私達は、若くて清い

茜琉ぴーたん

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 私はその夜は何もせず、翌日の夜に母へ連絡を取った。

 土日は忙しくて仕事に特に集中しているだろうから、余計なことを考えさせたくなかったのだ。


 翌日分の教科書を揃えて鞄に入れてから、少し大人ぶって

『おつかれさまです』

とメッセージを打てば、

『こんばんは、でいいのに。おつかれさま』

と返信が入る。

 どうやらもう仕事は終わっているらしい。

 私はいきなり本題へ切り込むことにした。


『卒業式と入学式、続けて休んで大丈夫?』

『大丈夫よ。卒業式は平日だし、休み希望は通ってる。そんなこと気にしなくていい』

 書き文字だと喋り言葉よりは素っ気ない、母は口頭だともっとねっとり女性らしい話し方をする。

『式に、お父さんも出たいって連絡が来たんだけど、お母さんも何か聞いてる?』

 そう打って送ったら既読マークが表示されるとほぼ同時に電話着信が入った。


「もしもし、」

『もしもしこんばんは、桃、あの人が出たいって言ってるの?』

「うん、メールが来てね、その…卒業も入学もお母さんに来て貰うのは悪いだろうから参加したいな、的な」

『……余計なお世話ね』

「足りない物があったら言ってくれ、とか」

『ふゥん、』

「あと、……奥さんも、参加したいって」

『はァあ⁉︎なんでよ、関係……ないのに入れないでしょう……あの人は…お父さんは好きにすればいいわ、父親だもの、節目に立ち会いたいってのもわかるけど……、うん、片方でも出てもらうか、両方とも呼ぶか……私が指図できることじゃないのかしら…うん……桃の…あなたの好きにしていいわ…うん…教えてくれてありがとう』

「うん、口止めされてる訳でもないしね」

『そう……ふー……学校は?どう?』

「この前言った通りだよ、高校の予習してる」

『うん…知識は身を助けるからね、頑張って』

 普段から連絡は密にしているからこれといったトピックも無い、その後は簡単に学校と家の話をして電話を切った。


「ふー…知識、か、」

 母だって学力はそれなりにあったと聞いている。

 だけど「手に職をつけたい」と実用性の高い工業を選んだらしい。

 今は資格に関係無い営業職だけど基礎知識や機械の理屈は家電販売においてもなかなか役に立つことが多く、特に現在のパソコン担当になってからは勉強しておいて良かったと実感したそうだ。


 私は式典にはもちろん母に来て欲しい。

 父が来たいならそれでも良い、けれどユキさんは…彼女に対しての私の気持ちはフラットと言えばフラット、でも母の電話での反応を聞く限りでは断った方が良いのだろうなと…そう思った。
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