私達は、若くて清い

茜琉ぴーたん

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 放課後、私は教科書を鞄に入れる源ちゃんへ駆け寄って

「源ちゃん、朝の続き…聞きたいんだけど」

と早く帰るよう促した。

「うん、帰ろっか」

昇降口で友人たちに挨拶をして徒歩で下校、いつものように私たちは並んで通学路を家の方向へと進む。

 年頃の学生が男女二人で行き来していると「付き合ってるの?」なんて聞かれたりもするが、「家が隣で幼馴染みなの」と答えれば大概の人は「なぁんだ」と残念がる。

 それどころかもっと失礼に「だよね、似合わないもん」などという人もいた。

 何が似合わないのかはわざわざ聞かないけれどたぶん見た目とかそういう浅いことなのだろう。

 でも私にとって源ちゃんは親友で家族、彼氏彼女という括りでは余るほどの思い出と絆を持っている。

 好きとか嫌いとかいう尺度は最初から用いてはいない、男女に当てはめなければならないとしたら一番しっくりくるのは「兄妹」だろうか。

 
「モモちゃん、卒業式のお知らせ用紙、きちんと読んでないでしょ」

「え、え?」

「各家庭、保護者は2人まで、学校が支給してる入校証を首からげてじゃないと入場できないんだよ」

「…うん?あ、2枚しか無い…」

「うん、不審者対策ね。緊急連絡先にその奥さんは入れてないでしょ?僕去年は設営の手伝いに行ったんだけどさ、イスも座る位置が決まってるんだよ。直前になったら各家庭から何人参加するかアンケート取ると思う」

「そうなんだ」

ならば来ると言ってくれた母とあとひと枠、奥さんの出番は無いわけだ。

「うん。あとね、受付で奥さんが『小笠原おがさわら桃の保護者です』って言っても『どちら様?』ってなるよ。モモちゃんのお母さん目立つから先生もみんな知ってるし、離婚してることもまぁ知れ渡ってる。離婚した父親の配偶者、なんて来て母親ぶっても針のむしろだと思うなぁ…得が無いよ」

 都会の下町は人の対流もあるけれど、土着している地元民がほとんどで…つまりは何代も前からの近所付き合いで築き上げたコミュニティだから、どこの誰が何をしてるなんてことが簡単に口伝くでんで広まっている。

 今は立派な大人でも「アイツは昔寝小便をして…」なんて話題が平気で挙がるほど皆が広い親戚の様な…たまに面倒さもあったりする。

「そう、かなぁ…」

「だと思うけどね。お母さんとお父さん単体か、おばあちゃんに来て貰えばいいんじゃないかな」

「そっか……源ちゃんのとこは?」

「うちは母さんだけ…そうだ、卒業式の夜、パーティーしようって母さんが言ってた。モモちゃんのお母さんにも言ってみて、泊まれるなら参加してもらおうよ。前乗りなら卒業式前夜にしてもいい、日にちは合わせるから」

「うん…」

それは何のため?そんなに母に会いたいの?好みのタイプだから?親子共々仲良くしてきたからもちろん親交はあるけれど、さっきの源ちゃんの提案には私は少々引っかかるものがあった。

 色恋の話なんて聞いたことが無かった源ちゃんの『好みのタイプ』の話題、どこまで本気で言っているのか分からないが私がダシにされているようでなんだかふに落ちない。

 だって卒業記念なら主役は私たちのはずだし?そりゃあ滅多に会えない母を軸に企画するのも分からんでもないけど…そんなに会いたいのかしら?妙な勘繰りは止まらない。

「…もしお母さんが日帰りでってなったら…パーティーはしない?」

「なんで?寂しいけど残りのメンバーでやろうよ。主役は僕たちだし」
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