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ひとかけらのパン
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ある寒い雨の日、彼らは公園にいた。
「お兄ちゃん、寒いね」
そう弟は話しかけた。
「もっとこっちにおいで。二人でいれば暖かくなるよ」
そう兄は答えた。
人のいない公園で、彼らは寄り添って寒さに耐えていた。
ある日彼らは食べ物を探して歩いていた。
「お兄ちゃん、お腹すいたね」
「なかなか食べ物が見つからないね」
そう弟は話しかけた。
「そうだね」
そう兄は答えた。
またある日のこと、彼らが街の中を歩いているととてもいい匂いがしてきた。
「お兄ちゃん!とてもいい匂いがするよ!」
「本当だ!どこだろう」
その匂いは道の向こう側のパン屋さんからしていた。
「ここで待ってて。僕が行ってくる」
そう兄は弟に言って道の向こう側へと走って行った。
店の裏側にあるゴミ箱を漁っていると、店の人が出てきて
「わぁ!汚らしい!あっちへ行きなさい!」
そう言ってホウキで叩かれ逃げ出す兄。
その先には道の向こう側で待つ弟の姿。
兄はそちらへ一目散に駆け出した。
猛スピードの車が走ってきていることに気づかずに。
ドン!
大きな音がして人々は振り返る。
しかし足を止める者はいなかった。
「お兄ちゃん!」
そう叫んで弟が駆け寄る。
「これをお食べ」
そう言って差し出したのはゴミ箱から拾えたひとかけらのパンだった。
「お兄ちゃん!」
そう泣き叫ぶ弟のそばで、兄は天国へ旅立った。
弟はずっと兄のそばから離れなかった。
「お母さん、あんなところで犬が倒れてるよ」
そう言って女の子が駆け寄ろうとした。
「ダメよ!」
そう言って母に引き留められる。
道の傍らに2匹の白い犬が雪にまみれて横たわっていた。
ひとかけらのパンとともに。
「お兄ちゃん、寒いね」
そう弟は話しかけた。
「もっとこっちにおいで。二人でいれば暖かくなるよ」
そう兄は答えた。
人のいない公園で、彼らは寄り添って寒さに耐えていた。
ある日彼らは食べ物を探して歩いていた。
「お兄ちゃん、お腹すいたね」
「なかなか食べ物が見つからないね」
そう弟は話しかけた。
「そうだね」
そう兄は答えた。
またある日のこと、彼らが街の中を歩いているととてもいい匂いがしてきた。
「お兄ちゃん!とてもいい匂いがするよ!」
「本当だ!どこだろう」
その匂いは道の向こう側のパン屋さんからしていた。
「ここで待ってて。僕が行ってくる」
そう兄は弟に言って道の向こう側へと走って行った。
店の裏側にあるゴミ箱を漁っていると、店の人が出てきて
「わぁ!汚らしい!あっちへ行きなさい!」
そう言ってホウキで叩かれ逃げ出す兄。
その先には道の向こう側で待つ弟の姿。
兄はそちらへ一目散に駆け出した。
猛スピードの車が走ってきていることに気づかずに。
ドン!
大きな音がして人々は振り返る。
しかし足を止める者はいなかった。
「お兄ちゃん!」
そう叫んで弟が駆け寄る。
「これをお食べ」
そう言って差し出したのはゴミ箱から拾えたひとかけらのパンだった。
「お兄ちゃん!」
そう泣き叫ぶ弟のそばで、兄は天国へ旅立った。
弟はずっと兄のそばから離れなかった。
「お母さん、あんなところで犬が倒れてるよ」
そう言って女の子が駆け寄ろうとした。
「ダメよ!」
そう言って母に引き留められる。
道の傍らに2匹の白い犬が雪にまみれて横たわっていた。
ひとかけらのパンとともに。
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飯板 民様
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