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第二節 オリュンポス
第199話 Behavior of understanding person
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「神界」に住まう、有数の力ある者達は、その力の波動を感じ取っていた。然しながら、その力の持ち主に興味を持たず終ぞ知る事は無いか、若しくは持ち主を探す為、配下達に調査をさせると言う二択になっていく事になる。
力を解放し、半神半魔の姿になった少女は一条の光となって塔の壁面を最上階に向けて疾走っていった。あとに残るのは白と黒の余韻であり、それは最上階に向けて虹色の光が昇っていく様子にも見えた。
第三者がその光景を見る事が出来たなら「そんな表現しか出来無い」としか言えなかっただろう。
それ程までに不可思議なモノトーンの光と虹色の光の共演だった。
しゅたっ
「ここが最上階であってるわよね?」
「ってかもう既に地球を通り超えて完全な宇宙空間ね」
塔の壁面を疾走り抜けた少女は、最上階の壁面を通り過ぎ更にその上から壁を飛び越える形で最上階へと侵入したのだった。
少女の眼下には深い蒼と透き通る白、そして広大な緑のコントラストが広がっていた。
少女の足元には白いタイル張りの床が広がっている。そしてその空間に天井は無かった。
宙を見上げるとそこには無数のきらびやかで色とりどりの光の競演が確認出来た。
「まるで星空の天井ね?」
「いえ違うか…、天井が星空なのね。ロマンチックな景色は1人身には辛いけど、例え恋人がいてもここに連れて来れる自信なんでないわね。はぁ」
少女が降り立った場所から見渡せる範囲に誰かがいる気配は無い。だから、少女は最上階を歩いて曾祖父を探す事にしたのだった。
ちなみに、バイザーの反応も一切無かった。
歩いてみると最上階は意外と広い空間だった。
まぁ、四方を囲まれているワケではないので空間と言う表現が適切でないコトは重々承知の上だが、星空を天井とするならばその表現でもいいだろう。だから少女が途方もなく歩いていると「加護」はなにやら説明をしてくれた。
“大地の側にある下層と最上階で面積が違うのは、空間が歪んでいて虚理の理に基づき多次元が融合しているからかも知れない”
「うん、ちょっと何言ってるかワカラナイ。まぁ、いいや、兎に角ここのどっかしらにアタシの曽祖父がいるのだけは間違いないんでしょ?」
“…………”
「加護」から得られる「知恵」も理解が及ばない事に関してはサッパリなのかもしれない。だがそんなコトをいちいち気にしている少女ではないので、サッパリ分からないコトをバッサリ切り捨てるとアテもなく彷徨う事にした様子だった。
『よく来たな、拙生の系譜に連なる者よ』
「ッ!?頭に直接声が響いて来る……」
「どこッ!どこにいるの?」
その声は突然少女の脳裏に過っていく。そして、少女はその声に畏怖を禁じ得なかった。
少女は脳裏に響く異質な「声」に対して会話する手段を持っていない。そんな脳裏に直接響く「声」と会話する能力なんて持っていないので当然の事だ。
だから自身の声を響かせていくしか方法はない。しかし大気のない宇宙空間でそんな事が出来るかは余談なのでおいておく。
『やれやれ、拙生が姿を繕わねば拙生の姿を見る事は叶わぬか』
「っ!?」
「これならばマテリアル体が主体のそなたでも視認出来るか?」
「っ!??!アストラル体が一瞬で受肉したとでも言うの?」
そこにいたのは、白く長い髪を1つに束ね、顔には白く長い髭を蓄えた1人の男性だった。その肌は浅黒く、その瞳は深い藍色で深いシワがいくつも奔っている。
人間の齢で言えば「初老」という条件が当てはまりそうだが、少女はタケミカヅチが話していた事を思い出していた。
「神族は会いたい姿で会う」と、それならば、この形容も本当の姿かどうかは分からない。
「貴方がアタシの「曾祖父」で、あっているのかしら?」
「ヒト種が拙生を前に豪胆な事よ。並の神族ではひれ伏して顔を背けるというのにな……」
そんなコトを言われても少女の中から先程までの畏怖は消えてはいない。しかし姿形をわざわざ繕ってもらった以上、畏怖に拠る震えは失礼だろうと考え、少女は虚勢を張り言の葉を紡いでいた。
「拙生の名はウラノスである。ウラノス・アステリ・ベルガモンじゃ。覚えておくが良い。そしてそなたの母親は我が「孫」なれば、そなたは拙生の「曾孫」だな。だからこそ言うなれば、そなたから見た拙生は「曾祖父」であろうな」
「だからあっておるわい。にかっ」 / ぱちっ
ウラノスは少女に対して言の葉を紡ぐと、歯を見せて笑い、片目を瞑りウインクをして魅せた。
魅せられた少女はそのウラノスの一連の動作に拠って、一気に「畏怖」が消えていった。
更には、親近感すら覚えるようになったのだった。
「ほう!ヘラから言われてここまでやって来たのか?」
「ヒト種の身でよくぞここまで来られたモノじゃ。それは純粋に感心してしまうな。がぁっはっはっ」
ウラノスは少女を連れて最上階にあるポータルから、自分の屋敷代わりの惑星へと転移し、そこで少女とテーブルを挟んで椅子に座り話しをしている。
周りは見渡す限りの草原であり、そこにテーブルが1卓、椅子が2脚だけ置いてある。吹き抜けていく風は心地よく、少女の髪は風を浴びて揺れていた。
ただしそこは、ヒト種が生存出来る環境かは分からないから、念の為半神半魔は解いていない。
でもまぁ、スケール感が意味不明なのは、気にしてはならない。
「母様が囚われている「星屑の塔」に入る為に、曾祖父様の承認が必要だと言われてしまったの」
「ヘラのヤツめ。厄介事を押し付けおって」
「厄介事?」
「おぉ、そうじゃ。厄介事じゃよ。拙生はバカ息子に敗れ、この「天空の塔」に幽閉されておる身じゃ。そなたの母親が幽閉されておる「星屑の塔」へ入る為の「承認」と言われても一緒には行けんしなぁ」
「厄介じゃろ?」
「承認は本人を連れていかないとダメなのかしら?」
「うぅむ、それはなんとも言えんのぅ」
ウラノスは困った様子で言の葉を紡ぎ、その顔は本当に悩んでいる様子だった。
しかし一頻り悩むと、何かを閃いた様子を醸し出していた。
「それじゃあ、これを、そなたに渡しておくとしようか?」
「これは?石にしか見えないけど…?」
少女はその「石」を受け取ると親指と人差し指の指先で「ちょんっ」と挟んで持ちながら、空に向けて翳している。本当に見た感じ変哲もない、ただの石にしか見えなかった。
「それは宇宙の一欠片じゃ。拙生の「概念」は、「宇宙」そのものじゃからな。それを、そなたに与えたと言う事は拙生からの「承認」になる……と思いたいのじゃが。ごにょごにょ」
「宇宙が概念って壮大だわ。曽祖父様は凄いのね」
ウラノスは自信たっぷりで切り出していたが、最後の方は尻窄みな感じがした少女だった。
だから一応、上げておく事にした。
「まぁ、駄目だったら駄目で、またここに来るといい。どうせ拙生は暇じゃしな。それに、偶に顔を見せてくれるだけでも有り難いし、色々な話しを聞かせて貰えると更に有り難い。じゃから、是非にまた来てくれ!にかっ」 / ぱちっ
「うんッ!必ず来るわッ!」
ウラノスは少女に対して笑顔とウインクを贈った。その笑顔は好々爺の顔そのものであり、少女も屈託の無い笑顔を返していった。
暫くの間、少女はウラノスとあれこれ色々な話で盛り上がっていたのだが、楽しい時間はやはり早く過ぎていくものだ。少女は時間を気にした様子で、「そろそろ帰らないと」と切り出していた。
ウラノスは少しだけ寂しそうな顔をしていた。だから少女は「この場所は覚えたから、アタシの転移が使えれば直ぐにでも来れるわ」と返していた。
ウラノスは少女の言の葉に気を良くしたらしく、「それではコレを差し上げよう」と言いながらガントレットを少女に渡したのだった。
「これは?アテナさんの装備と同じ鉱石で出来てるの?」
「それは黒宙石の原石から作ったガントレットじゃ。アダマンティスとか、アダマンタイトと言った伝わり方が人間界だと多いかもしれんな。多少重たいが、マナやオドを使った「虚理」の現象から持ち主を護る物だ」
「えっ!?これが神鉱石よりも硬くて完全魔術防御の力を持つと言われてる黒宙石なの?!」
「おう、その通りじゃ!まぁ、魔術だけに効果があるワケではないぞ?「虚理」の現象そのものを打ち消すからのぅ。「能力」や「概念」も打ち消せるハズじゃ。まぁ、多少重たいのが難点じゃがな」
「これから、バカ息子と助平オヤジの所に行くのであろう?持っていても損は無いじゃろうて」
「その代わりと言っちゃなんじゃが……」
ウラノスは優しく咲っていた。
黒宙石のガントレットを受け取った少女はひたすらウラノスにお礼を言い、ウラノスが出した「代わり」を了承すると、転移のサークルを出現させてウラノスの惑星から「神界」へと戻って行った。
「また、元気な顔を見せに来ておくれ……」
少女はアテナの神殿の部屋に魔術陣を出現させると、転移を完了させた。然しながら泡を喰ったのは、急遽自身の神殿内に魔術反応が現れたアテナだった。
アテナは直ぐさま武装を整えると、魔術反応があった部屋に声を上げながら勇んで乗り込んでいった。
「何者かッ!?」
「えっ?!アテナさん、どうしたの?」 / 「んっ?!何も…のではないな。なんだその格好は?」
アテナは三叉の槍を少女に向けていた。そしてその先にいるのは半神半魔の姿をした少女だ。
2人の声は同時にぶつかり合い、2人は目を合わせお互いがお互いにオロオロとしており、挙動不審だった。
少女は先ず、変身を解いていく。アテナは先ず、臨戦態勢を解いていった。
少女はアテナを驚かせてしまった事を謝り、アテナは槍を向けてしまった事を詫びていた。
その後で少女は自身の「力」の事をアテナに話し、少女の「力」の事を理解したのだった。その上で、自分が何者なのか、何故こんな力を持っているのかをアテナに対して話したのだ。
アテナは真摯にその言の葉を受け止めると、「そう言う事であれば、問題は無い」と返していた。
「ところでちゃんと帰って来れたという事は、ウラノス様から承認を頂けたのだな?」
「た、たぶ……ん?」
「多分?」
アテナの顔には「?」が浮かんでいた。まぁ、それは煮え切らない表現だったから仕方のないコトだろう。
だから少女は、ウラノスに言われた事をアテナにありのまま伝えたのだった。
「あぁ、なるほどそう言う事かッ!確かに、「承認を得ろ」と言われても当のウラノス様にとっては寝耳に水な話だろう」
「無理もないコトだ。それにウラノス様から「承認する」と言われたところで意味はないからな」
アテナのその表情には「やれやれ」と書いてあったかもしれない。まぁ実際、少女はアテナが溜め息の1つでも吐きたい様子なのは感覚的に分かっていた。
「そして、受け取ったのが、「一欠片の宇宙」…か。だが、まぁ、それで問題は無いハズだッ!」
「そうなの?良かったぁ。ほっ」
「今日はもう遅いから、この部屋で今まで通り休むと良い。次の場所に行くなら明日以降だな」
「うん、そうするわ、ありがとう」
「それではウチはそろそろ失礼する。再度結界は張っておくから安心して眠るといい。だが、くれぐれも……」
「自分から扉は開けないわ!」
「そうだ!それでいい!それではな」
「おやすみなさい、アテナさん」
アテナは笑顔で部屋を出ていった。アテナが部屋を出て行った後で少女はベッドに入ろうか悩んでいた。
あまり眠くなかったからだ。そうこうしている内にアテナの使いの者が夕食を運んで来てくれた。少女は眠くなかった事もあって夕食を食べる事にした。夕食はパンと牛乳の他に、温かいスープも加わっていた。味は薄味だったが、身体がほっこり温まり眠気が呼び起こされた様子だった。
少女はベッドに入ると、今日の出来事を思い返しながら微睡みに堕ちていった。
「あっ、そう言えば、お風呂ってあるのかなぁ?」
力を解放し、半神半魔の姿になった少女は一条の光となって塔の壁面を最上階に向けて疾走っていった。あとに残るのは白と黒の余韻であり、それは最上階に向けて虹色の光が昇っていく様子にも見えた。
第三者がその光景を見る事が出来たなら「そんな表現しか出来無い」としか言えなかっただろう。
それ程までに不可思議なモノトーンの光と虹色の光の共演だった。
しゅたっ
「ここが最上階であってるわよね?」
「ってかもう既に地球を通り超えて完全な宇宙空間ね」
塔の壁面を疾走り抜けた少女は、最上階の壁面を通り過ぎ更にその上から壁を飛び越える形で最上階へと侵入したのだった。
少女の眼下には深い蒼と透き通る白、そして広大な緑のコントラストが広がっていた。
少女の足元には白いタイル張りの床が広がっている。そしてその空間に天井は無かった。
宙を見上げるとそこには無数のきらびやかで色とりどりの光の競演が確認出来た。
「まるで星空の天井ね?」
「いえ違うか…、天井が星空なのね。ロマンチックな景色は1人身には辛いけど、例え恋人がいてもここに連れて来れる自信なんでないわね。はぁ」
少女が降り立った場所から見渡せる範囲に誰かがいる気配は無い。だから、少女は最上階を歩いて曾祖父を探す事にしたのだった。
ちなみに、バイザーの反応も一切無かった。
歩いてみると最上階は意外と広い空間だった。
まぁ、四方を囲まれているワケではないので空間と言う表現が適切でないコトは重々承知の上だが、星空を天井とするならばその表現でもいいだろう。だから少女が途方もなく歩いていると「加護」はなにやら説明をしてくれた。
“大地の側にある下層と最上階で面積が違うのは、空間が歪んでいて虚理の理に基づき多次元が融合しているからかも知れない”
「うん、ちょっと何言ってるかワカラナイ。まぁ、いいや、兎に角ここのどっかしらにアタシの曽祖父がいるのだけは間違いないんでしょ?」
“…………”
「加護」から得られる「知恵」も理解が及ばない事に関してはサッパリなのかもしれない。だがそんなコトをいちいち気にしている少女ではないので、サッパリ分からないコトをバッサリ切り捨てるとアテもなく彷徨う事にした様子だった。
『よく来たな、拙生の系譜に連なる者よ』
「ッ!?頭に直接声が響いて来る……」
「どこッ!どこにいるの?」
その声は突然少女の脳裏に過っていく。そして、少女はその声に畏怖を禁じ得なかった。
少女は脳裏に響く異質な「声」に対して会話する手段を持っていない。そんな脳裏に直接響く「声」と会話する能力なんて持っていないので当然の事だ。
だから自身の声を響かせていくしか方法はない。しかし大気のない宇宙空間でそんな事が出来るかは余談なのでおいておく。
『やれやれ、拙生が姿を繕わねば拙生の姿を見る事は叶わぬか』
「っ!?」
「これならばマテリアル体が主体のそなたでも視認出来るか?」
「っ!??!アストラル体が一瞬で受肉したとでも言うの?」
そこにいたのは、白く長い髪を1つに束ね、顔には白く長い髭を蓄えた1人の男性だった。その肌は浅黒く、その瞳は深い藍色で深いシワがいくつも奔っている。
人間の齢で言えば「初老」という条件が当てはまりそうだが、少女はタケミカヅチが話していた事を思い出していた。
「神族は会いたい姿で会う」と、それならば、この形容も本当の姿かどうかは分からない。
「貴方がアタシの「曾祖父」で、あっているのかしら?」
「ヒト種が拙生を前に豪胆な事よ。並の神族ではひれ伏して顔を背けるというのにな……」
そんなコトを言われても少女の中から先程までの畏怖は消えてはいない。しかし姿形をわざわざ繕ってもらった以上、畏怖に拠る震えは失礼だろうと考え、少女は虚勢を張り言の葉を紡いでいた。
「拙生の名はウラノスである。ウラノス・アステリ・ベルガモンじゃ。覚えておくが良い。そしてそなたの母親は我が「孫」なれば、そなたは拙生の「曾孫」だな。だからこそ言うなれば、そなたから見た拙生は「曾祖父」であろうな」
「だからあっておるわい。にかっ」 / ぱちっ
ウラノスは少女に対して言の葉を紡ぐと、歯を見せて笑い、片目を瞑りウインクをして魅せた。
魅せられた少女はそのウラノスの一連の動作に拠って、一気に「畏怖」が消えていった。
更には、親近感すら覚えるようになったのだった。
「ほう!ヘラから言われてここまでやって来たのか?」
「ヒト種の身でよくぞここまで来られたモノじゃ。それは純粋に感心してしまうな。がぁっはっはっ」
ウラノスは少女を連れて最上階にあるポータルから、自分の屋敷代わりの惑星へと転移し、そこで少女とテーブルを挟んで椅子に座り話しをしている。
周りは見渡す限りの草原であり、そこにテーブルが1卓、椅子が2脚だけ置いてある。吹き抜けていく風は心地よく、少女の髪は風を浴びて揺れていた。
ただしそこは、ヒト種が生存出来る環境かは分からないから、念の為半神半魔は解いていない。
でもまぁ、スケール感が意味不明なのは、気にしてはならない。
「母様が囚われている「星屑の塔」に入る為に、曾祖父様の承認が必要だと言われてしまったの」
「ヘラのヤツめ。厄介事を押し付けおって」
「厄介事?」
「おぉ、そうじゃ。厄介事じゃよ。拙生はバカ息子に敗れ、この「天空の塔」に幽閉されておる身じゃ。そなたの母親が幽閉されておる「星屑の塔」へ入る為の「承認」と言われても一緒には行けんしなぁ」
「厄介じゃろ?」
「承認は本人を連れていかないとダメなのかしら?」
「うぅむ、それはなんとも言えんのぅ」
ウラノスは困った様子で言の葉を紡ぎ、その顔は本当に悩んでいる様子だった。
しかし一頻り悩むと、何かを閃いた様子を醸し出していた。
「それじゃあ、これを、そなたに渡しておくとしようか?」
「これは?石にしか見えないけど…?」
少女はその「石」を受け取ると親指と人差し指の指先で「ちょんっ」と挟んで持ちながら、空に向けて翳している。本当に見た感じ変哲もない、ただの石にしか見えなかった。
「それは宇宙の一欠片じゃ。拙生の「概念」は、「宇宙」そのものじゃからな。それを、そなたに与えたと言う事は拙生からの「承認」になる……と思いたいのじゃが。ごにょごにょ」
「宇宙が概念って壮大だわ。曽祖父様は凄いのね」
ウラノスは自信たっぷりで切り出していたが、最後の方は尻窄みな感じがした少女だった。
だから一応、上げておく事にした。
「まぁ、駄目だったら駄目で、またここに来るといい。どうせ拙生は暇じゃしな。それに、偶に顔を見せてくれるだけでも有り難いし、色々な話しを聞かせて貰えると更に有り難い。じゃから、是非にまた来てくれ!にかっ」 / ぱちっ
「うんッ!必ず来るわッ!」
ウラノスは少女に対して笑顔とウインクを贈った。その笑顔は好々爺の顔そのものであり、少女も屈託の無い笑顔を返していった。
暫くの間、少女はウラノスとあれこれ色々な話で盛り上がっていたのだが、楽しい時間はやはり早く過ぎていくものだ。少女は時間を気にした様子で、「そろそろ帰らないと」と切り出していた。
ウラノスは少しだけ寂しそうな顔をしていた。だから少女は「この場所は覚えたから、アタシの転移が使えれば直ぐにでも来れるわ」と返していた。
ウラノスは少女の言の葉に気を良くしたらしく、「それではコレを差し上げよう」と言いながらガントレットを少女に渡したのだった。
「これは?アテナさんの装備と同じ鉱石で出来てるの?」
「それは黒宙石の原石から作ったガントレットじゃ。アダマンティスとか、アダマンタイトと言った伝わり方が人間界だと多いかもしれんな。多少重たいが、マナやオドを使った「虚理」の現象から持ち主を護る物だ」
「えっ!?これが神鉱石よりも硬くて完全魔術防御の力を持つと言われてる黒宙石なの?!」
「おう、その通りじゃ!まぁ、魔術だけに効果があるワケではないぞ?「虚理」の現象そのものを打ち消すからのぅ。「能力」や「概念」も打ち消せるハズじゃ。まぁ、多少重たいのが難点じゃがな」
「これから、バカ息子と助平オヤジの所に行くのであろう?持っていても損は無いじゃろうて」
「その代わりと言っちゃなんじゃが……」
ウラノスは優しく咲っていた。
黒宙石のガントレットを受け取った少女はひたすらウラノスにお礼を言い、ウラノスが出した「代わり」を了承すると、転移のサークルを出現させてウラノスの惑星から「神界」へと戻って行った。
「また、元気な顔を見せに来ておくれ……」
少女はアテナの神殿の部屋に魔術陣を出現させると、転移を完了させた。然しながら泡を喰ったのは、急遽自身の神殿内に魔術反応が現れたアテナだった。
アテナは直ぐさま武装を整えると、魔術反応があった部屋に声を上げながら勇んで乗り込んでいった。
「何者かッ!?」
「えっ?!アテナさん、どうしたの?」 / 「んっ?!何も…のではないな。なんだその格好は?」
アテナは三叉の槍を少女に向けていた。そしてその先にいるのは半神半魔の姿をした少女だ。
2人の声は同時にぶつかり合い、2人は目を合わせお互いがお互いにオロオロとしており、挙動不審だった。
少女は先ず、変身を解いていく。アテナは先ず、臨戦態勢を解いていった。
少女はアテナを驚かせてしまった事を謝り、アテナは槍を向けてしまった事を詫びていた。
その後で少女は自身の「力」の事をアテナに話し、少女の「力」の事を理解したのだった。その上で、自分が何者なのか、何故こんな力を持っているのかをアテナに対して話したのだ。
アテナは真摯にその言の葉を受け止めると、「そう言う事であれば、問題は無い」と返していた。
「ところでちゃんと帰って来れたという事は、ウラノス様から承認を頂けたのだな?」
「た、たぶ……ん?」
「多分?」
アテナの顔には「?」が浮かんでいた。まぁ、それは煮え切らない表現だったから仕方のないコトだろう。
だから少女は、ウラノスに言われた事をアテナにありのまま伝えたのだった。
「あぁ、なるほどそう言う事かッ!確かに、「承認を得ろ」と言われても当のウラノス様にとっては寝耳に水な話だろう」
「無理もないコトだ。それにウラノス様から「承認する」と言われたところで意味はないからな」
アテナのその表情には「やれやれ」と書いてあったかもしれない。まぁ実際、少女はアテナが溜め息の1つでも吐きたい様子なのは感覚的に分かっていた。
「そして、受け取ったのが、「一欠片の宇宙」…か。だが、まぁ、それで問題は無いハズだッ!」
「そうなの?良かったぁ。ほっ」
「今日はもう遅いから、この部屋で今まで通り休むと良い。次の場所に行くなら明日以降だな」
「うん、そうするわ、ありがとう」
「それではウチはそろそろ失礼する。再度結界は張っておくから安心して眠るといい。だが、くれぐれも……」
「自分から扉は開けないわ!」
「そうだ!それでいい!それではな」
「おやすみなさい、アテナさん」
アテナは笑顔で部屋を出ていった。アテナが部屋を出て行った後で少女はベッドに入ろうか悩んでいた。
あまり眠くなかったからだ。そうこうしている内にアテナの使いの者が夕食を運んで来てくれた。少女は眠くなかった事もあって夕食を食べる事にした。夕食はパンと牛乳の他に、温かいスープも加わっていた。味は薄味だったが、身体がほっこり温まり眠気が呼び起こされた様子だった。
少女はベッドに入ると、今日の出来事を思い返しながら微睡みに堕ちていった。
「あっ、そう言えば、お風呂ってあるのかなぁ?」
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