私達は、若くて清い

茜琉ぴーたん

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 ひょこひょこ脚を引き摺り尻をさする私を源ちゃんは1階までエスコートして、靴箱からローファーを出して履かせてくれる。

「自転車漕げるかな?」

「たぶん大丈夫…あの、源ちゃん、いつから見てたの?」

「最初から。最終日だから結論出すんだろうなって思って…けた」

「…隣のクラスから?」

「うん…でもごめん、ケガする前に止めるべきだった」

 先輩のすぐ真下で気配を消してたたずむ源ちゃんを想像するとそれだけで可笑しくて、

「いいよ、私も想像してなかったもん…でもなんで撮影?」

と手際の良さに言及した。

「…それもごめん、モモちゃん…本当は撮ってないんだ」

「あら」

「…その…もし話がこじれて言った言わないのケンカになったら僕が証人になろうと思って張ってたんだけど、あんなことになっちゃって…だったら本当に撮っておけば良かったよ。本当…ごめんね」

「もういいって、結果的に目的は果たせたじゃない……いたァ」

 駐輪場まで歩いてみると脚はそこまで重傷でもなさそうで、それでも「よいしょ」とサドルに腰掛けると尻が痺れたように痛む。

「モモちゃんがケガしちゃ意味無いんだよ…1回家に帰って、財布取ってこよ。角の病院、あそこで診てもらおう」


 私は重心を前に置いて尻をかばいながらゆっくりと自転車を漕いで家まで帰り、源ちゃんに付き添ってもらい近所の整形外科へ向かった。

 幸いにも脚はなんともなく尻も腰も無事、気になるようなら湿布を処方すると言われて出してもらい、千数百円だけ支払って帰ることとなる。

 そしてその領収書は源ちゃんが自身の財布へと入れて、

「あの人に払ってもらおうね」

と不敵に笑った。

「…いいのかな」

「あの人が突き落としたんでしょ?」

「違う、髪を引っ張られて、その反動で私が滑り落ちたの」

「あ、そうなんだ。ごめん、現場は目視してないから……でも手を出したことに間違いは無いよね、警察沙汰になるかもって今頃ガクブルしてるだろうね」

「…推測だけで先輩を悪者にしたんだァ」

「でもあの人だって反論しなかったじゃん、罪の意識があったんだよ。今夜は眠れぬ一夜を過ごすんだ、それだけでも充分お灸になるかもね」

「源ちゃんコワーイ」

 まるで美人局つつもたせ、まぁ私は実際に軽傷とはいえ怪我をした訳だがハッタリでよくああも高姿勢でいられたものだ。

「僕は第三者、本人にやましいことが無ければ反論するさ」

「第三者は録画なんてしないよ」

「まぁいいじゃない…『違う』って言われたら僕は謝るつもりだったよ」

「ふゥん…」



 翌日、源ちゃんは本当に先輩のクラスへ行き領収書を渡し、皆の前で治療費を回収して来たらしい。

 そして帰りにそれを私に差し出し、

「代行手数料は引いといたから」

と冗談を言うので帰宅後に確認したらジュース代分のお金が消えていた。
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