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中学生編
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しおりを挟む「チィ?」
「な、何でもない…」
「?」
明らかに顔付きが変わったのに何でもないフリをする、渉は千鶴の視点を体感したいと思いしゃがもうとするも、
「あ、あった、これ、千鶴、母さんにこれ渡しておいて」
と文雄が近寄ったので確認しそびれた。
「うん、分かった、じゃあ帰るね」
「駅まで送るよ」
「ううん、疲れてるでしょ、道は分かってるから…渉くん、帰ろう」
紙袋を受け取ってそそくさと靴を履いて、千鶴は挨拶もそこそこに玄関を出る。
「へ、あ、じゃあおじさん、また、盆にでも、」
「あぁ、またね、元気になったよ。…気を付けて」
渉はおいおいと慌てて挨拶をして、先に駅へ歩き出した千鶴を追った。
「チィ、おい、チィ、どしたんな、」
「……」
「チィ?」
「……ベッドの下、隙間、」
「うん?何か居ったか?ゴキブリ?」
あれだけ乱雑な部屋だから何が出てきても不思議は無いが、しかし食べ物の容器などは無かったように思う…渉が改札の先で立ち止まった彼女の前へ回り込むと、
「…下着、が挟まってた」
と千鶴は目に涙を浮かべて口をへの字に結ぶ。
「したぎ、そりゃあおじさんだって洗濯もんくらい…」
「違う、女の人の…パンツだった…」
「へ、え?え?」
千鶴がマットレスとスノコの間から見つけたのは白の透け感のあるレーシーないわゆるパンティ、子供から見ても十二分にセクシーで、とてもじゃないが普段使いできるようなデザインではなかった。
「…どうしよ、慌てて持って来ちゃった…」
「み、見せんでええぞ、チィ、その…お、おじさんのとか…」
「お父さんはいまだに白ブリーフだもん、こんなの穿かないよ」
千鶴が握った拳からは白の布地が覗いていて、
「…あー…ほら、髪の毛の、ほら…そう、シュシュとか」
渉は外だし見るわけにもいかず他の可能性を探る。
「パンツの形してる、………渉くん、お父さん…う、浮気、…してるのかな、」
それはあまりにノンセクシャルなイメージの父に無縁だと思っていたワード、しかし男のひとり暮らしでやらかしてしまったのかと千鶴は妄想を先走らせ爆発させた。
「お、お母さんのこと、嫌いになっちゃったのかな、」
「そんなことは…ない…じゃろ…とりあえずカバンに入れぇ、んで電車じゃ、乗ろ…」
「転勤について行くの断ったから…根に持ってたのかな…私のせいかな…」
「いや……あの部屋に…女の人…呼べるかな…」
「………来てすぐ…散らかす前に…やだ、気持ち悪い…」
帰りの電車はまるでお通夜状態で、せっかく楽しかった思い出さえも現地に置いてきてしまったようで…渉は乗客の多い車内で話せる内容ではないために、泣きじゃくりそうな千鶴に肩を寄せて支えてやることしかできなかった。
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