私達は、若くて清い

茜琉ぴーたん

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「…緊張するなァ…実は変な人だったらどうしよ」

「真面目そうな人じゃん、見た目は。お母さんの好みのタイプが変わったのかもよ」

「タイプ……そういや…源ちゃんの好みのタイプはまだうちのお母さんなの?」

 綺麗に整備された歩道を並んで進みつつキャスケット帽の私がそう尋ねると、

「いや、生き方が好きなんだけど…ビジュアルもまぁ好きだけどね」

とストローハットの源ちゃんはようやく母の見た目も好みだと認める。

「やっぱり。娘の私が言うのもなんだけどさァ…美人だよね、」

「んー、美人だから好きなわけじゃないけどね」

「そう?」

 向かいから自転車が来たので源ちゃんはスッと私の前に出て一列縦隊になり、ボソッと

「…モモちゃんに似てるから…好みなんだよ」

と呟いた。


「……………え、」

「お母さん以外でって言われたらおばあちゃんを推すよ。モモちゃんに似てるから」

「…………おばあ」

 そりゃあ私は母に似ていて母は祖母に似ている、だから私は祖母にも似ているが…

「冷やかされるからあの場ではストレートに言わなかったけど。僕の好みは、モモちゃんだよ」

改めてそう言い後方の私を窺った源ちゃんの頬も耳も赤く染まる。

 これは暑さのせいでは無いよね、自転車が通り過ぎたら私は彼の隣へ並び直し、

「熱でもあるの?」

と汗ばんだ額へ手を当てた。

「何そのリアクション、失礼だな」

「だって、」

「人生においての初告白だよ、まぁ昔からモモちゃんのこと好きだとは言ってたけど」

「それは保育園とかそんな頃の話でしょ?」


 さすがにそんな頃のおママゴトのやり取りを恋愛と思うほどピュアではない。

 私が眉尻を下げて困り顔を作れば源ちゃんは立ち止まり、

「僕の好みはモモちゃんだよ、今も昔もね。年々可愛く大人っぽくなってく。今日のお化粧もお母さんそっくりでキレイだよ、可愛い」

と屈託の無い笑顔で言いのける。

「ひえ」

「リアクションが残念だな、まぁ僕に好かれたって得は無いだろうけど」

「違う、嬉しいよ、でも驚いてんの!……あの、顔だけ?」

「全部言わなきゃだめ?可愛いから好きだよ。だけど淡々としてて気取らないところも。思春期を過ぎても僕と仲良くしてくれてるし、それだけで僕はモモちゃんのことが好きだよ」

「……それって、スリコミ的なことなんじゃ」

 家族の様に一緒に居るから当たり前になってるだけで、今と違う境遇ならば私達二人は果たして仲良くなっただろうか。

 何を考えているか分からない源ちゃんのことをここまで信頼して一緒に旅をしたり親の事を相談したり…きっとしていないと思う。
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