私達は、若くて清い

茜琉ぴーたん

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「そうかもね、だからこの先大学とかで良い人が居たら簡単に気持ちが変わっちゃうだろうね。他を知っちゃったら」

「……そっか」

「でも僕の『モモちゃん好き歴』は人生の100パーセントを占めてる。これから他の女の子に恋してもモモちゃん歴を超えるには30歳を過ぎなきゃいけない…それでやっと人生における『モモちゃん好き歴』が50パーセントまで下がるんだ。分かる?」

「理屈は、」

私は頭の中でグラフを作図しながら彼を追い掛けた。

「愛は期間じゃないって分かってるけどさ、当たり前にモモちゃんの隣に居るっていうのはもはや僕の生活の一部なんだよ、たぶん人格形成にも影響してると思う」

「してないと思う」

「価値観とか物の捉え方とか将来像とかに…モモちゃんが浮かんで干渉してくるんだ、家族とか兄妹みたいな、でも最近はそれよりもっと……いやらしい事も考えたりする」

「やだァ」

 どこまでも素直な源ちゃん、そちらの理屈も分かるけれど私は未だに祖父以外の大人の男性の裸体を見たことがないのだ。

 性欲の発散方法は保健体育で学んだけれど生々しいことは考えたくないし自分がその対象になるのも気持ちが悪い。

 ノンセクシャルな源ちゃんでもそんな事をするのだと思えば尚のことだ。

「だからちゃんと防衛して、隙を見せ過ぎないで」

「うん」

「でもたまにカーテンの隙間から見えたりすると嬉しい」

「源ちゃん!」

 怒らせようとわざと言ってる?私で興奮するんだ、むずむずと様々な感情が込み上がっては、私の唇はふにふにと波打って端が上向きになった。

 ちょっとエッチな展開が含まれた少年漫画を読んだ時のようなドキドキして気分が高揚する感覚、「あァやだ、私っていやらしい」と背徳感に自分を責める。

「ふふ、………あー、スッキリした、ここ最近のモヤモヤが吹っ飛んじゃったよ」

「私はモヤモヤ貰っちゃった、気まずい」

「いいじゃない、僕はモモちゃんがこれからも変わらず好きってだけ、何も変わらないよ」

 帽子の網目から太陽の光が細く透けておっとりした源ちゃんの目元を照らして、それがとても眩しくて、

「変わるよ、意識しちゃうじゃん」

と私は彼の横に再び並んだ。

「変わらないよ、きっと……渡ろう、」


 青信号の横断歩道を渡って、スーパーや飲食店が並ぶモールの一角にムラタ皇路オウジ北店は建っている。

 1階の鏡張りの柱の前で帽子を取って汗を拭き、いざ参らんとエスカレーターに乗った。
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