私達は、若くて清い

茜琉ぴーたん

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 3日間で焼けた肌がちりちりと騒ぐ、彼の背中に手を回せば弾けるように動いて甘い拘束が解かれる。

「っ‼︎あー、止めろよ‼︎襲っちゃうだろ‼︎」

「おそうって……だって…力じゃ勝てないんだもん…」

「嫌がってよ、振り解いて、じゃなきゃ殴ってでも…いや、ごめん」

源ちゃんは私のノースリーブの二の腕を掴んで引っ剥がし、でも放し難いのかもにもにと感触を味わっていた。

「……なんかすごい…ムードって凄いのね。流されてエッチしちゃっても不思議無いくらい脳がとろけちゃってた」

 それはたぶん年齢は関係が無くて、理性とか欲求の抑制ができなくなるくらい頭が沸いて胸が躍って…今この時しかできない、とか逃したくない、とかいう勢い、盛り上がりなのだろうと思う。

「…しないし…僕はモモちゃんに責任取れないからね、まだできない…」

「真面目だね、」

「…そうでもないよ…匂いだけで興奮しちゃう。でも良いんだ、今じゃなくて。…モモちゃんの裸なら散々見たし」

「それ保育園の時でしょ」

「小学生の時も見たわ」

「…だいぶ成長してるけどね」

 胡座あぐらをかいて頬杖をついて、源ちゃんは私の胸を一瞬見てから目を逸らした。

「うん…そりゃ分かってる。…あのさ、僕らって両想いってことでいいの?」

「う、ん……そう、だね、両想い」

「…良かった。さ、明日の為にもう寝よう、帰って」

 案外あっさりと源ちゃんは飲み込んで立ち上がり、私に背を向けて扉へ向かう様ジェスチャーする。

「…追い返す感じ、冷たくてイヤ」

「…襲っちゃうよ」

「やだァ♡」

「~~~っなんなんだよ、もう、」

 立ち上がりかけていた私へ振り返って、源ちゃんが相撲の立ち合いさながらに向かってくるものだから、

「きゃ、」

と思わず本能で両手をきゅっと胸の前で結び固まった。

 そんな私を正面から抱き締めて、彼は腹に溜めていた想いを吐き出す。

「好きだよ、モモちゃん、ずっとだ、幼馴染みだからってだけじゃない、色んな人が居たってモモちゃん以外にこんな気持ちにならなかったんだ、好きだよ…好きだ、」

「うん…私も…源ちゃんが好き…一緒に、隣に居て欲しいの」

 きちんと言葉で表現すれば心が少し落ち着いて、私は面白いイラストが描かれたTシャツの胸に開いた手を当て、首筋に鼻を付けてすんすんと匂いを嗅いだ。

 汗と、このバスルームに置いてある業務用シャンプーの香りが混じって。

 私の匂いも源ちゃんの鼻に届いていると心配になったが「どんな匂いでも許してくれるでしょう?」とこれも高姿勢に構えてみる。
 
 彼の息は私と反対で落ち着くどころかどんどんと荒くなっていって、

「はァ…………もうおしまい、部屋に戻って、」

とまた引き剥がされた。

「うん…おやすみ…また明日ね、」


 廊下に出て扉を閉めるその瞬間、ぼすっと大きな塊がベッドへダイブした音が聞こえ、私は何だか居た堪れない気持ちで自室へと戻る。

 そしてオートロックの扉を閉めて鍵を置いて、先ほどまで暖かかった二の腕をぎゅうと抱いて床へへたり込んだ。

「(…源ちゃん……あれ…)」

 下腹部に当たってすぐ離れたあの感触、私は源ちゃんの「オトコ」に始めて触れて叫び回りたいほどに動揺する。

「(興奮、してたってことだよね……うわァ…)」

 生理現象だもの、分かってる、でもそれを引き出したのは私なんだ。

 ばくばくと心臓が元気になってドーパミンだかアドレナリンだかがじゅるじゅると溢れ出すような感覚に襲われた。
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