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しおりを挟むでも源ちゃんも初恋ドリームにただ浸っている訳ではなかったようで、
「それはやってみないことには。でもご安心を、成人するまでは清い関係でいますから」
と改めて方針を語った。
「それはご丁寧にどうも」
「でもキスはしてしまいまして、こう…口先だけの事故的なやつなんですが。事後報告ですけどすみません…えへ」
さすがにそこは照れる源ちゃんを見れば私もじわじわと頬が熱く紅くなってきて、
「源ちゃん‼︎やだもォ、ばか!」
「ほんとのことじゃん、包み隠さず伝えなきゃ信用が得られないよ」
と痴話喧嘩が始まると母はぶふと吹き出して笑う。
「あはは♡うん、睦じいのね、わざわざ教えてくれてありがとう♡……源ちゃんのことは信用してるから…成人までって…あなたのその宣言も信じるわよ、いいのね?…我慢できるのね?」
「はい、なるべく密室で二人きりにはなりません。触りたくなっちゃうので」
「あっはっは♡いやァね、正直者……桃、しっかり考えて…自分のことは自分でね、」
長いまつ毛が揺れる優雅なウインク、「自分の体は自分で守ります」と私は両目を閉じて無言で応えた。
「そっかァ……そう…お隣同士で…これ以上ない良縁ね…嬉しいわ、長く続いて欲しい」
「モモちゃんも、お母さんも、おじいさんとおばあさんも大切にします」
「ふふっ……あなたも青臭いのね……でもいいわ、また数年後…あなたが改めて挨拶に来てくれることを願ってるわ」
そう言った母の耳のイヤホンから少し音が漏れたと同時に面持ちが変わって、
「はい、何?………お名前は?………あァ、戻るわ、今カフェだから、待ってて」
と襟元のマイクに声を吹き込む。
「ごめんね、お得意様に呼ばれちゃった。…桃、源ちゃん、ゆっくりして行って、またね♡」
「またね」
「桃、気を付けて帰りなさい、」
「うん、」
ベストを着てトランシーバーを挿し直す母の後ろ姿は凛々しくて、挟んだ髪をスッと引き抜く手の仕草も麗しくて、歩き出して人混みに消えていくまで目が離せない。
「カッコいいね、」
「うん…自慢のお母さんだよ」
「…モモちゃん、混んできたから飲み終わったら出よう」
「うん…またタクシー?」
「歩いてもいいよ、昼ごはん買ってもいいし」
「じゃあ…歩こうか」
レジ横のゴミ箱へカップを捨てて、私達は夏空の下を駅へと歩き始めた。
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