私達は、若くて清い

茜琉ぴーたん

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「そう…うん、聞いてみる……ところで…お父さんにはさァ、どう言って断ろうか」

「…お父さん自体はどう?来て欲しい?」

「んーー…どっちでも、って感じ……何か買ってくれるんなら呼ばなきゃ非礼?な感じするんだけど…養育費で充分足りてるし…本当、どっちでもいいの」

 母は昔から父の悪口なんて言わなかったけど褒めもしなかったので、幼い私からすると「どうして両親はリコンしたんだろう」と不思議に思った。

 面会を決めるときも父からの電話に母は淡々と受け答えしていたし恨みとかそんなものも滲ませなかった。

 同じ親として役割を分担している、しっかり協力体制を敷いているのかと思っていたのだ。

 私からすれば父は「たまに会う大人」くらいの認識で、それは昔から数年前まで変わらなかった。

 生き別れと言えば確かにそうなのだが、そんな小綺麗な言葉で片付けられる関係ではなくて…産後の母を置いて浮気したという悪行、初めてそれを祖母から聞かされた時にも最初は無感情だった。


 私の体が大人になった…つまり初潮がきた時に、母は初めてきっちりと性教育の話をし始めた。

『桃、あなたは大人になったの。わかる?子供を作れる身体になったの。男の子のことが気になったり、告白したりされたりするかもしれないけど、家族以外の前で裸になっちゃダメだからね、絶対だからね!自分でなんでもできるようになったら好きにしなさい』

 まだ小学生だった私には何のことかさっぱりだったけれど、学校で改めて学んでからは母の言うことも理解できるようになった。

 中学生になって居住地が離れて電話がコミニュケーションの主体になると、母はもっとカジュアルに言い放つようになる。

 その頃私は祖母へ両親の離婚理由を尋ね父に非があることを知るも、確かに面会に奥さんを連れて来ていたし「なるほど」と思うくらいで、今後も会わねばならないのだからなるべく嫌悪感を抱かないよう自分で自分に言い聞かせていた。

 思えばそれが間違っていたのかもしれない。

 ここ数年面会が決まるとその日の前後1週間は体調を崩してしまう。

 「ストレス」という単語と意味を知ってからはなるほどと思ったが思っただけ、これはまだ秘密だけど…あともう少しだからと自分に言い聞かせて出掛けているのだ。


「んー…お父さんだけなら来てもいい…奥さんはダメ…何て言おうかな」

 高校生になるのだからある程度の品格あるお断りの文章を書かねばなるまい。

 事実をそのまま伝えるだけでは芸が無いというか…私も少しは大人だと思われたい気持ちがあるのだ。


『入場制限があって、各家庭2人までしか学校に入れません。お母さんが来ることは決まっているから、お父さんだけなら来れます。必要なものは特に無いです。入学式もお母さんが来ることは決まってます。』


「こんなもん?」

 正直、制服や用品だけでも4万円ほどかかるし負担して欲しいという気持ちはあるのだけれど、恩を感じながら毎日袖を通すというのもなんだかなぁと思う。

 くれるなら現金でくれないかな、もっと私が図太かったらそう頼んでみたい…メールを送信してしばらく待ってみたものの、その日は返事が来なかった。
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