私達は、若くて清い

茜琉ぴーたん

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「……源ちゃん?」

 窓を開けて声を掛けると、

「……!モモちゃん、こんばんは」

と案の定パジャマの上と見慣れた顔がニョキと出てくる。

「こんばんは……な、何してるの?」

「んー…星がキレイだから見てた…モモちゃんは?」

「…特に…意味無くカーテン開けただけだよ…今、隠れてなかった?」

「ん…いや、カーテン開いたからビックリして」

「なんで?この窓からは私しか出てこないんだから驚かなくても」

「モモちゃんが出てくるからマズいんだよ」

 明らかに動揺した様子の源ちゃんは何か誤魔化している。

 よもや星空の下でやましいコトでも…

「は?なにそれ…変なコトしてたの?」

と声のキーを一段下げて問えば

「違う、星を見てたのは本当だよ、カーテンが閉まってたから」

支離滅裂しりめつれつな答えが返ってきた。

「なんなの?カーテンカーテンって。私に見られちゃマズいことしてるんじゃないの?」

「あのねぇ……モモちゃんが見えるからマズいんだよ!」

「なに?分かんない」

 そういえば最近やけにカーテンについて言及してくる。

 2階の窓から泥棒なんて入らないだろうしここから私の部屋が見えるのは源ちゃんの部屋からだけ、何が問題なのか理解が及ばない。


「だから…んー…気を悪くしないでね、」

 逆光で私の表情は源ちゃんには届かないはず、しかし頭上に浮かんだ幾つもの「?」と怒りマークは伝わったようで彼はこちらに近付きつつ話し始める。

「モモちゃん、そこのカーテンいつも開けっ放しでしょ、き…着替えが見えちゃうんだよ、モモちゃんの」

「え」

「そこをひとり部屋に貰ったのは小学生の頃だったでしょ?それからずっとだよ、最初は僕も気にならなかったんだ。いつか自分で気付くかと思って…でもモモちゃんは気付かなかった。高学年になってさすがにと思ったけど今更…言えなかった」

「あ」

「だけどもう…高校生だよ、迂闊うかつだよ、破廉恥ハレンチ、逆痴漢みたいなもんだよ」

 なんだか私が悪い様な言い方、しかし幼馴染みとはいえ裸同然の姿を見られていたとあって人質を取られたかのようにしゅんとなってしまった。

「…源ちゃんのエッチ」

「そ、そう思われるし変な空気になるから黙ってたんだ‼︎……モモちゃん、ちゃんと自衛して、僕の部屋とここバルコニーから丸見えなんだ…」

「でも源ちゃんしか見てないならセーフだね」

 悔し紛れの言い訳をすれば何がスイッチだったのか源ちゃんは手摺りに掴まり、

「なんだよセーフって⁉︎…ぼ、僕だって男だよ!毎日毎日…毎日ピンクやら黄色やら下着見せられて、湯上りの薄着見せられて、何も…何も思わない訳無いだろ!」

と終いには身を乗り出して私にだけ聞こえるように抑えながらも、その勢いを増していく。

「…エッチ」

「じゃあ見せてくんなよ!見ちゃうんだよ!僕だってアイツらと…中学のクラスのバカな男子と一緒だよ、お母さんに似て胸が大きくなってきたんだから自衛しろよ‼︎」

「……なんかごめん…」

 そうか好みのタイプに似てるんだものね、つい見ちゃうか。

 私がしょぼんとなれば

「いや…ごめん…そ、そういう訳だから…僕が悪い奴だったら盗撮とかして売りさばいたりしちゃうかもよ」

と飛躍したことを言うもんだから悪の源ちゃんを想像してつい吹き出した。
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