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高校生編
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しおりを挟む花山家がこの町に越してきて4回目の春、渉と千鶴はそれぞれ別の高校へと進学した。
千鶴は当初は渉と同じ西高校を志望していたのだがもう少し上を狙えると担任に説得され、ワンランク上の北高校へと進学することにし見事合格したのだ。
ちなみに卒業後の進路だが北高はほぼ100パーセントの生徒が進学、西高は就職と半々くらいだが渉が属する工業科はほぼ全員が即就職らしい。
「チィ、スカート長くない?」
朝の支度中、洗面所で髪の毛をつんつん立たせながら、渉が千鶴の頭から足先まで眺めてそう言う。
近頃渉は色気付いていて、ブレザーの袖を捲ったりズボンを腰穿きしたり髪を立たせたりと…まず見た目から派手になっている。
「そうかな、買ったまんまだよ?うちはみんなこんな感じ、」
「ふーん…西高はみんなもっと短いんじゃ…ギャルもおるぞ」
「へぇ」
千鶴はヘアブラシで後れ毛を拾ってひとつにまとめ、高い位置でポニーテールにした。
「チィも顔はまぁまぁなんじゃけ…もっとさぁ…化粧とかしたら?」
「は?やだよ…まだ早い」
これでも眉毛が繋がらないよう抜いたり整えたりスキンケアはしっかりしているのに…千鶴は鏡越しに去って行く渉の背中を睨んだ。
渉は台所へ戻って弁当箱を掴んで鞄へ入れて、
「…ほうか…んー…じゃったら…チィ、ワシ、今日からひとりで行くわ」
と千鶴の準備を待たずに玄関へと向かう。
「え、なんで、」
「…北高のチィと一緒に居ったら…ワシも堅苦しい奴じゃと思われるじゃろ」
「私、そんなに堅苦しいかな」
「北高と連むことがダサいんじゃ、じゃあの」
ガラガラと玄関の扉が砂を噛みながら地面を滑って、渉は出かけて行った。
「……失礼な…」
北高も西高も途中までルートは同じで、自転車ごと渡船で本土まで渡りそこから別れて進むのでこれまで通り一緒に家を出ていたのだが…どうやら渉は最近何か状況が変わったらしい。
千鶴も弁当をバッグへ入れて、由恵と美恵子の母組に聞こえるように挨拶をしてから玄関を出る。
・
花山家は現在もまだ建て替え工事中、刈田家に間借りというか丸ごと移籍するような形でお邪魔して完成を待っている。
千鶴は納戸に勉強机を置いてもらい宿題や勉強はそこで、就寝は美月の部屋の床に布団を敷いて、たまにベッドへ並んで寝たりもした。
美月は千鶴を本当の姉のように慕ってくれて、在宅中はべったりと一緒に居る。
「ちーちゃん、ここ教えて」
「ん、んー…ここはこう…こっちを先に足して、こっちを掛けて、」
「あ、そっか」
日常的に宿題を教えるものの美月はどうやら本当は困ってないらしく、単純に触れ合いたいだけなのだと分かってからは千鶴も姉妹の様に相手をしていた。
「美月ちゃん、本当はこれ理解してるでしょ」
「んー?なんのことかしら」
「勉強じゃなくても普通に隣に居ていいのに」
「本当?ふふ…嬉しい♡じゃあこれ、ゲームしましょ」
「いいよ」
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