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I can be a maiden forever.

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「え、まだどこか…?」

「こんな狭いとオフ会できないでしょ、もっと広い所だよ……あ、来た来た、時間ピッタリだ!」

「へ、オフ会?え⁉︎」


 ブロロと内臓を震わせる音で近付き沿道に乗り付けたのは真っ白なリムジン、助手席から執事みたいな人がドアを開けてくれて乗るように促される。

「…すご…」

「さすがに僕もリムジンは初めてだなぁ…いいね、これ」

「…お金持ちの考えることって…」

「でも無駄遣いじゃないよ、必要経費…ほら、撮られてるよ」

 私たちの一連の流れを吾妻さんがカメラに収める。

 これも撮影の一環なのかと私は慌ててつんと表情を作りステップへ足を掛けて乗り込んだ。

 咲也さんは吾妻さんへ親指を立てて手を振り、座席へ着くとすぐ発車してもらうよう合図をする。


「…それで咲也さん、その何?オフ会?」

「うん……ほら」

 咲也さんの手の中のスマートフォンにはSNSのメイデンのトップページ、

『デザイナー兼モデル・コミーよりお知らせ

 この度、かねてより交際しておりました弊社専属モデル・ライムとの結婚が決まりましたのでご報告いたします。一緒に仕事をしていく上でかけがえのない存在だとお互いに認識し、共に人生を歩んで行きたいとの想いが強くなり、………、……、』

と長々架空のエピソードがつづられていた。


「……⁉︎なに、これ何ですか?」

「結婚報告」

「え、こわっ!私結婚するなんて言ってない、」

「予言かな」

「えー、えーー…外堀を埋めて行ってるの?こわい、」

 そりゃあ毎度デートのたびに熱いセックスはしているけど具体的な話は出たことが無い。

 「傍にいて欲しい」は言われたことがあるけどあれがそうだったのか。

 また変な男に引っ掛かっちゃったかな…複数投稿されたそれを最後まで読むと、

『つきましては、来たる19日日曜日にウエディングフォト撮影オフ会を開催しますので、皆様のご参加をお待ちしてます。集合は午前10時、皇路オウジ駅前ロータリーにて、皆様のお気に入りの弊社ブランドのお洋服をお召しになりいらして下さい。移動はバスで、……、……、』

とメイデンロリータミーティングが予告されていた。

「は……咲也さん怖い、私が先にこれ読んで逃げてたらどうするの」

「ラムさんはSNS見ないしバレないかなって。迎えに行った時点で気付かれてなかったから予定通り決行したよ。ラムさんを車に残して先にスタジオに行ったのはスタッフに『予定通りやるよー』って伝えるため。…あと逃げられるかな、それとも物理的にってこと?職場も知ってるし家も知ってるから無理じゃない?」

「そうでしょうけど…違う、こんな騙し打ちみたいなの…そもそも、私が先にこれ読んでたらサプライズにならないじゃない」

「あはっ、全世界に公開しておいてサプライズは無いでしょ、これはラムさんが逃げられないようにするための鎖みたいなもんだよ」

「…こわ」

クールで知的で穏やかなのにたまにこんな怖い事をする。

 噛んだり缶詰セックス旅行をしたり騙し打ちをしたりと猟奇的な一面が垣間見かいまみえれば背筋がゾクゾクして本能が「逃げたい」と騒ぎ出す。

 揺れの少ない車内で咲也さんは愉快に微笑む、反対に私はこの車の行き先とそこに待ち受けるファンのことを考えて締め上げた胃がキリキリと痛んだ。
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