに笑う。
「勿論でございます。では私はケン様、と」
「いえ、俺もただのケンでいいし、敬語も別に要りません」
簡単な偽名を使った神崎が被せ気味に告げると、レイは困ったように眉を下げる。戸惑いの表情に、神崎はふっと笑う。
「俺も、敬語は外そう。レイの素がそれならそのままでいいが」
そ、とレイの長い髪がひと房掬われる。神崎はレイの目を見つめたまま、それに口付けた。
「一夜限りとはいえ、恋人だと思ってお前を抱く。だから、飾った態度は要らない」
上目遣いになった神崎が、真っ直ぐにレイを見る。唇はまだ柔らかな髪に触れたまま。
レイが、これまでされたことの無い扱いに戸惑い、言葉を失っていると、神崎はふっと表情を緩めて髪を離した。
「……まあ、男は初めてだから、上手くできるか分からないが。よろしく頼む」
呆然と神崎を見つめるレイに苦笑を浮かべ、神崎は白皙の頬をするりと撫でる。
「口付けても?」
顔を寄せながら、神崎が低く問う。レイは頷いて口を薄く開き、目を伏せる。
「ケン、様。お部屋では貴方様の望む通りに致します」
唇が触れ合う直前、レイが吐息に乗せて細く呟くと、神崎が口角を上げた。
何度か軽く啄まれ、縋るように神崎の首筋に両手を回す。神崎はレイの後頭部に手を添え、腰を抱いて逃げられないよう閉じ込める。
淫靡な水音が、閉ざされた舞台に響いた。荒い息遣いと微かな衣擦れの音。勃起を封じられたレイのペニスは、ずっとぎりぎりと痛んでいる。
「っぁ……、ん、はぁ……っ」
甘く上擦るレイの声に、神崎はぞくりと背筋が痺れた。とろりと溶ける潤んだ青い瞳と、神崎の焦げ茶の瞳が交わる。
「行こう。今すぐ抱きたい。案内してくれ」
頷くレイの足元がふらつくと、神崎は咄嗟に腕を取って腕を肩に回させる。
「格好がつかないな……。抱いて運べたらいいんだが。悪い」
気遣う神崎に微笑んで首を振り、小さくお礼を告げた。
――もう少しだけ、しっかりしないと。
震える脚を無理やり運ぶ。軽い布はさわさわと、普段なら気にもならない程度の刺激を送る。思わず漏れる甘い息。さわさわと布に撫でられる乳首が、布を押し上げて硬く凝る。
「舞台袖の横に、エレベーターに繋がる扉があります。私の部屋は二階突き当たりにありますので、そちらへ」
エレベーターホールに着き、エレベーターに乗り込んだ後。レイは不意に、神崎に引かれる。
「あ……っ」
背中が温かいものに触れる。腕がレイに絡みつき、臍の辺りで指を組んで閉じ込めた。
「ケン、様……っ」
神崎の腕に捉えられたレイは、腰に硬く熱いものを感じて、甘く神崎を呼んだ。
「綺麗、だな」
思わず呟いた。レイの白皙の頬に赤みが差し、碧い瞳が潤んで。神崎は淡く開いたその唇を、塞いでしまいたいと思った。
――あれほど俺に、抱けと言っていたのに。
今更たじろぐレイが可笑しくて、それなのにどうしようもなく可愛く思えて、神崎は掴んだ手の指先に口付けを落とす。
「……っ?!」
零れそうなほど目を見開くレイに微笑みかけ、ヤヒロに向き直った。
「部屋を借りることはできますか?」
神崎がヤヒロに問えば、ヤヒロは「もちろんです」と答える。レイはその言葉が嬉しくて、神崎の胸に擦り寄り首筋に口付けを落とした。
「ありがとうございます、ご主人様。私の部屋へ、案内致します」
甘い声。首筋にレイの吐息が掛かる。再び触れる唇の感触に、神崎が短く息を吐いた。
レイがちらりとヤヒロを見ると、ヤヒロは仕方ないとばかりに肩を竦めて頷いた。
「このペットはまだ躾が完璧にはできておりませんので。きちんと御奉仕する為の仕込みをしていますので」
――仕込み……?
訝しげな神崎に曖昧に微笑み、ヤヒロが一歩下がる。こうして話をしている間にも、レイの身体は媚薬で高められ、とうとう衣擦れにまで息を乱すまでになった。
首筋に感じる熱く荒い呼吸に、ふと、神崎がレイを見下ろす。薄衣から透ける胸の先端がはっきりと分かるくらいに赤く染まり、ぷくりと存在を主張し始めている。
「ご主人様……早く」
レイの切れ長の目元が、頬が、上気して艶を増す。レイが腕を動かすと、背中を鎖が這い、撫で上げる。その刺激でまた、レイは甘く啼いた。その声に、神崎の背をゾクゾクと何かが走った。
「それでは俺はこれで。ペットは、明日明後日とも休みを与えております。心ゆくまでお楽しみくださいませ」
言外でレイにしっかり抱かれてこいと伝えてヤヒロが立ち去ると、レイも体勢を整えて神崎に手を差し伸べる。
「お立ちください。ご案内致します」
細く綺麗な手に、神崎の手が重ねられる。離れてしまった熱に物足りなさを感じながら、ゆっくり立ち上がったレイ。それに釣られるように、神崎も立ち上がった。背を向けるレイの臀部を隠す腰布がひらめいた。
「俺はケン。レイと呼んでもいいですか?」
不意に掛けられた声に、レイが身体ごと振り返って艶やかに笑う。
「勿論でございます。では私はケン様、と」
「いえ、俺もただのケンでいいし、敬語も別に要りません」
簡単な偽名を使った神崎が被せ気味に告げると、レイは困ったように眉を下げる。戸惑いの表情に、神崎はふっと笑う。
「俺も、敬語は外そう。レイの素がそれならそのままでいいが」
そ、とレイの長い髪がひと房掬われる。神崎はレイの目を見つめたまま、それに口付けた。
「一夜限りとはいえ、恋人だと思ってお前を抱く。だから、飾った態度は要らない」
上目遣いになった神崎が、真っ直ぐにレイを見る。唇はまだ柔らかな髪に触れたまま。
レイが、これまでされたことの無い扱いに戸惑い、言葉を失っていると、神崎はふっと表情を緩めて髪を離した。
「……まあ、男は初めてだから、上手くできるか分からないが。よろしく頼む」
呆然と神崎を見つめるレイに苦笑を浮かべ、神崎は白皙の頬をするりと撫でる。
「口付けても?」
顔を寄せながら、神崎が低く問う。レイは頷いて口を薄く開き、目を伏せる。
「ケン、様。お部屋では貴方様の望む通りに致します」
唇が触れ合う直前、レイが吐息に乗せて細く呟くと、神崎が口角を上げた。
何度か軽く啄まれ、縋るように神崎の首筋に両手を回す。神崎はレイの後頭部に手を添え、腰を抱いて逃げられないよう閉じ込める。
淫靡な水音が、閉ざされた舞台に響いた。荒い息遣いと微かな衣擦れの音。勃起を封じられたレイのペニスは、ずっとぎりぎりと痛んでいる。
「っぁ……、ん、はぁ……っ」
甘く上擦るレイの声に、神崎はぞくりと背筋が痺れた。とろりと溶ける潤んだ青い瞳と、神崎の焦げ茶の瞳が交わる。
「行こう。今すぐ抱きたい。案内してくれ」
頷くレイの足元がふらつくと、神崎は咄嗟に腕を取って腕を肩に回させる。
「格好がつかないな……。抱いて運べたらいいんだが。悪い」
気遣う神崎に微笑んで首を振り、小さくお礼を告げた。
――もう少しだけ、しっかりしないと。
震える脚を無理やり運ぶ。軽い布はさわさわと、普段なら気にもならない程度の刺激を送る。思わず漏れる甘い息。さわさわと布に撫でられる乳首が、布を押し上げて硬く凝る。
「舞台袖の横に、エレベーターに繋がる扉があります。私の部屋は二階突き当たりにありますので、そちらへ」
エレベーターホールに着き、エレベーターに乗り込んだ後。レイは不意に、神崎に引かれる。
「あ……っ」
背中が温かいものに触れる。腕がレイに絡みつき、臍の辺りで指を組んで閉じ込めた。
「ケン、様……っ」
神崎の腕に捉えられたレイは、腰に硬く熱いものを感じて、甘く神崎を呼んだ。
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