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3 踊り
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「本日はペットが何やら興奮しているようです。彼の強い希望により、特別構成の舞をご覧いただくことになりました」
ヤヒロがレイに頷き、レイも同じ動作を返す。レイが膝をつき、腰に鞘ごと刀を構えて目を閉じる。
一瞬の静寂。
銅鑼の音とともに目を開き、前を睨み据えたまま居合抜きをする。流れるように正眼に構え、シンバルと同時に切り裂く。荒々しさすら感じる勇壮な音楽。じゃらじゃらと手足の鎖を鳴らしながら、緩く括った長い髪を靡かせながら、レイは舞う。強く踏み込み、跳ねるように回転し、振り向きざまに刀が旋回する。空を斬る音が鋭く響き、身軽に宙を舞う。まるでそこに、敵でもいるかのように。
――綺麗、だ。
神崎は思わずため息を吐く。
――もしも軍神というものがこの世に顕現したなら……、この姿を取るのではないか。
こんな淫らな衣装なのに、なんと清廉なことだろう。雄々しく、凛々しく、猛々しいのに優雅。静と動。剛と柔。そんな言葉が、神崎の頭に浮かんでは消えていく。
身体の軸を狂わせることなく、隙なく身体を動かすレイ。照明に照らされて、光の軌跡を描き続ける刀身。激しい動きに釣られて宙を舞う鎖まで、計算されたようにアクセントになる。
そして、不意に流れてくる、熱を帯びた視線。
「……っ」
どくり、ぞくり。
神崎の身体に熱が篭もる。無意識にレイの呼吸を真似、呼吸のために薄く開いた唇に魅せられる。
――これは、やばいな。
目が離せない。刀身が閃くたび、まるで心臓を掴まれたように息苦しくなる。
跳ね、踏み込み、回転し。休むことなく続けられる激しい動きに、薄衣が汗で貼り付く。細く引き締まった肢体が、ライトに照らされて艶めかしく光る。柔い生地に擦られ続けて凝った乳首に。戒められたペニスにも布が張り付き、形も色も、戒められるさままでもが顕になってしまった。
それでもレイは一心不乱に舞う。襲い来る快楽に乱されることなく、刀を掲げ、袈裟に下ろす。鋭く短く息を吐き、片手で振り抜き回転する。息を詰めて逆手に構えて逆袈裟に振ると、鎖が跳ね上げられて体勢が崩れた。
「危ない……っ!!」
咄嗟に叫んだ神崎に、レイは一瞬微笑んで見せる。じゃら、と降りかかる鎖を躱し、そのまま倒れ込むように回転する。そのまま片手で身体を起こし、蹴りを放つように脚を開いて体勢を整える。
――っ。
光を反射した、刀では無い何か。その場所はこんな、公衆の面前で晒すべき場所ではない。
動揺する神崎をそのままに、レイは目の前に敵が居るかのように刀を薙ぐ。ひゅ、と間近で鳴った音に、神崎が惚けた刹那。
片膝をついたレイが、いつの間に手にしたのか、鞘にすっと納刀した。
「私を、見ていて」
その刀に口付け、それを神崎に預けて微笑んだレイは、舌で唇を湿らせて、今度は軽やかに舞い始める。
音楽はアップテンポなものに変わっている。素肌に貼り付く、透ける衣装。剥き出しの肌を撫で上げ、湿った生地を艶めかしくまさぐりながら唇を舐める。半ば開いた口から舌先を出し、ペニスを舐めるように動かしながら、視線を神崎に流す。
「……っ!」
思わず喘ぎそうになった神崎に微笑み、レイは腰布に指を掛け、ぐいっと引き下ろす。
「は、ぁ……」
甘い吐息を零すレイの、ペニスの根元ギリギリまでが晒される。無毛のそこは滑らかで、貞操帯の一部が見え隠れした。神崎の視線がそこに注がれると、レイは腰をくねらせながら指先で身体を撫で上げ、頭を逸らして首筋を晒す。首輪に隠された喉仏を撫でるように、首輪越しにそこに指を添わせた。
――貴方が求めてくれるなら、私は急所だろうと喜んで差し出すのに。
人として扱われ、気遣われた幸いに応えるために。ヤヒロに仕込まれた手練手管全て使って、一晩中尽くしたいのだと、レイは神崎を見つめる。それは、レイが客に対して初めて抱いた感情だった。
先程までの清廉な雰囲気から一転、舞台はレイが演じる淫靡な空気に支配された。神崎に限らず、観客たちは息を飲んでレイの動きを見つめている。
――求めて欲しい。私を。……私が、貴方を求めるように。
きりりとレイのペニスに痛みが走る。は、と息を吐き、痛みを逃がしたレイは、神崎に背を向けて脚を開いた。神崎の目の前で、その視線を痛いほど感じながら、薄衣がまとわりつく臀たぶを両手で開いて見せた。
――ここに、貴方の精が欲しい……。
「何、が……」
それが何か分からないまま、神崎のペニスが張り詰める。後孔があるはずの場所に煌めく、宝石のような何か。それが埋まるほど広げられた場所。
神崎が息を飲んだのを確認したレイは、ふっと笑って片手を付き、軽やかに前転して見せた。下がっているだけの腰布はめくれ、戒められたペニスを見せつけるように脚を前後に開いて。
キラリ、と二つの道具か光る。思わず握りしめた神崎の手の中で、鍵束がじゃらりと鳴る。
レイがそのまま宙返りをして正面に片膝を付く姿勢で止まった瞬間、鳴り響いていた音楽も終わった。
レイの荒い息遣い。激しく上下に動く背中。姿勢のせいで、隠すものの無くなったペニス。レイは神崎を見据えるように視線を絡ませ、そこに欲を感じてふっと緩めた。
淫靡な空気がぱっと散る。美しい男性の、花が開くような笑顔に、拍手と歓声が響き渡った。
ヤヒロがレイに頷き、レイも同じ動作を返す。レイが膝をつき、腰に鞘ごと刀を構えて目を閉じる。
一瞬の静寂。
銅鑼の音とともに目を開き、前を睨み据えたまま居合抜きをする。流れるように正眼に構え、シンバルと同時に切り裂く。荒々しさすら感じる勇壮な音楽。じゃらじゃらと手足の鎖を鳴らしながら、緩く括った長い髪を靡かせながら、レイは舞う。強く踏み込み、跳ねるように回転し、振り向きざまに刀が旋回する。空を斬る音が鋭く響き、身軽に宙を舞う。まるでそこに、敵でもいるかのように。
――綺麗、だ。
神崎は思わずため息を吐く。
――もしも軍神というものがこの世に顕現したなら……、この姿を取るのではないか。
こんな淫らな衣装なのに、なんと清廉なことだろう。雄々しく、凛々しく、猛々しいのに優雅。静と動。剛と柔。そんな言葉が、神崎の頭に浮かんでは消えていく。
身体の軸を狂わせることなく、隙なく身体を動かすレイ。照明に照らされて、光の軌跡を描き続ける刀身。激しい動きに釣られて宙を舞う鎖まで、計算されたようにアクセントになる。
そして、不意に流れてくる、熱を帯びた視線。
「……っ」
どくり、ぞくり。
神崎の身体に熱が篭もる。無意識にレイの呼吸を真似、呼吸のために薄く開いた唇に魅せられる。
――これは、やばいな。
目が離せない。刀身が閃くたび、まるで心臓を掴まれたように息苦しくなる。
跳ね、踏み込み、回転し。休むことなく続けられる激しい動きに、薄衣が汗で貼り付く。細く引き締まった肢体が、ライトに照らされて艶めかしく光る。柔い生地に擦られ続けて凝った乳首に。戒められたペニスにも布が張り付き、形も色も、戒められるさままでもが顕になってしまった。
それでもレイは一心不乱に舞う。襲い来る快楽に乱されることなく、刀を掲げ、袈裟に下ろす。鋭く短く息を吐き、片手で振り抜き回転する。息を詰めて逆手に構えて逆袈裟に振ると、鎖が跳ね上げられて体勢が崩れた。
「危ない……っ!!」
咄嗟に叫んだ神崎に、レイは一瞬微笑んで見せる。じゃら、と降りかかる鎖を躱し、そのまま倒れ込むように回転する。そのまま片手で身体を起こし、蹴りを放つように脚を開いて体勢を整える。
――っ。
光を反射した、刀では無い何か。その場所はこんな、公衆の面前で晒すべき場所ではない。
動揺する神崎をそのままに、レイは目の前に敵が居るかのように刀を薙ぐ。ひゅ、と間近で鳴った音に、神崎が惚けた刹那。
片膝をついたレイが、いつの間に手にしたのか、鞘にすっと納刀した。
「私を、見ていて」
その刀に口付け、それを神崎に預けて微笑んだレイは、舌で唇を湿らせて、今度は軽やかに舞い始める。
音楽はアップテンポなものに変わっている。素肌に貼り付く、透ける衣装。剥き出しの肌を撫で上げ、湿った生地を艶めかしくまさぐりながら唇を舐める。半ば開いた口から舌先を出し、ペニスを舐めるように動かしながら、視線を神崎に流す。
「……っ!」
思わず喘ぎそうになった神崎に微笑み、レイは腰布に指を掛け、ぐいっと引き下ろす。
「は、ぁ……」
甘い吐息を零すレイの、ペニスの根元ギリギリまでが晒される。無毛のそこは滑らかで、貞操帯の一部が見え隠れした。神崎の視線がそこに注がれると、レイは腰をくねらせながら指先で身体を撫で上げ、頭を逸らして首筋を晒す。首輪に隠された喉仏を撫でるように、首輪越しにそこに指を添わせた。
――貴方が求めてくれるなら、私は急所だろうと喜んで差し出すのに。
人として扱われ、気遣われた幸いに応えるために。ヤヒロに仕込まれた手練手管全て使って、一晩中尽くしたいのだと、レイは神崎を見つめる。それは、レイが客に対して初めて抱いた感情だった。
先程までの清廉な雰囲気から一転、舞台はレイが演じる淫靡な空気に支配された。神崎に限らず、観客たちは息を飲んでレイの動きを見つめている。
――求めて欲しい。私を。……私が、貴方を求めるように。
きりりとレイのペニスに痛みが走る。は、と息を吐き、痛みを逃がしたレイは、神崎に背を向けて脚を開いた。神崎の目の前で、その視線を痛いほど感じながら、薄衣がまとわりつく臀たぶを両手で開いて見せた。
――ここに、貴方の精が欲しい……。
「何、が……」
それが何か分からないまま、神崎のペニスが張り詰める。後孔があるはずの場所に煌めく、宝石のような何か。それが埋まるほど広げられた場所。
神崎が息を飲んだのを確認したレイは、ふっと笑って片手を付き、軽やかに前転して見せた。下がっているだけの腰布はめくれ、戒められたペニスを見せつけるように脚を前後に開いて。
キラリ、と二つの道具か光る。思わず握りしめた神崎の手の中で、鍵束がじゃらりと鳴る。
レイがそのまま宙返りをして正面に片膝を付く姿勢で止まった瞬間、鳴り響いていた音楽も終わった。
レイの荒い息遣い。激しく上下に動く背中。姿勢のせいで、隠すものの無くなったペニス。レイは神崎を見据えるように視線を絡ませ、そこに欲を感じてふっと緩めた。
淫靡な空気がぱっと散る。美しい男性の、花が開くような笑顔に、拍手と歓声が響き渡った。
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