私達は、若くて清い

茜琉ぴーたん

文字の大きさ
上 下
41 / 46
7

41

しおりを挟む

「暑いねェ」

「夏だもの…今からでもタクシー拾う?」

「いいよォ、ゆっくり…歩こう、」

 アスファルトの照り返しと車の排気がある分初日の徒歩移動よりずっと体感温度が高くて、私達は道を1本奥へ入り影を縫いながら汗を流す。

 暑いというか熱いのは気温のせいだけではなくて、幼少期以来の歩き方…手を繋ぐのが想定以上に恥ずかしかったからなのもある。

「モモちゃん、手、こんなに小さいんだ」

「源ちゃんが大きくなったんだよ」

「そっか」

「そうだよ」

 中身が無くて薄い会話。

 それなのに途切れることは無くただの相槌あいづちだってテンポが絶妙で話し易い。

「お母さんも言ってたけどさ、私達、ドキドキとかラブな雰囲気になったりできるのかな?」

「できるよ、現に僕は手を繋ぐだけでドキドキしてる。汗びっしょりだよ」

「そりゃ暑いから」

「心臓、耳当ててみる?」

源ちゃんは昨日とは色違いの面白い柄のTシャツの胸を人差し指で示した。

「いい、聞いたところで…」

「僕はね、告白しなくても良かったんだよ。このまま一番仲のいい友達で居るだけでも…充分だったんだ。モモちゃんが他の人とくっ付いたら諦めて新しい恋を探す、そのくらいでいいと思ってた…まぁ一生独身でもいいから探すまでしなかったかな」

「ふゥん?」

「まだ僕とモモちゃんとじゃ、想いに差がある。僕はその差を埋めていくのが楽しみなんだよ。モモちゃんをドキドキさせて、いつか僕の気持ちを追い越させたいね」

「私、追われる方が楽で好きかも」

 源ちゃんの覚悟を知った私が意地悪にそう言えば、彼は

「モモちゃん、」

と繋いだ手をグイと強く引っ張り汗に濡れた頬に口付けをした。

「きゃァ、は、源ちゃん、外だよ⁉︎やめてよ、」

「ドキドキしないかな、僕すごくドキドキした」

「したよ、してる……つ、次はちゃんと…人目の無い所で…して、」

ばくばくとシャツを打つうるさい心臓、私は空いた手で頬を押さえてもごもごと次回を期待する。

「うん、でも密室に二人きりにはならないって宣言しちゃったからなー…親の目を盗むかな、ふふ」

「ん…変なの、隣同士でいつでもチャンスがありそうなのにね、」

「プラトニックだね」


 ぐだぐだと話しながら歩みを再開して、予定より少し遅れたが私達は無事新幹線に乗り込み関東へと帰った。

 ちなみにだが源ちゃんは関西出汁だしのカップうどんを駅でひとつ買って、悦っちゃんへのお土産にしたそうだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お見合いすることになりました

詩織
恋愛
34歳で独身!親戚、周りが心配しはじめて、お見合いの話がくる。 既に結婚を諦めてた理沙。 どうせ、いい人でないんでしょ?

憧れのあなたとの再会は私の運命を変えました~ハッピーウェディングは御曹司との偽装恋愛から始まる~

けいこ
恋愛
15歳のまだ子どもだった私を励まし続けてくれた家庭教師の「千隼先生」。 私は密かに先生に「憧れ」ていた。 でもこれは、恋心じゃなくただの「憧れ」。 そう思って生きてきたのに、10年の月日が過ぎ去って25歳になった私は、再び「千隼先生」に出会ってしまった。 久しぶりに会った先生は、男性なのにとんでもなく美しい顔立ちで、ありえない程の大人の魅力と色気をまとってた。 まるで人気モデルのような文句のつけようもないスタイルで、その姿は周りを魅了して止まない。 しかも、高級ホテルなどを世界展開する日本有数の大企業「晴月グループ」の御曹司だったなんて… ウエディングプランナーとして働く私と、一緒に仕事をしている仲間達との関係、そして、家族の絆… 様々な人間関係の中で進んでいく新しい展開は、毎日何が起こってるのかわからないくらい目まぐるしくて。 『僕達の再会は…本当の奇跡だ。里桜ちゃんとの出会いを僕は大切にしたいと思ってる』 「憧れ」のままの存在だったはずの先生との再会。 気づけば「千隼先生」に偽装恋愛の相手を頼まれて… ねえ、この出会いに何か意味はあるの? 本当に…「奇跡」なの? それとも… 晴月グループ LUNA BLUホテル東京ベイ 経営企画部長 晴月 千隼(はづき ちはや) 30歳 × LUNA BLUホテル東京ベイ ウエディングプランナー 優木 里桜(ゆうき りお) 25歳 うららかな春の到来と共に、今、2人の止まった時間がキラキラと鮮やかに動き出す。

人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?

石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。 ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。 ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。 「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。 扉絵は汐の音さまに描いていただきました。

10 sweet wedding

国樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。

逢いたくて逢えない先に...

詩織
恋愛
逢いたくて逢えない。 遠距離恋愛は覚悟してたけど、やっぱり寂しい。 そこ先に待ってたものは…

あなたと恋に落ちるまで~御曹司は、一途に私に恋をする~

けいこ
恋愛
カフェも併設されたオシャレなパン屋で働く私は、大好きなパンに囲まれて幸せな日々を送っていた。 ただ… トラウマを抱え、恋愛が上手く出来ない私。 誰かを好きになりたいのに傷つくのが怖いって言う恋愛こじらせ女子。 いや…もう女子と言える年齢ではない。 キラキラドキドキした恋愛はしたい… 結婚もしなきゃいけないと…思ってはいる25歳。 最近、パン屋に来てくれるようになったスーツ姿のイケメン過ぎる男性。 彼が百貨店などを幅広く経営する榊グループの社長で御曹司とわかり、店のみんなが騒ぎ出して… そんな人が、 『「杏」のパンを、時々会社に配達してもらいたい』 だなんて、私を指名してくれて… そして… スーパーで買ったイチゴを落としてしまったバカな私を、必死に走って追いかけ、届けてくれた20歳の可愛い系イケメン君には、 『今度、一緒にテーマパーク行って下さい。この…メロンパンと塩パンとカフェオレのお礼したいから』 って、誘われた… いったい私に何が起こっているの? パン屋に出入りする同年齢の爽やかイケメン、パン屋の明るい美人店長、バイトの可愛い女の子… たくさんの個性溢れる人々に関わる中で、私の平凡過ぎる毎日が変わっていくのがわかる。 誰かを思いっきり好きになって… 甘えてみても…いいですか? ※after story別作品で公開中(同じタイトル)

一夜限りのお相手は

栗原さとみ
恋愛
私は大学3年の倉持ひより。サークルにも属さず、いたって地味にキャンパスライフを送っている。大学の図書館で一人読書をしたり、好きな写真のスタジオでバイトをして過ごす毎日だ。ある日、アニメサークルに入っている友達の亜美に頼みごとを懇願されて、私はそれを引き受けてしまう。その事がきっかけで思いがけない人と思わぬ展開に……。『その人』は、私が尊敬する写真家で憧れの人だった。R5.1月

推活♡指南〜秘密持ちVtuberはスパダリ社長の溺愛にほだされる〜

湊未来
恋愛
「同じファンとして、推し活に協力してくれ!」 「はっ?」 突然呼び出された社長室。総務課の地味メガネこと『清瀬穂花(きよせほのか)』は、困惑していた。今朝落とした自分のマスコットを握りしめ、頭を下げる美丈夫『一色颯真(いっしきそうま)』からの突然の申し出に。 しかも、彼は穂花の分身『Vチューバー花音』のコアなファンだった。 モデル顔負けのイケメン社長がヲタクで、自分のファン!? 素性がバレる訳にはいかない。絶対に…… 自分の分身であるVチューバーを推すファンに、推し活指南しなければならなくなった地味メガネOLと、並々ならぬ愛を『推し』に注ぐイケメンヲタク社長とのハートフルラブコメディ。 果たして、イケメンヲタク社長は無事に『推し』を手に入れる事が出来るのか。

処理中です...