私達は、若くて清い

茜琉ぴーたん

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「暑いねェ」

「夏だもの…今からでもタクシー拾う?」

「いいよォ、ゆっくり…歩こう、」

 アスファルトの照り返しと車の排気がある分初日の徒歩移動よりずっと体感温度が高くて、私達は道を1本奥へ入り影を縫いながら汗を流す。

 暑いというか熱いのは気温のせいだけではなくて、幼少期以来の歩き方…手を繋ぐのが想定以上に恥ずかしかったからなのもある。

「モモちゃん、手、こんなに小さいんだ」

「源ちゃんが大きくなったんだよ」

「そっか」

「そうだよ」

 中身が無くて薄い会話。

 それなのに途切れることは無くただの相槌あいづちだってテンポが絶妙で話し易い。

「お母さんも言ってたけどさ、私達、ドキドキとかラブな雰囲気になったりできるのかな?」

「できるよ、現に僕は手を繋ぐだけでドキドキしてる。汗びっしょりだよ」

「そりゃ暑いから」

「心臓、耳当ててみる?」

源ちゃんは昨日とは色違いの面白い柄のTシャツの胸を人差し指で示した。

「いい、聞いたところで…」

「僕はね、告白しなくても良かったんだよ。このまま一番仲のいい友達で居るだけでも…充分だったんだ。モモちゃんが他の人とくっ付いたら諦めて新しい恋を探す、そのくらいでいいと思ってた…まぁ一生独身でもいいから探すまでしなかったかな」

「ふゥん?」

「まだ僕とモモちゃんとじゃ、想いに差がある。僕はその差を埋めていくのが楽しみなんだよ。モモちゃんをドキドキさせて、いつか僕の気持ちを追い越させたいね」

「私、追われる方が楽で好きかも」

 源ちゃんの覚悟を知った私が意地悪にそう言えば、彼は

「モモちゃん、」

と繋いだ手をグイと強く引っ張り汗に濡れた頬に口付けをした。

「きゃァ、は、源ちゃん、外だよ⁉︎やめてよ、」

「ドキドキしないかな、僕すごくドキドキした」

「したよ、してる……つ、次はちゃんと…人目の無い所で…して、」

ばくばくとシャツを打つうるさい心臓、私は空いた手で頬を押さえてもごもごと次回を期待する。

「うん、でも密室に二人きりにはならないって宣言しちゃったからなー…親の目を盗むかな、ふふ」

「ん…変なの、隣同士でいつでもチャンスがありそうなのにね、」

「プラトニックだね」


 ぐだぐだと話しながら歩みを再開して、予定より少し遅れたが私達は無事新幹線に乗り込み関東へと帰った。

 ちなみにだが源ちゃんは関西出汁だしのカップうどんを駅でひとつ買って、悦っちゃんへのお土産にしたそうだ。
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