Fragment-memory of secret garden-

黒乃

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雪解け(下)

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言葉責め/強姦/拘束/若干のNTR/シリアス
Fragment一部作目 第九十節閲覧後推奨

雪解け(上)の続き






















 ぴとり、と昂ぶった己をヒクつく秘所へ充てがう。上からはひゅ、と息を飲む悲鳴が聞こえた。ちらりと表情を一瞥すれば、そこには哀願の色が見て取れる。声には出さず許しを乞う。そんな彼に微笑んで、それでもヴァダースはゆっくりと腰を沈めていく。

「はぁア、あッ……!!」

 ヴァダースは急くことはなかった。じっくりと時間をかけ、存在をヤクに知らしめるように楔を押し込む。限界まで快楽という名の毒が回ったヤクの身体は、熱量のあるそれに大層ご満悦のようだ。肉襞が蠢いて、ヴァダースのモノをしっかりと咥え込む。脈動すら抱擁する体内の熱に、思わず甘い吐息が漏れる。ぐぐ、とさらに腰を推し進め、根元までを捩じ込んだ。
 背を弓なりに逸らし、快感の逃げ場を作ろうとするヤク。今すぐにでも、身体を巡る快楽を吐き出したい。しかし彼の陰茎は、その根元をヴァダースに握られている。もはや射精すら、ヤクには許されていなかった。

「ぅ……や、ァ……も、ゆるし、てぇ……」

 ぽろぽろと双眸から零れ落ちる、ヤクの懇願。眉目秀麗な彼は何処へやら。ヴァダースの目の前にいるヤク・ノーチェは今や、敵国の軍人ではない。自分という雄に身体を蹂躙される、一人の憐れな青年だった。それでも、そんな彼が愛おしい。にこりと笑い、冷酷に言い放つ。

「私たちは本来、敵同士ですよ?敵の願いを、簡単に許すわけないでしょう?」

 そしてヴァダースは己の肉竿で、ヤクの中を容赦なく抉り始めた。内腔をくまなく行き来し、柔肉を擦り上げるヴァダースの欲望。指とは比べものにならない重量感と熱量に、一度芽吹いた快楽の花は咲き乱れていった。

「ああ、や、ンぅ、あんッ」

 貫き、内壁を捲り上げて引き抜き、再び熱い蜜壺へ嵌めていく。その律動に合わせてヤクの喉から発せられる熱を帯びた嬌声が、実に心地良い。
 自らの欲を吐き出すことすら許されず、幼い頃から性暴力の英才教育を受け、完成させられた淫らな彼の身体。それは彼の心とは関係なしに、飛沫を上げてヴァダースの楔を迎え入れる。ひとたび内腔へ打ち込めば、蕩かされた肉襞がそれに粘液を纏いながら絡みついた。

「っ、ふふ……氷の術を得意とする貴方の中が、こんなにも熱いだなんて、ね。のぼせそうだ」
「やァ、や、あぅ……ッ」
「嫌?こんなにはしたなく、ここは涎を垂らしているのに?」

 ぐり、と一際強くヤクの雌を抉る。甲高い悲鳴にも似た嬌声が漏れた。その声がもっと聞きたくて、狙いを定めて何度も穿つ。もたらされる暴力的な快楽ですら、余すことなく拾い上げていくヤクの身体。握った竿の先端からは、我慢できずにちろちろと迸りが溢れている。

「ひ、ぃ!あひ、ァ!なん、でッ……」
「ん……?」

 痛いほどに内壁を擦り上げられているヤクから、言葉が漏れ出る。

「こ、なの……ヒッ、あぁん!おな、じなのに……ぃ、いま、までとぉ……!」

 その言葉で、ヴァダースの昂ぶっていた熱が少し下がる。ああ、彼の目には今、自分以外の人間が映っているのか。面白くない。
 ヤクの目に映る、自分以外のもの。それは、今まで彼自身を陵辱していた人間たちだろう。そんなものと一緒くたにされるのは、ヴァダースは願い下げだった。

 一度腰を止め、彼に夜の帳を下ろす。宵闇に浮かぶ月だけを見るように、視界を塞いだ。

「随分と酷い言い草ですね。私が、今まで貴方をいたぶってきた人間と同じだなんて」
「ちが、わない……!貴様、だて……ッ」
「違いますよ、大きくね。分からないのなら、教えて差し上げましょう。私と彼らとの、大きな差を」

 するり、酷く丁寧に。慈しむような手つきで、ヤクの濡れた頬に手を添わせる。

「彼らが貴方に一方的に与えたのは、痛みだけです。己の欲望をただ叩きつけ、嬲るだけの行為。そこに愛情なんてありません。ただの暴力行為です」
「ぅ……」
「ですが私は貴方に痛みではなく、快楽を与えたいと思っている。何故か分かりますか?」

 知らない、知りたくない、とヤクはかぶりを振る。彼の意思を、今だけは無視する。彼の鼓膜に焼き付けるように、囁く。

「私は、貴方を愛しています。愛する人を気持ち良くさせたいと思うのは、当然のことでしょう?」

 それだけ告げて離れる。ヤクの表情には混乱が浮かんでいた。言いたいことは分かる。ここまで自分を散々いたぶっておきながら、よくもそんな事をと。

 それでもいい。どう思われようとも。自分が彼を愛していることに、変わりはないのだから。

 止めていたピストンを再開する。忘れかけていた質量に、ヤクはわなないた。先程よりも更に遠慮なく、奥深くまで。竿を握っていた手を離し、ヤクの片足を肩に担ぐ。より奥まで、肉棒で蹂躙した。ぐじゅぐじゅと卑猥な音を立てて、悦を頬張る蕾。

「も、やぁ!やら、ィく、い、ぁアあッ」
「ええ、私も……もう我慢できません……!」

 ヴァダースは最奥を貫き、獣のように身体を震わせて愛欲を叩きつける。ヤクも溜まりに溜まった快感が、ようやく開放された。肉竿から蜜液が止まらず、強い絶頂に喉が震えている。やがて落ち着きを取り戻すが、余韻に浸らせる余裕をヴァダースは与えなかった。
 ずぐん、と質量が大きくなったことに気付いたのか、震える瞳でヤクは彼を見上げた。

「ひぐ、な……で、イッた、のにぃ」
「少しだけ、お仕置きです。さっき、私以外を見たのですから」
「そ、な……!おねが、ゆる、し……ンあ!」
「嫌です」

 密着させた腰を浮き上がらせるように、強く揺さぶる。未だ痙攣していた秘肉は、再びもたらされた硬度なそれを締め付けるのであった。

******

 二度目の絶頂を迎えたヤクは、意識を真っ白な快楽に手放した。ヴァダースをしゃぶり尽くしたヤクの身体は、まだ欲しいと強請ってはいるが。
 相手が反応しなければ意味がない、とヴァダースはゆっくりと秘肉からそれを引き抜いた。蜜口から飲みきれなかった白い欲望が、たらり溢れる。

 ぐったりとしたヤクの顔。涙で濡れている頬を再び撫でる。満足そうに微笑んでから、最後に優しく口付けを施す。

「ええ、ええ。いいのです。どうか私を憎みなさい。それで貴方の心が軽くなるのならね」

 聞こえてないだろうが、言わずにはいられなかった。この愚かしくも愛おしい魔術師に、自分がしてやれるのはそれだけなのだからと。
 空に浮かぶ朧月だけが、そんなヴァダースを見下ろしていたのであった。
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