「残念だけど、諦めて?」

いちのにか

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呪いの再燃②

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「……ッ」
「こうすれば気が済むのか」

呆れ返った声音と、わずかに冷たい節くれだった指だった。
「どこを触ればいい?恥丘か?ずいぶんと下生えが薄いんだな…。それともこの周り、ええと大陰唇、といったか」
一つ一つ確認をするように口に出しながら、優しく触れるその仕草からは、男性特有の熱に浮かされた欲の一切が感じられない。それどころか気遣いに溢れ返っている。


 違う。この人は、兄とは違うのだ。

 不意に彼女は泣き出したくなった。唐突に彼の真意に気がついたこともある。彼は決して彼女を嫌っているわけではないのだ。関心のない家事と一緒で、単純に人の好意に対しても同じことなのだ。そんな彼は今もこうして、困惑しながらもなんとか彼女をあやそうと、彼女の希望を叶えようと、してくれている。

 そんな彼にほわりとした穏やかな感情を感じかけた彼女は、

「ひ、ぁっ」

 急な刺激に身体をヒクつかせた。

「大丈夫か?さっきまで、興奮は感じていないようだったから、どうしたことかと思ったが。……やはりクリトリスへの刺激は別格なのだな」

 まるで書物を読むような口調でそう言ってのけた彼。しかしその瞳の奥に浮かぶのはやはり彼女を気遣う光だ。

「もう触るのは、いいだろう?そろそろ降りてこんな事は辞めに」

 そろそろと視線を逸らした男も、彼女の雰囲気が柔らかくなったことに気付いたようだった。なんとかその場を穏便に済ませようと、硬い声で提案しているのがとても微笑ましい。

 本来であれば、彼女はそこで頷くべきだった。謝罪をして、机から降り、今まで通り、無駄口をたたかずに職務に戻り、程よい距離感で彼の生活をサポートし続けるべきだった。

「いや、です……」

 ぬちぃ♡

 しかし、彼女は、自らの腕を男の腕に絡ませてねだるように男の指にそこを押し付けていた。

「お願い……、もっと、……もう少しだけ触ってください」

 嫌われないために。
 目の前の男がそんな人間ではないと理解できていたのに。

 アンリセラは後付けの言い訳を自らの中で展開しながら、男に縋りついた。




 聞き分けのない娘の発言に、塔の主人セテンスはもう一度だけため息をついた。ひょこりと下がった眉の間に皺が寄る。その険しい表情に。アンリセラはまるで、みたいで。

「ここがいいのか?」
 にゅ、ち♡
「ぁ、あぁ♡」

 硬い声に思わず、腰が跳ねる。

「次は?こうやって指で摘まれるのもいい?」
「あ、は♡ いい、でしう♡」
「あとは?」


 ちゃんと答えなきゃ、嫌われちゃう。
 ちゃんと答えなきゃ、叱られ、ちゃ……♡

「っーー♡♡♡ 、セテンス様の、指の腹でごしごし、してほ、し、っぁあ、ぁーー♡♡♡」
「繊細なように見えて意外と強い刺激の方が好ましいんだな。ん?もう一度?」
「は、ひ、ぁぁあぁ♡♡♡」

 感じたこともない妖しい感覚。彼の視線や声音一つで容易く翻弄されるその感覚。それは決して、恐怖でも、ましてや不快感などでもなかった。








 黒衣をきゅうと握り締められ、セテンスは彼女の合図を確認する。果たして、それは気のせいではなかったようで、彼女はひゅくひゅくと腰を揺らし歓喜の表情を浮かべた。

「も、とぉ♡♡ たくさん、♡ してくだ、ぁ、さぁあ、♡」

 終わりが来るとするならば、絶頂というやつをやらねばならないのだろうな。中途半端なところで終わらせると余程辛くなることくらいは知っていた。あの猥本にはそのまま時間をおいて更に快感を増やすという事例も書かれていたが、今は必要のない知識である。


 そうと決まれば、彼女への刺激を増やさねば。先ほど学んだクリトリスへの刺激を思い返しつつ、彼は、今まで触れられていない別の場所に焦点を定めた。

「膣口に指を入れるのは嫌、か?」
「……っ♡ 経験は、ないですが、セテンス様なら、……イ、で、う♡」

 顔を真っ赤にして告げながらも、その腰は貪欲にもセテンスの指に押し付けられていた。

「自分からこすりつけるのも好きなんだな。私がやるのと、どちらが良いのだろうか」
「ひゃめ♡ ごめんなさ♡ 一人でこすこすやらないからぁ♡ セテンス様に、なでなでしてほし、でしぅ♡♡♡」

 無意識に動かしていたのか、涙を浮かべて謝罪をする彼女にセテンスは一つ頷いて見せる。経験がないというのはきっと本当だろう。固く閉じた膣口の周りをそうと揺指でほぐしていく。クリトリスへの与えた快楽のためか、流れ出てくる愛液を絡め取りながらきゅう、きゅうとマッサージしていく。違和感はありながらももどかしい快楽は感じているのか、アンリセラの悩ましい声が響き渡る。

「じゃあ、まずは一本」
「は、い、ぃ♡」

 にち、ち、と冷たい指が入り込んでくる感触にアンリセラも思わず息を止める。猛烈な違和感に、腹部への圧迫感。引き攣るような膣口のひりつきに「ぅ、」と唇を噛み締め必死に耐える。それを見てとったセテンスは指を止め反対の腕でアンリセラの背をそっと引き寄せる。

「リセ、力まない方が良い。少しずつ息を吐いて。足に入れた力を抜いてごらん。ほら息を吐いて。そう、ゆっくり、……上手だ」

 まるで子供に言い聞かせるような声音はやっぱりしわがれているが、しかしアンリセラは不思議なほどに安心した。だんだんと体の力が抜けていく。タイミングを見計らってセテンスがそっと声をかける。

「やっぱり少し狭いようだ。リセには酷かもしれないが」

 ここで一旦止めようって言われる?

 脳裏に浮かんだ最悪の予感にアンリセラは一瞬で青ざめる。しかし男が告げたのは全く違う一言だった。

「その……、舌で愛撫をしても構わないか?不快なら他の手段を考える」

 冷たい手と比較し舌であればまだ暖かく筋も緩みやすいだろうというのが彼の考えた結論だった。こんな時もブレない彼にアンリセラはそっと微笑んだ。

たった一つ不安があるとすれば、彼女のトラウマが舌での愛撫に起因するものだが、

「ぁ♡ あったかぁ♡ ひ、アぁあっ!にゅるにゅるだめぇ♡ クリトリス、あむあむってしちゃやぁ♡♡ あ、せつないの、きた、♡ これぇやら、らめぇ、あ、なんか変、セテンスさ、まぁ、ぞくぞくし、てっ♡、イ、ぁ♡ だめ、ぁぁあぁー♡♡♡」

 そんな心配は不要だった。セテンスが顔を埋めた瞬間、あっけなくアンリセラはイった。


 彼女を翻弄する波は、ひどく穏やかで温かく、そして慈愛に満ちていた。ヒククッと全身を痙攣させたのち、アンリセラはぐずりと頽れる。机から落ちそうになるのを受け止めたセテンスは、「心拍数が上がってる、これが外イキというやつか」とやっぱり見当違いなことを呟く。備え付けの寝台まで彼女を抱き抱えそっと下ろす。

「絶頂ははじめてなのか、」

 そう呟いたセテンスに未だ快楽の余韻に浸っていたアンリセラが言葉を返すほどの余裕はなかった。








「そうだ。大事なことをはっきりさせてなかった」

 不意に彼の声音が変わったのはそんな時だった。

 快楽の余韻をどうにかやり過ごそうとして、うっすらと意識を浮上させた彼女は、

にゅぢゅり♡

「ぁ♡ い、あ♡」

 再度翻弄させられる。

「さっき言ってたことだが、私はリセのことを嫌いではない。分かったか?」
「な、なに、なんで」

ぐぢ♡ にゅぢぃい♡

 先程外イキしたためか、アンリセラの膣口は柔らかく男の指を受け入れた。膣口をグネグネと押したのち、男は指を出し入れする。

「ぁ♡ ズボズボだめ、でひぅ♡」
「リセ、ちゃんと聞こえているか?私はリセのことを嫌いにならない。理解した?」
「した♡ 理解、しまひたぁ♡ だから、しょこ、じゅぽじゅぽ♡ ってしないれ、むずむずするの♡ あ、あァ♡ ま、またぁっ来、♡♡♡」

 嬌声を上げたアンリセラを見遣ったセテンスが膣と膀胱を隔てる薄い壁をカリリと引っ掻く。

「ひゅ、は♡♡♡ にぁ、めぇえぇぇえっ♡♡♡ーーーーっ♡♡♡!!!」

 ヒククッ♡ しよぁあぁ♡ぷししっ♡

その瞬間、アンリセラは何が起きたのかわからずに絶頂した。






「初めてのはずなのに、リセは潮も噴けるのか」

 まるでお漏らしのようにシーツに広がる液体を眺め、セテンスはそう独りごちた。つられて上体を持ち上げたアンリセラは呆然とした様子で固まる。ほろほろと泣き出したアンリセラにセテンスはなおも攻撃の手を緩めない。

 また訳のわからないことでこちらが責め立てられるのが嫌だったからである。

「私のベッドがリセのお漏らしでビシャビシャだ」
「ご、ごめんなさ……あ、ぁあ♡♡♡」

 青ざめ謝罪を始めるアンリセラにようやっと溜飲を下げたセテンスはとろけきったそこに再度指を突き立てる。アンリセラのそこは、指を三本に増やしても難なく飲み込めるほどになっていた。
「なんれっ♡ セテンスさまぁ♡♡ これ、ヤなのに、ふ、ぁぁあ♡」
「リセ、ダメだ。気持ち良くなってもお漏らしはしてくれるなよ?今度はきちんと自制するんだ」

無体なことを告げた男は、先ほどよりも大袈裟に指を掻き回しアンリセラが喜ぶそこをカリカリ♡とひっかく。

「ひゃら♡ ごめんなさいっ♡ ゆる、て♡ せてんしゅさまぁ♡♡ だめ、やらぁ♡ またキちゃう♡ また、強いのキちゃう♡ ごめなひゃ♡ いやなのにっ、おもらししちゃう、♡ あぁあ、♡♡ でちゃうっでちゃうっ……♡♡ イ、ぁっ♡ ごめんなさっあぁあぁ♡ ーーーーーっ♡♡♡!!」


呆気なくイったアンリセラはもはやぐしゃぐしゃだった。「う、ぐ……ひぐっ、ごめんなさい……ごめんなさいっ……」
涙やら涎やらでベチョベチョになった顔で懇願するように謝罪する彼女を彼は冷たい表情で見下す。

「あぁ、二回目か。約束を破ってしまったね」

 間をおかず、ぐ、と彼女に限界まで顔を近づけた彼は、繰り返し告げる。

「なぁリセ、君がこうして約束を破ったとしても。私が、君のことを嫌いになることは決して、ない」

「嫌われ、ない……?」

「そう、こうやって、恥ずかしい穴をほじくられて、はしたなく喘いで、私の大事な寝台に沢山お漏らししても、」

 ずちぅうぅ♡ にゅこ♡ にゅこっ♡ カリリっ♡

「イっ、!!!あぁあ♡ また、それぇえっ♡ らめ、やっ♡♡ カリカリ、しな、でっぁ♡♡ おもらし、やぁっ!セテンスさまぁぁあぁ♡」

「リセは嫌なことをしたら俺のことも嫌いになるってことだろ?」
「やぁ……っ、♡ ならないっ!なんで、そんなのっ」
「なぜって、君がそう話したんじゃあないか。嫌なことしたら、嫌われるって」
「ならないっ♡♡ セテンス様しゃあは、絶対ならないぃっ♡」
「じゃぁ、私もそれと同じだ。リセ、解ったか?ちゃんと覚えておくんだ」

「可愛らしい穴に太い指をたくさんじゅこっじゅこっ♡ て出し入れされて、おまけに、クリトリスをぢゅくぢゅく♡に擦り上げられて、子猫みたいににゃあにゃあ泣きながら沢山お漏らししてしまったとしても、」

今までの行為による刺激に加え、はしたない言葉を耳奥に吹き込まれる。まるで五感を支配されるかのような強すぎる刺激にアンリセラは嬌声を上げ泣き喚く。

「も、やぁ、♡♡♡ ゆるひて♡ まひゃ、おもらひ、ごめなしゃ♡♡♡ イっぁあぁあ♡♡♡♡」

ぷしっふしゃぁあぁぁ♡♡♡

今度こそ眼球を上転させ、深いオーガズムに入ったアンリセラにセテンスはトドメの一言を投げかけた。

「私は、絶対に、君のことを嫌いになどならない」


 真っ直ぐに向けられた視線と、力強い発言。そこには半端な誤魔化しなど一切存在しない。突き抜けるような快楽の中、途方もない安堵感に包まれたアンリセラは抗うことなく自らの意識を手放した。
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