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しおりを挟む祖母の言う通り、母たちが離婚してから支払われていた養育費は数年で振り込まれなくなり、「慰謝料はともかく養育費は子供のためだ」と祖父が殴り込みに行ったという経緯がある。
聞くところによると父は再婚したものの子供に恵まれず、不妊治療で金銭的な負担が辛かった時期らしい。
祖母は「そんなこと知るか」と一蹴、無事に養育費は再開されたのだとか。
父との面会は向こうが希望すれば自由にできていて、養育費が滞った時期を除けば数ヶ月に1回、年に4・5回はしていたように思う。
小学校高学年になってから頻度は減ってきたがそれでも年に2回は会っていて、奥さんとも何度か一緒に食事をしたことはあるのだ。
儚そうで優しそうで穏やかそうな素朴な美人、会話は弾むどころかまともに話したことも無いけれど、嫌な印象は抱いたことは無い。
ただ母にとっては敵というか悪というか私よりもっと嫌なイメージを抱いていることは確かで、それは何を隠そう彼女が両親の離婚の原因だからなのである。
高校卒業間近の母は妊娠が分かると卒業してすぐに入籍、その後ちょうど1年で離婚している。
理由としては元々が遊びというか結婚を意識する相手ではなかったというのが一点、そもそも若過ぎて婚姻を維持していく気概も経済力も足りなかったというのが一点。
しかし最も大きな理由…それは父がユキさんと浮気をしていてそちらに本気になってしまった、というかむしろユキさんが本命だった、というなんとも不誠実で不真面目なものだった。
父は可憐な奥さんのことを「守ってあげたい」と思ったらしい。
それは結構だが順番が間違っていたのだろう。
せめて母を抱く前に、私を孕らせる前にそちらに気付けば良かったものを…色んな人を巻き込んで最悪のパターンで事態は収束した。
母は就職が決まっていた会社が「産んで落ち着いてからでいいよ」と内定を取り消さずにいてくれたことで産後1年してから働き始める。
そこが現在の勤め先の系列店だったことで縁があり営業として転職、今では管理職にまで上り詰めてバリバリやっている。
母は父の悪口なんて私に吹き込みはしなかったし面会へも笑顔で送り出してくれた。
しかし本当のところを考えるとどうだったのかは分からない。
私が居なければ母はもう少し幸せだったんじゃないかな?そんなことを考えた時期もあった。
反抗期と自虐思考を拗らせた少しだけ昔のことである。
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