親指姫のアイデンティティ

茜琉ぴーたん

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Void and vainness

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「…なんですか?」

「ゴムとか……道具」

「どーぐ?」

「その…いろいろ…小さいなりに考えたんだ」

 通気性の良い袋から出てきたのはコンドームと小瓶のローションとなんと言うのかソコに被せるサックのようなもの。

 新品だと分かるそれらはまだパッケージの中に収まったままである。

 道具と言うから縛られでもするのかと思った、「へぇ」と開封作業を見守れば

「そういう…淡々としてるとこが…可愛くて好きなんだ」

と意外な褒め方をしてくれた。

「…初めて見るので興味はあります」

「自然体で戦えないから…」

「ふーん…」

 そんなに卑下するほど粗末なものでもなさそうなのだが本人の気持ちをんであげるのが良いのか。

 けれど包みの中から出てきたサックはゴツゴツとしたイボが散りばめられていて…

「(なんか…血とか出ちゃいそう…)」

恐くなった私は作業中の彼の脚の間に手を伸ばし注意を引く。

「あ、なに」

「それ、試す前に…ありのままでシてみません?」

「え、だって…物足りないと思うんだ」

「そこまでじゃないと思うけど…着けましょ」


 すりすりと数往復彼をこすってからコンドームの袋を開ける。

 装着方法は知っているのでくるくるとほどいていけば咲也さんは興奮の中にも疑いの表情が強くなった。



「ラムさん…慣れてるの?」

「はい。以前着けてくれない男と付き合ってた時に自衛のために覚えました…てか数回やればすぐ上手になりますよ」

「ん…ビッチ感も良いな…」

 私が「なにそれ」と笑うと彼も笑って、まだ明るい寝室のベッドがギシときしむ。


「そうだ、これ、ローション…塗るね」

「はい…」

「では」

「なんか恥ずかし………んッ♡」

「あ、ラムさ、あー、」

咲也さんは目をいて口を開けて、正常位でぴたと止まるものだからお座りした猫のように見えて可愛らしかった。

 感触はまずまず、それどころか振り切った興奮のためか彼はギンギンにきたえあげられていて、肉襞にくひだこすられるとこちらも「ふわぁ」と飾らない声が出てしまう。

「んン♡っは…咲也さん…あ、じょーず、」

「ほんと?あッ…気持ちい…ラムさ、んン♡」

あれサック、着けなくて、良かったでしょ?」

「う、んッ…あー…気にし過ぎてたのかな、んッ♡」

 彼が持っていたサックはソレ全体を覆う張り型になっていた。

 恐らく女性とれる快感は得られないだろうから男性側はそれほど悦くは無いだろう。

「私に、配慮、してくれたんですね」

「ゔん、あー…ちょい休憩………そうだね、僕はともかく相手に…ラムさんに悦くなって欲しかったから……どうかな、物足りなく…ない?」

「どうでしょう?咲也さんの頑張り次第ですね」

「イかせるってことかな…難しいね、イったことある?」

「何回か」

 こんなものはムードひとつ、セックスが目的ならナンパでもなんでも適当に引っ掛ければ手練れが釣れるしそれなりの満足が得られるだろう。

 これまで数人とセックスをしてきた経験から言うと、はらの快感は一度胸を経由して脳へ走り『気持ち良い』と信号を発しているのだと…私はそう思うのだ。

 お粗末なセックスだって好いて好いてどうしようもない相手とだとそれだけで盛り上がるし、そうでもない相手だと残念ながらそこまでじゃない。

 でも気持ちが無くても快感を得られるのも事実、実際に気持ち良いだけのセックスもこれまでにあった。

「ッラム、さん、ッあ、あ♡」

「ふゥっ…ん、んン」

 私が交際してきた相手はいずれも『小さな私』を愛でることで自身の大きさを誇示したいタイプの男だった。

 私がそういう男を選んできたのだしその点において被害者ぶるつもりなんて無い。

 ソレが大きい人もいたし、反対にそこに自信が無いから小柄な私を選んだ人もいた。

 相対的に、私はソコが狭いらしいのだ。

 だから咲也さんのコンプレックスは私で解消されるんだろう。

 実際に太くて痛いことも無いしかと言ってスカスカと評するほど彼と私の間に隙間がある訳でもない。

 ただピッタリとフィットして、摩擦が私を鳴かせて、そして咲也さんが私を大切にしようとしてくれる想いが見えるから…気持ちが良かった。
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