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中でトントンってして、ビューってしても、赤ちゃんはできません!

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 二つの影が重なり、パチュパチュと何かがぶつかり合うような音が響いている。



「っ♡♡♡ ーーーーー♡」

 とろとろに蕩けた嬌声をあげて果てたのは、エルディリカ・ヘクセン、もといエルディリカ・コースレーである。





 ヘクセン伯爵家に生を受けた彼女は、社交場で温厚で物静かな淑女として知られている。ミルクティー色の腰まであるほわほわした髪も、ほてりとした薄桃色の唇も、薄紅色の少し大きめな垂れ目も。その全てが彼女の物腰の柔らかさを強調させ、包み込んでくれるような優しさを醸し出していた。綺麗、とか可愛い、とか。決して見目が悪いわけではない彼女は、そういう形容詞とは違い、どこか母性を感じさせた。華美であったり、愛らしい他の貴族令嬢とは異なった部類ではあるが、穏やかで包容力のある彼女に求婚する若者は後を絶たなかった。

 と、ここまでは外行きの彼女である。そんな彼女も今となっては途方もない快楽に蹂躙される哀れな娘でしかなかった。

 柔らかな癖を持つ髪は寝具の上で淫らに散り、ほてりとした唇は度重なる口付けにより赤く充血し、はふはふと必死に息を取り込んでいる。瞳はとろとろに潤み、淫靡な雰囲気を漂わせていた。

 実はこの娘、数ヶ月前から自身の従者であるアーリミタルと婚姻関係を結んでいる。しかし、驚くべきことに本人はその旨を全く知らされていなかった。そのため、今この時も彼女自身は自分が嫁入り前の娘だと信じ込んでいる、つまりはとても不憫な娘なのである。

 この娘の不憫度は留まることを知らない。

 数分前まで、クリトリスをこちょこちょされ、甘イキ地獄に堕とされていた彼女は、「ちょっと我慢できないから、一回抜かせて」と一言告げられたかと思うと腰をむんずと掴まれた。
 彼女が了承とか、拒否とかーあり得ないがーを口にする暇は与えられなかった。ごちゅぅ♡と、一息でその剛直を突き入れてみせた鬼畜な男は、待ち望んだ以上の強烈な快楽を与えられて絶頂し意識を飛ばしかけた彼女を、自慰具のようにめちゃくちゃに揺さぶって犯しつくしたのだった。

「へぁ♡……ごめな、しゃあ……♡ ゆ、ゆるし……ァ♡」

 ぬろろろ♡ ひちゅ♡
 ………ぷしっぴゅししっ♡

 男が欲望を抜き放つと同時に、潮が漏れ出る。
 その後に続くようにとろぉ♡と白濁液が漏れ出してくる。

 不安そうな顔をして、エルディリカは上がった息の中、やっと、という調子で男に尋ねた。

「ぁ、ぁ……、はぁ♡、まだ、トントン、だけ……♡ ちゅーしてないから、あかちゃ、は、へいき、らよ、ね……?」

 そしてなのである。もちろん彼女は素である。シラフである。本人は至極大真面目にこの確認をしている。

 不憫にも程がある。今時、性行為についてこれほどまでに頭の緩い令嬢にも問題はある。しかし、その令嬢以上に問題が大有りなのは、きちんとした性教育をしてこなかった周囲の人間や、現在彼女をトロトロに愛でているこの男なのである。

「そーね、ちんことまんこ、トントン♡ってして、ちんちんミルクびゅー♡ってかけただけ。ちゅーしてないから、赤ちゃんはできないよ。セーフセーフ」

 そんな嘘を真面目な口調で語る鬼畜男は、名をアーリミタル・コースレーという。着崩されたシャツからは引き締まった身体が見え隠れしている。漆黒のストレートヘアは、一分の隙なく括り上げられるのが常であるが、今は低い位置で緩く後ろにまとめられていた。ラベンダーアメジストを思わせる瞳と併せ、全体的に気だるげな雰囲気は、ゾッとするほどの色気を纏っている。彼の主人曰く『顔だけはいい』この男は、またの名をアルシミスタ・シーヴ・コースレーという。シーヴは王族の証、そしてコースレーは王弟閣下の姓である。

 何を隠そう、この男は王族であった。今は亡き第一王女の命と引き換えに生まれた彼は、平民である父親の血を厭われ、生まれた瞬間にその生を終わらせられかけた。
 すんでのところでそれを止めた王弟により、その命を救われ養子となった彼は、今や王国の裏機関の長として様々な情報を統制する仕事を行なっている。ゴシップや政治的な狙いを孕んだもの、もしくは嘘偽りない真実を平民や貴族に提供して、王国の安寧に貢献している。

 もちろん、王弟だってそんなキワモノの存在に、初めから国家を揺るがす可能性のある仕事を与えたわけではない。むしろ安心安全の幽閉コースも視野に入れていた。しかし、人誑しの才能があった彼は、孤児をはじめとした平民から、貴族の放蕩子息、または、高位貴族の未亡人など、いつの間にか思いもよらぬパイプを作っていた。王弟が気がついた時にはもう手遅れで、王国の至る所に目と鼻を持ち、粛々どころか王家をひっくり返しかねない手段を手にしていたという訳だ。
 そんな誰とでも仲良しこよしになれる彼が、決して王家を裏切らないことを誓約魔法で誓った代わりに欲したのが、なぜか、このエルディリカなのである。

 彼女の父親である伯爵に話を付けに参上したその日、青ざめたを前にした彼は非常に恐ろしい顔で微笑み、一言こう言った。

「彼女には性行為の類の一切を伝えないでください」

 そうは言っても、デビュタントを終えていたエルディリカには既に優秀な貴族夫人となるための教育が施され始めていた。
 慌てて伯爵が講師陣に夜の夫婦生活についてその一切をカリキュラムから抜いてほしい旨を伝えたが、『夜の行為=妊娠』、『子を産む=実家、義実家両家の繁栄』までの講義は残念ながら終えてしまっていた。唯一伯爵の救いであったのは、夜の夫婦生活のが、妊娠につながるのかまでは未講義であることだった。


 以降、エルディリカの教科書から性教育の項目は消え去ることになり、彼女の性行為に対しての知識はひどく中途半端で、曖昧なものとなったのだった。





 さて、冒頭に述べたエルディリカ不憫な点はそれだけではない。さらに以下の二点を追加すると、その同情点も格段に跳ね上がることと思う。

 まず、今現在の彼女は、自らのことをであると認識している。
 次に、エルディリカはこの淫らな行為について、あくまでのお勉強であると認識している。健気にも将来夫となる相手に気に入ってもらえるよう鋭意努力中なのである。

「貴族令嬢が、嫁入り前にそういう行為を実践しながらお勉強するのは常識なので、これからは男性の従者をつけようね」

 現在も生家である伯爵家で生活している彼女に、いつもは穏やかに接する父親が、口角を引き攣らせながら言い放った言葉である。
 完全に明後日の方向を向きながら棒読み口調で告げた父親に、エルディリカはそういうものなのか、と素直に頷いた。父の後方に立つ青年の美しい顔に見惚れてしまったこともある。青年は流れるような所作で跪き、エルディリカに丁寧な挨拶をしてくれた。

「今日からお世話になります。アーリミタルと申します」

 まだ人を疑うことを知らなかった少女は、わずかに高鳴った胸に気づくことなく、新しい従者の挨拶に、小さく応えた。

 それがもう一年前の話である。


 全てはこの男、アーリミタルが仕組んだ大嘘である。
 この男、エルディリカと顔を合わせる半年も前から、職業病ともいえるその手腕で抜けのない情報統制を行っている。そして今も抜かりなく彼女を翻弄しているこの男は、とても楽しげだった。

 なぜ彼は、そんな大嘘をついてまで彼女を囲うのか。
 それはひとえに、楽しいからである。アーリミタルは、素直で可愛いエルディリカを騙して、屈服させるのが大好きだった。

 エルディリカだって違和感を感じていないわけじゃない。この男のお勉強の時間は、恥ずかしいことをたくさんさせられる。そして、普段は自分より格下であるこの男に、翻弄させられるのはとても屈辱的だった。言葉だって気安いものに変わるし、時には馬鹿にしたように笑われることだってある。そもそもこの従者はひどく憎たらしい。軽薄な雰囲気も併せて、正直好きではなかった。だが彼女は貴族の娘として家同士のつながりを尊重しなければならない。そうなると結局彼女もお手上げで、未来の旦那様に気に入られるため、今日も今日とて憎たらしい従者のありがたい講義を受けるしかないのである。


 そんな彼女は、自分が既にこの王国の中で一番厄介なしがらみを持ち、性格にもかなりの難がある男に籍も併せて囲い込まれていることに、一ミリも気がついていない。そして、アーリミタルが決断したら最後、二度と表舞台に戻れないことを彼女は知らなかった。

 そういうわけで、エルディリカ・コースレーは大層不憫な人妻、なのである。







「はー、危なかったねー。何度かキスしそうになっちゃった。ディカの唇柔らかそうなんだもの、堪えるのに苦労したよ」

 軽薄な笑みを見せた男は、彼女が嫌がる愛称を馴れ馴れしく口ずさみ、自らの人差し指をふにょり、と娘の唇に当てる。少しだけ力を込めるとふわふわとした唇に指が沈む。将来的に、この唇の中に自らの欲望を突っ込んでやりたいな、と思いながら、もちろん口には出さずに、アーリミタルは微笑む。

「ちゅー♡ らめぇ♡ 赤ちゃん出来ちゃう、からぁ♡」

 一方のエルディリカは、うわ言のように呟き続けている。
 先程絶頂したばかりだというのに、腰がひゅこ、ひゅことゆらめいている。

 当たり前である。そうなるようにアーリミタルが躾けた。

 もう完全に出来上がっている彼女に、アーリミタルは笑みを深くする。その目は完全に欲望に支配されていた。

「ディカ、かわいい。あー、だめだ。またちんちんイラついてきた、ディカ、お尻高くして。ほーら、もっと。そのまま伸びしてるニャンコのポーズしてて」

 くいっとお尻を一際高くあげられ、四つん這いから下肢だけ高這いのポーズになる。恥ずかしいところが丸見えであり、エルディリカは耳まで真っ赤に染め上げた。

 ちゅぷ♡
「…っ♡」

 人差し指で何かを掬われ、それを白い尻たぶに塗りつけられる。

「ディカー、ほら、大事なちんちんミルク、漏れちゃってる。これ、他の男だったら、怒っちゃうよ?」
「…っ!ご、ごめんなさいっ……!」

「ねぇ、ディカ。復習。ディカの中に注いでもらうちんちんミルクには、どんな意味があるんだっけ?」

「あ、はぃ……っ!え、と家に入った奥様が、……ぁあぁ♡っかきらさないれぇっ♡ んひゃぁ……はふっ♡ ぅ……ひっ……っ!っーー♡♡♡」

 過去にアーリミタルに告げられた言葉を必死に思い出しながら答えるエルディリカに、不埒な指が邪魔をする。

「ほーら、集中。ディカぁ、ちゃんと言って」

 ぐにゅぷう♡ ぬろろ、こすっこすっ♡♡ ぬちゅちちち…♡

「ぁー♡ ぁー♡ イっーっーーッきゅ!イきましゅっ♡♡♡ ひっぁあぁーーーー♡♡♡」

 中の白濁液をぞろりと掻き出され、ついでにGスポを掠められ。エルディリカは堪えきれずに数回目のアクメをきめる。小さな足趾をきゅうっと丸めながら意識を飛ばしかける彼女に、アーリミタルは、耳元で何事かつぶやく。途端にエルディリカの意識が浮上する。

「っ♡♡♡ らめでふっ♡ ちゅーは、らめてくやさいっ♡♡、えとぉ、だいじなちんちんミルク、じょぼじょぼぉ♡って注ぐのはぁ♡♡、奥さんが、だぁーいしゅきな旦那様と仲良くするための、必要な栄養がたーくひゃん♡入ってるから、でし、ぅ♡♡」

 快楽にやられ、まるで回らない舌を一生懸命動かして、彼女はなんとか男にとっての正答を答えてみせる。
 滑らかで柔らかな臀部をよしよしと撫で上げられ、彼女は束の間の穏やかな時間を享受する。

「お利口さんで、かわいいニャンコちゃんには、美味しくて太ーいご褒美、あげるね」

 え?と聞き返す前に、膣口に当てられた、冷たいジェルの感触。それが何かを思い出す前に、エルディリカは後ろからじゅぶぷぅっ♡と突き上げられた。

「ひゃあぁぁ ァあぁー♡♡♡ また、ぁ、♡♡♡、また挿れ、ぁぁ♡♡♡」

 少々乱暴だが、あのヒヤヒヤとした感触、ジェルをしっかり付けてくれた男に、エルディリカは安堵する。先ほどから強く腰を打ち付けられるものだから、正直、自分の大事な処女膜が破れないか不安に思っていたのだ。ジェルを付けてくれてるということは、まだ自分は純潔を有しているのだろう。

 ーーあとは自分がをしさえしなければ、良いだけだ。

 そんなことを脳裏で考えたエルディリカは、不安が減った分、より大胆に蕩けていった。

 もちろんそんなジェルなど存在しない。存在してたまるか。技術が進歩してきた淫紋や魔法などであれば、処女膜の再生が可能とされている。しかし、それもである。つまり、この世界には性交しながら処女膜を保護する手段など存在しない。このジェルは市販の潤滑剤に、高濃度の媚薬を配合した、ただの媚薬ジェルである。

 すぐに正規の効果は現れた。

 エルディリカの全身がぽ、ぽ、ぽと赤くなり熱を持ち始める。太ももを擦り合わせ「は♡ は♡ は♡」と吐息が荒くなり始めたら、準備万端の合図である。ちなみにアーリミタルはこの間ゆるゆると浅い律動しかしていなかった。

 アーリミタルはエルディリカの腕を掴み、少々雑にこちらを向かせた。ドローッと淫蕩に濁った瞳は既にこちらを見てはいない。
 アーリミタルは堪えきれずに「ふっはは」と声を上げて笑い出した。

「ディカぁー、今日はにゃんこごっこしよ?大好きな旦那さんに奉仕するにゃんこ、やる?」
「にゃるぅ♡ にゃるからぁ♡」
「……から?」
「もっと奥ぅ、ゴシゴシしてぇ♡♡♡」

 ひとつ頷いたアーリミタルはにっこりと笑う。
 アーリミタルはドロドロになったエルディリカも大好きなのだ。

「ん、わかった。ねこちゃん、いっぱい食べてね?」
 んグゥ、ぬちぃいぃい♡♡♡
「ひゅ、っは♡♡♡」

 ぐりぃいぃっ♡ ごぐぅ♡ パンパンパンパンっ♡♡♡

 強い快楽に襲われすぐに眼球を上転させかけるエルディリカに、アーリミタルは慈悲など与えない。陰茎は深く、しかしわざとポイントを外し、強く乱暴に抉り倒した。

「やらっ♡ らめっ♡ イくの♡ イき、ひゃいいぃい
♡♡♡」

 明らかな焦らしに、エルディリカは泣き叫んだ。

 これで、純潔などと!
 アーリミタルは笑いが止まらない。

「ねーえ、ディーカ。にゃんこちゃんだよ?ちゃんとお話しして?」
「……っうぅえ…」
 ボロボロと涙をこぼすエルディリカは、それでも健気に口を動かす。その間にもわざと特定のポイントに当てようと拙く腰を動かすことも忘れない。そのイキ汚なさも、アーリミタルが好ましく感じるところだ。

「に、……にゃあ♡ ご主人様に、ちんちんズンズンて、ディカのいちばん、ダメになっちゃうところ、……た、たっくさんいじめてほし、にゃん♡ 」

「それで」

「っ……、ディカのおまんこが、アーリミタルの、ちんちん忘れられなくなるくらい、たーくさんごしっごしぃ♡って♡♡♡
とろとろおまんこの中で、ちんちんぎゅーっ♡ってしながらイかせ、」

 ずごぉ♡♡♡にゅぬぬぬ♡ごっちゅん♡
「に"ぁッーーーーーっ!ーーーイッひゃ、にゃぁあぁん♡♡♡」

「ほんと悪ーい子猫だなぁ。あーきもちい」

 待ち望んだご褒美をもらい、エルディリカは全身幸福感に包まれる。太く立派な肉棒をGスポを狙って貫かれた瞬間に、信じられないほどの快楽に支配され、無意識のうちに上り詰める。

「にぁーーーーー、ぁ"ーーーー♡」
 イきっぱなしになったエルディリカが崩れ落ちそうになるのをアーリミタルが彼女の細い腰を抱えることで補っていた。彼が腰を押し付けるたびに、潮だか愛液だかわからない液体がぴゅくぴゅくと垂れ落ち、室内には淫らな雰囲気で充満していた。

 側から見れば、アーリミタルの強引で身勝手な性欲処理にしか見えないが、それ自体はエルディリカが深く望んだ営みだった。

「あーだめ。俺こういうの弱い。すぐイく」

 そんなことを呟いたアーリミタルは、いつものようにお行儀よく降りてきた子宮口にぴとり♡と陰茎を押し付け、その最奥に煮えたぎった精子を注ぎ込もうとして、

「……っ」

 一回、耐えた。

 断続的に痙攣し、媚薬に加えて快楽漬けになったエルディリカの表情は伺えない。でも、明らかにトんでいる。

 ーーー今、かな?

 アーリミタルは次の行動を決めた。ぬろろろ♡と爆発寸前の陰茎を抜く。

「…っ♡…ん…ぇ、……ぁ、?」

 大方、限界まで抜いて突き上げるとでも思ったのだろう。
 期待した快楽がやって来ずに、しかもキモチイイをくれる、大事なものが抜けてしまったことに、切ない吐息が聞こえる。

 アーリミタルは笑いを噛み殺しながら、くるり、とエルディリカの身体をひっくり返した。お互い向き合う形になる。いわゆる正常位になったアーリミタルは、そのままにゅぷぷぷ♡と陰茎を挿れた。

「……ぁあ♡ おちんちん、きたぁ……♡」
「そー、そ。おかえり、て言ってやんな」

 心の底から嬉しそうな彼女に、アーリミタルもぽかぁとした気持ちになる。

 ーーコレ、もう、愛し合ってるよなぁ?

 ふと、そんなことが彼の頭をよぎったが、その言葉が口から漏れ落ちることはなかった。

 先ほどと違うのは、ゆっくりとした律動で、明らかにエルディリカを気遣って行為を進めていることである。
 愛情たっぷりのスローセックスが気に入ったのか、エルディリカは、とろとろと愛液を垂らし、従者であり、実は夫でもある男の背に回した腕に緩く力を入れた。そんな彼女の唇から飲み込みきれなかった唾液が顎にかけて一筋の線を作っていた。まずは顎をぺろりとひと舐めしたアーリミタルは、それが拒まれなかったことをしかと確認する。首筋にリップキスを幾度も落とし、同時にクリトリスを優しく撫で上げた。

「ひゃぁ、ん♡ 」

 揺蕩う快楽の中、身を任せ切ったエルディリカは、拒むことも、嫌がる発言もない。与えられた快楽を、与えられるまま享受する彼女を見て、アーリミタルは口を開いた。


 ぬちく♡ ぬっちゅ♡ ぬっちゅ♡ ぬっちゅ♡
「ディカ、ねえねえ、」


 意識をこちらに向けるため、少し深めに律動する。
「ぁ♡ ひゃぁい♡」
 ドローッと快楽に濁った瞳はそれでもアーリミタルに向けられる。

「少し考えたんだけど、今から、俺のちんちんと、ディカのまんこ、深いところでちゅーってしようかなぁって思って」
「♡♡♡ ひゃぃ♡」

 子宮口なんて余計な言葉は一切出さずに。

「おちんちんミルクも、ぴゅうぅーっぴゅうぅうー♡っていっぱい、いーっぱい、まんこにまぶしてあげて、」

「っ♡ーーー!♡ っひゃぁぁ、♡、み、みるくぅ♡♡、ほしいでしゅ♡」

 この子、言葉だけで甘イキしたよ。
 ……どこまでエロいの?

「それで、」

 こくっ♡とエルディリカが喉を鳴らす音がした。

 そう、今まではこれで終わりだった。
 しかし、アーリミタルは言葉を続け、そして、エルディリカはそれに期待したのだ。否、してしまった。

「俺の唇と、エルディリカの柔らかい唇をちゅうぅ♡ってエッチさせて、」
「っ♡♡♡」
「ベロとベロをちゅばちゅぱ♡って、絡めて、舐め合って、扱きあって、」
「っひぁ♡♡♡」
「唾液混ぜ混ぜしちゃったら、とってもキモチイイ、じゃない?」


 ぷしっ♡♡♡しょぁあぁあーーーー♡

 勢いよく潮が漏れ出て、……やっぱり言葉だけで彼女はイってしまったらしい。
 ぎゅにゅり♡と一際強く中が締まり、陰茎を隙間なく抱きしめられたアーリミタルは、息を詰める。

 ここまでとは、という気持ちと、自分がこうなるようにした、という仄暗い気持ちがごちゃ混ぜになり、彼も大分狂い始めていた。

「ねぇ、どーする? 赤ちゃん作っちゃおうか?
俺と、子作りどろっどろエッチ、しちゃう?」

 にたり、と嗤った男に、エルディリカはおずおずと顔をあげた。

 ふわ、と唇が開く。

「あーる、こども、きらい?パパ、に、なってくれる?」

 ゾクゾクゾクゥ、と強い快楽が彼の股間を直撃する。

「っ……………!」

 思わずイきそうになり、唇を噛み締めながら波をやり過ごすアーリミタルに、エルディリカはにこーっと笑った。

「あーるがよかったら、子作りえっちしましゅ♡ ちんちんとまんこをくちゅぅぅ♡ってチューさせながら、お口でちゅぅーー♡ってして、パパとママでいっぱい幸せになっちゃ、ん、ムゥ♡」

 最後は言葉にさせなかった。

 エルディリカの唇ごと、自らのそれで覆ったアーリミタルはグポォ、と耳障りな音を立ててエルディリカの小さい口に舌を侵入させた。それと同時にぐちちち♡、と一番奥まで腰をすすめる。
 形の良いお尻を鷲掴みにして、勢いよく引き寄せ、最後までにゅちぃ♡と突き入れた。

 彼女が最後まで守り続けてきたもの、それ自体は今までの過程をすっ飛ばしてきた交わりと比較すれば、子どもでも安易に交わしてしまうような、軽い接触。

 だが、アーリミタルに誤情報を叩き込まれてきた彼女にとって、口づけそれは、至高の、ーーある意味、生挿入や中出しを超えたーーものであった。
 その一方でアーリミタルにとっての口づけそれは、彼の感じる中で恐らくは一番汚く、許されない感情アイを表す、禁断の交わりだった。




「ンンムゥ♡♡♡ んんんンンンンッ♡♡♡ っーーー♡♡♡」

 自らの禁断をいとも容易く奪われ、そして蹂躙されたエルディリカは、なんの抵抗もできず呆気なくイった。

 一方アーリミタルは、イっている彼女の唇をやさしくぺろぺろ♡し、舌と舌を絡ませていた。約束通りに全てを蹂躙する心算だった。……が、彼にもそこまで余裕はなかった。

 彼女の舌をくちゅる♡と吸い上げ、じゅ、じゅ、じゅ♡と甘やかしながら愛撫する。
 そして、先程、一回ごめんなさいした子宮口に、再度陰茎をごぢゅぢゅうぅ♡と捻入れる準備をして、

「エルディリカ、あいしてる」

 不意にそんな言葉が漏れ出てしまい、思わずアーリミタルは自らの口を覆う。
 図らずも、彼女のお尻を押さえていた手が外れ、折角調整した位置がずれかけるが

「わたしも、しゅ、きぃ♡♡♡」

 ぐちち♡

 わずかではあるが思わぬ助っ人が協力してくれ、アーリミタルはもう、何も考えられぬまま、メチャクチャに腰を突き入れた。

「あーだめ、腰止まらない、ディカ、大好き♡ 愛して、るっ」

 一際強く突き入れた彼は、今回もしっかりと中に膨大な精を放った。


「ふ、……ふ」

 放心したままの彼をよそに、彼女は意識を飛ばしていた。
 自らの、わずかに上下した呼吸音に、やっと我に返ったアルシミスタは、そっと視線を下に下ろした。

「はぁ」

 短くも重いため息をついた男は、傍で横になる彼女の髪をそっと撫で上げる。
「あーゆうことは、まだ言うの早いかなーと思ってたんだけどな……」

 彼女が受け入れてしまったら。
 そして、自分が決断してしまったら。

 王家の裏方として生きるアルシミスタと一緒になるということは、もう二度と社交の場に立つことを許されず日陰の道を歩むことにつながる。彼女にとっては身勝手でしかないその条件は、彼にとっては非常に脆い命綱にも似た枷だった。その条件を結び、やっとのことで彼女に触れる権利を得たのだ。

 決して忘れたことのない過去を彼はひっそりと思い返していた。
 王家のパーティーでうっかり人前に姿を現しかけ、慌てていた少年は、ミルクティー色の髪の幼子に保護され、隠してもらったのだ。生まれて初めてついたのだろう、拙い嘘をつき、ふるふると震えていた少女が今、魅力的な成長を遂げこの腕の中にいる。
 手に入るはずのなかった幸福を彼はゆっくりと噛み締めた。

 決して彼女の私生活を犠牲にはしたくない。生真面目で愚鈍な彼女がゆったりと家族と過ごすこの時間を奪いたくないのも本音である。しかし。

「そうは言っても、悪い虫がつく前に、隠しちゃうんだけどさ……」

 きっと全てを告げたら、彼女は怒り、そして泣くだろう。
 絶望するに違いない。

 だから、その時までに。

 ーーー彼女をもっと躾けなければ。


 仄暗い微笑みを浮かべた男は、ぼんやりとそんなことを思った。



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