親指姫のアイデンティティ

茜琉ぴーたん

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Expression of love

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「ホントだよ、脚でガッチリ捕まったり…あれ無意識なのかぁ、可愛い………僕も…自然体でここまで愛せたのは初めてだ」

「…私の方が小さいから?」

「あは、それもあるさ、否定しないよ。僕はチビだ、でも想像力と創造…作る方ね、創造力で職もあるし財も成した、それで君というお姫様を得られた、これまで受けてきた哀しい扱いを跳ね返してお釣りが来るぐらいの大成功だ、達成感が半端ない!」

「私も歯車みたい」

「そうだよ、お互い様だ。僕の会社はもう君無しでは回らない、ラムさんの人生は…まぁ僕無しでも回るかもしれないけど僕は積極的に介入していくつもりだよ」

「…うん」


 私はあなたの世界を構成する材料で、でもお互いに動力を与え合って成り立たせ合っているのね、私の生活だって咲也さんが居なくなったらきっと味気無くて単調なものに戻って行ってしまう。

 それが嫌いな訳じゃなかったの、でもワクワクしてキラキラする世界を知ってしまったからもっと楽しみたいの。

 私をお姫様にしてくれるあの場所であの人達に囲まれて、カメラの前にもっともっと立っていたい。

 明日明後日あさってと咲也さんから連絡が無くても私ってば平気なの、マメに交信しなきゃいけないほど重くないし淡々とした性質なの、それが平時。

 たまのデートで愛を貰えたらそのエネルギーで走れる、そうか私ってば愛の燃費が良いんだ。

 ボソッとそんなことを言えば彼は一瞬固まって「じゃあエネルギーチャージだね」と新しいコンドームに手を伸ばした。



「ラムさんッ、愛してるよ、好き、ゔんッ♡」

「ふぅッ…私も、咲也さんッ、愛、しでる、」

「ウエディングドレスで、ベッド、んあ、これ、写真撮りたいなぁ♡」

「ひンっ♡…その欲望って、何なの、」

「ん?んー……非日常に興奮する、みたいなこと」

「…喪服、とかも?」

「…!」


 思ったことを口にするのは時と場所を選ばなきゃ駄目、ポロッと出たそのワードを拾った咲也さんの目の色が変わり、

「あー、良いね………フラウで礼服出そうかな、あ、アイデアが降ってくる…スケッチしたいなぁ、でもラムさんから出たくないなぁ、んッ♡そこのタブレット取るね♡」

と繋がったままサイドテーブルに手を伸ばす。

「あ、あ♡」

 そしてベッドに寝た私の腹にタブレットPCを置いてスイスイ新しいアイデアを形にしていく、もちろん腰はずんずんと私のはらを責めるのだ。

「セックスしながら仕事は始めてだな、これはかどるわ」

「おざなりな対応はんたーい…」

「ごめん、どっちも大事……ここパール付けよう…ん、ラムさん、もっとアイデア頂戴♡」

「報酬、付けてくれます?」

「もちろん、いっぱいね♡」


 馬鹿馬鹿しいけど楽しい、彼は私の中に居ながら3着分のデザインラフを書き上げてタブレットを収め…ようやくこちらへ集中し出した時には私は既に寝息を立てていたらしい。


「…ラムさん、僕のこと、好き?」

「ん…うん……しゅき…」

「僕とのエッチ、気持ち良い?」

「ん…きもちー…」

「チビな僕でも…良いかな?」

「関係…無い……しゅき…ん…」

 こんなやり取りがあったのは私は知らない、全ては後から聞かされた話だ。







 それから少しして彼は私の両親へ挨拶に来てくれて、私も九州の彼の実家へお邪魔したりとトントン拍子に事は進んだ。

 咲也さんは実家は貧しかったと言っていたけど既に親孝行で建て替え済み、広い田園地帯にそびえる近代住宅は地元のランドマークになっているそうだ。


 そして私たちは無事に入籍、目玉が飛び出そうな額の結婚指輪は提案の時点で断って桁をひとつ減らしたものにしてもらい…内側に記念日を印刻してもらい互いの左手薬指に収まっている。



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