私達は、若くて清い

茜琉ぴーたん

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「ふふっ…売れないでしょ」

「……じゃあ今度撮るからね」

「やだァ」

「と、撮らないよ、例えだから…本当…」

「見えないように窓塞いじゃったら?」

 あまり物事に動じない源ちゃんがあたふたしているのが面白い。

 張り詰めていた糸がプツンと切れて、私は窓枠に両肘を置き顔を伏せる。

「日照権を侵害しないでよ……モモちゃん?」

「……本当はね、源ちゃんが…まだ起きてるかなって思って…気付いてくれるかなって思って、カーテン開けたの」

「うん?何か…先輩のこと?」

 源ちゃんの声はいつも通り穏やかに、しかし気持ち低くなったように感じた。

「ううん、お母さんの……さっき電話があってね。その…再婚、するとしたらどう思うかって…」

「え、いい話があったんだ、良かったね」

「うん、でね、……もし、もしその人との赤ちゃんができたら…どう思うかって聞かれて…」

「………うん、」

「可愛がるって答えたんだけど…なんか…本当はモヤモヤしてて…心から喜んでなくて…あの…」

 私は「同意して」という気持ちを込めて顔を上げ源ちゃんに訴えるも、彼は

「うん」

とただ相槌あいづちなのか肯定なのか不明瞭な返事をしてくれる。

「ずるいっていうか、なん…何て言うんだろう、ヤキモチ?私ってこんなマザコンだったのかなァ?」

「うん」

「離れてても、私だけのお母さんだって…思ってたから…違う、お母さんが幸せになるのは嬉しいの、それは本当なの、でも、」

「うん、淋しいね。それは伝えた?」

「……少しだけ…」

「ちゃんと言っておきなよ。そのまま。見ててあげるから、掛け直してみたら?言ったらスッキリするんじゃない?」

源ちゃんはそう言って、私に背中を向け手摺りにもたれた。

「う、ん、待って、」

「落ち着いて」

「源ちゃん、そこに居てね、」

「うん、居るよ」

 彼の背中を視界に収めながら、私は母からの着信履歴をタップしてリダイヤルする。


「………あ、もしもし、お母さん…あの、あのね、さっきの話なんだけど…」


 私は母へ、ありのままの気持ちを伝えた。

 曖昧あいまいで感情的で感覚的な単語ばかり並べて、時折鼻水が垂れるくらい泣いて、ひと通り伝えたら電話の向こうの母も鼻声で

『ふふっ…大人になっちゃったと思ったけど…まだ泣き虫な桃ちゃんなのね、』

と笑っていた。
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