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I can be a maiden forever.
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しおりを挟む「あの、これ…」
「良いわね、ライムちゃんキレイよ、じゃあメイクもしちゃいましょ」
「は、い…」
ぷるぷるになった肌に下地とファンデーション、ブラウンとベージュをメインに目元を飾りいつもより少し多めのラメパウダーを叩く。
翠のカラーコンタクトを入れると顔まわりがふわっと軽くお人形さんみたいな雰囲気に変わる。
「ライム色。キレイよ、感慨深いわね」
「……ど、どうも…あの、これ、」
「リップ塗るから黙ってねー」
「んグ」
髪は低めの位置で編み上げのお団子、これは咲也さんからの指示らしい。
「なぜでしょう」と聞けば「そりゃあ、高く盛っちゃうと彼の背を越しちゃうじゃない」とのことだった。
彼も揃っての撮影なんだ、じゃあ今頃彼が身に着けているのは白のタキシード…?いや、こだわる彼のことだからそう簡単に想像させてもくれないか。
足元は編み上げのロングブーツ。
アイボリーの合皮だけど光沢を消して花とビジューで装飾してあって、これが咲也さんが言ってた『私に似合いそうな靴』なのか、靴もドレスもサイズがぴったり過ぎて怖いくらいだ。
「どう、ライムさん…準備できたかな」
メイクルームの外から咲也さんがそう問えばメイクさんはヘアスプレーの蓋をパチンと閉めて、「OKよ、最後の仕上げしてあげて」と扉を開く。
「……わ、……可愛いね、良いね」
扉の向こうで待っていたのはベルベットのスーツを着た咲也さん、自分の寸法で仕立てた深いブラウンのそれは華奢ながら重厚感があり荘厳で紳士的で…素敵だった。
「咲也さん…カッコいい…」
「ありがとう、これ…ベールね」
彼は私の髪の上に気持ち程度の薄布で拵えたコサージュを載せてピンで固定する。
「……」
「よし…おいで、撮ってもらおう」
「あの、これ、」
「良いから良いから」
スーツと共布で仕立てたハットを頭に載せた彼は、私の背中を押してセットの方へと誘った。
そこから合流した吾妻さんはパシャパシャといつもより枚数多めにシャッターを切っていき、「ポージングとか良いんですか」と聞けば
「ええやん、たくさん撮るから、自分らで選びや」
と髭面で笑う。
「咲也さん、これって…」
「新作の撮影だよ、いつもやってるだろ」
「……でも…今撮っても載るのって秋でしょう?これ、だって、」
「うん?なに?」
光るフラッシュの中で彼は意地悪に私の顔を覗き込む、
「これ、ウエディングドレス、でしょ…?」
と恐る恐る尋ねれば
「そうだよ、ジューンブライド特集でも組もうかと思って♡」
とあっけらかんと嘘を放った。
それに託けるなら冬のうちに撮っておくはずなのだ。
秋の結婚式シーズンに合わせる可能性もあるけれど彼は今ハッキリと『ジューン』と言った。
ならば今大量に増えていくこの写真たちはブランドのカタログ用ではなくSNS用、もしくは個人的な用途のものなのだろう。
そしてサイズ感を複数人のモデルで比べるために更衣室にはいつも数パターン同じ服が置いてあるのに今回は無かった。
それどころか他のモデルが誰一人居ないのだから今このスタジオは私と咲也さんのために設えられたものだと…色々な合点がいく。
「……なんで」
「細かい話は後だ、本来なら道理に沿った形で進めるべきなんだろうけど、会場の時間とか効率を考えるとこの方が良いかってね、従来とは逆の順番で計画しちゃった」
「はぁ?」
「とりあえずSNS用にも欲しいからいっぱい撮っておこう」
個別だったり揃ってだったりセットでポージングしたり、時計が10時を回ったところで咲也さんは
「よし、じゃあ頃合いだね」
と私の手を引いてスタジオ玄関へと歩き出した。
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