私達は、若くて清い

茜琉ぴーたん

文字の大きさ
上 下
7 / 46
2

7

しおりを挟む

 私はその夜は何もせず、翌日の夜に母へ連絡を取った。

 土日は忙しくて仕事に特に集中しているだろうから、余計なことを考えさせたくなかったのだ。


 翌日分の教科書を揃えて鞄に入れてから、少し大人ぶって

『おつかれさまです』

とメッセージを打てば、

『こんばんは、でいいのに。おつかれさま』

と返信が入る。

 どうやらもう仕事は終わっているらしい。

 私はいきなり本題へ切り込むことにした。


『卒業式と入学式、続けて休んで大丈夫?』

『大丈夫よ。卒業式は平日だし、休み希望は通ってる。そんなこと気にしなくていい』

 書き文字だと喋り言葉よりは素っ気ない、母は口頭だともっとねっとり女性らしい話し方をする。

『式に、お父さんも出たいって連絡が来たんだけど、お母さんも何か聞いてる?』

 そう打って送ったら既読マークが表示されるとほぼ同時に電話着信が入った。


「もしもし、」

『もしもしこんばんは、桃、あの人が出たいって言ってるの?』

「うん、メールが来てね、その…卒業も入学もお母さんに来て貰うのは悪いだろうから参加したいな、的な」

『……余計なお世話ね』

「足りない物があったら言ってくれ、とか」

『ふゥん、』

「あと、……奥さんも、参加したいって」

『はァあ⁉︎なんでよ、関係……ないのに入れないでしょう……あの人は…お父さんは好きにすればいいわ、父親だもの、節目に立ち会いたいってのもわかるけど……、うん、片方でも出てもらうか、両方とも呼ぶか……私が指図できることじゃないのかしら…うん……桃の…あなたの好きにしていいわ…うん…教えてくれてありがとう』

「うん、口止めされてる訳でもないしね」

『そう……ふー……学校は?どう?』

「この前言った通りだよ、高校の予習してる」

『うん…知識は身を助けるからね、頑張って』

 普段から連絡は密にしているからこれといったトピックも無い、その後は簡単に学校と家の話をして電話を切った。


「ふー…知識、か、」

 母だって学力はそれなりにあったと聞いている。

 だけど「手に職をつけたい」と実用性の高い工業を選んだらしい。

 今は資格に関係無い営業職だけど基礎知識や機械の理屈は家電販売においてもなかなか役に立つことが多く、特に現在のパソコン担当になってからは勉強しておいて良かったと実感したそうだ。


 私は式典にはもちろん母に来て欲しい。

 父が来たいならそれでも良い、けれどユキさんは…彼女に対しての私の気持ちはフラットと言えばフラット、でも母の電話での反応を聞く限りでは断った方が良いのだろうなと…そう思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お見合いすることになりました

詩織
恋愛
34歳で独身!親戚、周りが心配しはじめて、お見合いの話がくる。 既に結婚を諦めてた理沙。 どうせ、いい人でないんでしょ?

憧れのあなたとの再会は私の運命を変えました~ハッピーウェディングは御曹司との偽装恋愛から始まる~

けいこ
恋愛
15歳のまだ子どもだった私を励まし続けてくれた家庭教師の「千隼先生」。 私は密かに先生に「憧れ」ていた。 でもこれは、恋心じゃなくただの「憧れ」。 そう思って生きてきたのに、10年の月日が過ぎ去って25歳になった私は、再び「千隼先生」に出会ってしまった。 久しぶりに会った先生は、男性なのにとんでもなく美しい顔立ちで、ありえない程の大人の魅力と色気をまとってた。 まるで人気モデルのような文句のつけようもないスタイルで、その姿は周りを魅了して止まない。 しかも、高級ホテルなどを世界展開する日本有数の大企業「晴月グループ」の御曹司だったなんて… ウエディングプランナーとして働く私と、一緒に仕事をしている仲間達との関係、そして、家族の絆… 様々な人間関係の中で進んでいく新しい展開は、毎日何が起こってるのかわからないくらい目まぐるしくて。 『僕達の再会は…本当の奇跡だ。里桜ちゃんとの出会いを僕は大切にしたいと思ってる』 「憧れ」のままの存在だったはずの先生との再会。 気づけば「千隼先生」に偽装恋愛の相手を頼まれて… ねえ、この出会いに何か意味はあるの? 本当に…「奇跡」なの? それとも… 晴月グループ LUNA BLUホテル東京ベイ 経営企画部長 晴月 千隼(はづき ちはや) 30歳 × LUNA BLUホテル東京ベイ ウエディングプランナー 優木 里桜(ゆうき りお) 25歳 うららかな春の到来と共に、今、2人の止まった時間がキラキラと鮮やかに動き出す。

仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

人違いラブレターに慣れていたので今回の手紙もスルーしたら、片思いしていた男の子に告白されました。この手紙が、間違いじゃないって本当ですか?

石河 翠
恋愛
クラス内に「ワタナベ」がふたりいるため、「可愛いほうのワタナベさん」宛のラブレターをしょっちゅう受け取ってしまう「そうじゃないほうのワタナベさん」こと主人公の「わたし」。 ある日「わたし」は下駄箱で、万年筆で丁寧に宛名を書いたラブレターを見つける。またかとがっかりした「わたし」は、その手紙をもうひとりの「ワタナベ」の下駄箱へ入れる。 ところが、その話を聞いた隣のクラスのサイトウくんは、「わたし」が驚くほど動揺してしまう。 実はその手紙は本当に彼女宛だったことが判明する。そしてその手紙を書いた「地味なほうのサイトウくん」にも大きな秘密があって……。 「真面目」以外にとりえがないと思っている「わたし」と、そんな彼女を見守るサイトウくんの少女マンガのような恋のおはなし。 小説家になろう及びエブリスタにも投稿しています。 扉絵は汐の音さまに描いていただきました。

10 sweet wedding

国樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。

逢いたくて逢えない先に...

詩織
恋愛
逢いたくて逢えない。 遠距離恋愛は覚悟してたけど、やっぱり寂しい。 そこ先に待ってたものは…

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

あなたと恋に落ちるまで~御曹司は、一途に私に恋をする~

けいこ
恋愛
カフェも併設されたオシャレなパン屋で働く私は、大好きなパンに囲まれて幸せな日々を送っていた。 ただ… トラウマを抱え、恋愛が上手く出来ない私。 誰かを好きになりたいのに傷つくのが怖いって言う恋愛こじらせ女子。 いや…もう女子と言える年齢ではない。 キラキラドキドキした恋愛はしたい… 結婚もしなきゃいけないと…思ってはいる25歳。 最近、パン屋に来てくれるようになったスーツ姿のイケメン過ぎる男性。 彼が百貨店などを幅広く経営する榊グループの社長で御曹司とわかり、店のみんなが騒ぎ出して… そんな人が、 『「杏」のパンを、時々会社に配達してもらいたい』 だなんて、私を指名してくれて… そして… スーパーで買ったイチゴを落としてしまったバカな私を、必死に走って追いかけ、届けてくれた20歳の可愛い系イケメン君には、 『今度、一緒にテーマパーク行って下さい。この…メロンパンと塩パンとカフェオレのお礼したいから』 って、誘われた… いったい私に何が起こっているの? パン屋に出入りする同年齢の爽やかイケメン、パン屋の明るい美人店長、バイトの可愛い女の子… たくさんの個性溢れる人々に関わる中で、私の平凡過ぎる毎日が変わっていくのがわかる。 誰かを思いっきり好きになって… 甘えてみても…いいですか? ※after story別作品で公開中(同じタイトル)

処理中です...