親指姫のアイデンティティ

茜琉ぴーたん

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Void and vainness

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 ベタ惚れじゃないのは確か、高級スイートの雰囲気に飲まれているのも確か。

 でも性格が合わなければセックス後でも『無理』と跳ね除けるしおかわりだってさせない。

 私の心を証明するにはどうすれば良いのか、それとも『ウザいな』と振っても良いのか。

 今日ここに来てから2度抱かれて得た心身のたかぶりと真っ赤な感情が心地よいものだったと伝えるにはどうすれば良いのか。

 細い腰に腕を回すとくすぐったいのかまた彼の肩がビクンと跳ねた。

「ごめん、腰…弱いんだ」

「可愛いですね」

「……男だよ」

「知ってますけど」

 きっと数日前までの咲也さんの私への想いは私のそれより断然大きくてピンク色で柔らかだったのだろう。

 そして淡々とした私が好きだと言いながらも一方的に思える好意をもどかしく感じていたのだろう。

 性欲から生じた突発的なものであろうと今の私は彼を彼のそれと同じくらいには好きで大切に想っているはず。

 化粧を落とした顔では表情で伝わらない部分があるかもしれない、私は脚を曲げすすすと胸へ腹へと唇を這わせた。

「ん…あ、」

「大切に…想ってます。エッチ中も伝えたと思ったんですけど…足りないなら行動で示します」

「ラム、さ……あ、あ♡」

ぱくんと平時のソレを咥えると彼は肩どころか膝をガクガクと震わせて、さっきまで座っていた椅子へ尻を降ろす。

 その動きはゆっくりだったから分かってて腰を降ろしたのかな、不確かだけれど私は口を離さず追いかけて細い竹材の床へ膝をついた。


「んッ…ふ…ふふ」

 フェラチオはあごが疲れるからあんまり好きではなくて、過去の男性は大柄な人ばかりだったから余計辛かったし喉奥を突かれて吐き戻した嫌な思い出だってある。

 でも彼らだって床にひざまずく小さな私を見下ろして所有した気になり優越感を得ていたのだ。

 その気分を咲也さんにも知って欲しかった。


「あ、あー…ラムさん、あ、ごめん、もう出ないかも、あ、あ♡」

「ん、ン、」

 本日3回目の勃起は年齢的にしんどいのだろうか、でも私の口内を満たすそれは私に収まっていた時のようにガチガチに張って硬く自立している。

はうあ咲也はんさん、」

「な、なに、」

うい好き、んッ…咲也さんが、好き」

「あ、ラム…あ、そんなこすらないでぇ」

「好き、好き……分かって欲しい、好き」

先端を唇に擦り付けて右へ左へ行き過ぎては舌で受け止めて、次第に彼の手は私の後頭部へと移動してぐいとそこに力がこもった。

 あぁ従えられている実感、小さい自分の拠り所はここだと立ち位置を決めて若干の演技などしながら楽しんできた。

 けれどそれが完全に嘘の自分だったなんてやはり思えない。

 小さいことを誇っている自分も確かに居て、自分より大きい者に支配されている自分の存在も嫌いではない。

 それでマウンティングしたのが愚かだっただけ、はっきりと分かった、私は見下ろされる自分が好きだ。
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